表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/36

能天気平民男

で、早退。オレ、星野央治の家に2人で帰宅。

両親とも仕事で家にいないから。



イスに座って眉間に皺を寄せるオレに反して、ベッドで鏡を見てウハウハのオレ。つーか、オレの姿をした中身、平民男(たいらたみお)


「やっべー。どっから見てもイッケメーン。オレ、明日からモテまくりじゃん? 手作りクッキーとかレモンのはちみつ漬けとか貢がれまくりじゃん? でさー、いーよなー、洋風の家。どっかの企業の保養所みてーだなー、お前んち。なーなーなー、キレーなねーちゃんとかいねーの? お前と似てるんだったら、やっべーじゃん」


どんだけ能天気なんだよ。この男。


「平、てめーは危機感とかねーのかっ」


思わず声を荒げるオレ。

なのに平はベッドでの寝転んだまま。


「みんみんでいーし。友達みんなそー呼んでる。星野はさー、オージだよなー。オーちゃんにする?」


そこ、どーでもいーだろ。


「どーするんだよ。これ」


オレは立ち上がって両腕を広げた。この体、完璧に平民男。

まず、親に話して、友達に理解してもらって、学校はその後か。

考えを巡らせる。


「んー。別に、なっちゃったもんはしゃーねーじゃん?」

「平っ」


「みんみんでいーし」


オレの姿をした平はベッドの下辺りをゴソゴソと漁り始める。


「何してんだよ」


こんな時に。


「エロいもんあっかなーって」

「アホかっ」


「なー。イライラすんなって。そのうち戻るんじゃね?」


なんでこんなに楽観的なんだよ、こいつ。


「根拠は?」


「んー。なんとなく」


こいつにまともな答えを期待したオレがバカだった。



平民男(たいらたみお)。あだ名はみんみん。授業中は大抵寝ている。

学祭ではバンドをしていたっけ。テニス部だったよーな気がする。絡みは挨拶以外特にナシ。



オレは星野央治(ほしのおうじ)。サッカー部、フォワード。

カノジョはミスG高。



「へー、オージってすっげー参考書いっぱいじゃん? やっぱ学年10位以内は勉強してんだなー」


オレの姿の平、改めみんみんは本棚を物色し、


「なー、どんだけ海外チームのユニフォーム持ってんだよー。やばっ、ザ・ノースフェイスのジャケ3着もあっし。アディダス多っ」


ウォ―クインクローゼットで騒ぎ、


「部屋にシャワーあんのかよー。おっ、シャワージェル、いー匂いじゃん。うわっ」


シャワールームでうっかり天井から水を浴び、びしょ濡れになった。




元に戻ることを考慮すると、それぞれこれまでのまま、お互いのフリをして生活するのが平穏だろうということになった。もちろん、みんみんは何も考えていない。首を縦に数回振っただけ。




オレはみんみんの家について聞いた。


「んー。オレの部屋、離れだからさー、飯食うときだけだなー。風呂入るときと。テレビはオレの部屋にもあっしー。観たかったら部屋で観ればいーし」


「テレビはほぼ観ない」


現在高2。来年は受験生。テレビを観ている余裕はオレにはない。新聞の1面&ヤフーニュース&ブルームバーグでOK。

みんみんは家族構成や注意事項を挙げていく。


「じーちゃんばーちゃんオヤジとかーちゃん妹」


5人も欺かなきゃいけねーじゃん。大変。


「妹か。オレの方は大学生の兄がいるけど留学中だから大丈夫」


みんみんは続けた。


「ドルチェっつー犬いるんだよ。そいつ、遊びに来たらドア閉めてあげて」


ドルチェか。可愛い犬なんだろーなー。

ん? 


「開けてあげるんじゃねーの?」

「自分で開けっから。でも閉めねーの。開けっぱだと虫入ってくるんだよなー。ムカデとか蛇も」


ムカデと蛇?! それはマズイ。カブトムシとクワガタムシ以外はムリ。ムカデとか蛇とかもう失神レベル。


「絶対閉める」


いったい、どんな山ん中なんだよ、みんみんち。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ