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入れ替わって1週間

平家のリビングダイニングは賑やか。

来客来犬がなくても6人+1頭。

みんみんの祖父母はソファでテレビを眺め、父親はダイニングテーブルでパソコン。妹もいる。

ドルチェはキッチンに立つ母親の足元にどべーっと寝転んでいる。


「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんのガッコにすっごいイケメンいるの?」


いつものごとくプリティな妹が話しかけてきた。


「いねー」


誰のことだろ。


「友達がね、先月の学校説明会に行ったときに見たんだって。サッカー部」


宝田のことか? ピッチで目立つのはやっぱキャプテンマークつけた宝田だろ。


「ふーん」


3年は引退してっから、1年と2年。1年でレギュラー入りした右サイドのヤツかも。めっちゃ走り回るから目立つ。

あ、すっげー声でかいトップ下のヤツも目立つよな。


「なんかね、オージって言われてたんだって」


オレじゃん。


「ふーん」

「知らないの?」

「うっせーな」


あ、忘れた。ブスって言うの。


「使えねー。お兄ちゃんに期待した私がバカだった」


今だ。


「ブース」


ちらっとみんみんの両親を見ると、普通に晩酌中。つまりはこれが通常ってこと。

欺くためだ。許せ、みんみんの妹。

むっとした顔で、みんみんの妹はリビングを出て行った。


ふと気づけば、妹はとっくに食べ終わっていたのか、席にはランチョンマットすらない。

ってことは、用もないのにダイニングにいたってこと。テレビは報道番組で気に留めていた様子もない。みんみんを待ってた?

実はみんみんの妹って、お兄ちゃんのこと大好きじゃん。




あれ以来、宝田からのLINEはサッカー部の連絡しかなかった。




みんみんとなって1週間、オレの方はなんとか周りを欺いていたと思う。

みんみんは毎日やってきた。

ベースを弾いてドルチェと遊ぶ。

でもって、USBにデータを入れて持ち帰った。ベースも持ち帰った。一番持ち帰りたいのはドルチェなんだそうな。ムリっしょ。


『こいつはオレが可愛がっとくから』


ドルチェの首に腕を回したが、ドルチェはオレを振り払ってみんみんの方にまとわりついた。

やっぱ分かってるんだと思う。

ドルチェは夕方、忠犬ハチ公のように門でお座りしてみんみんを待つようになった。


ついでに妹も。

更には妹の友達までも。だんだん増えていく。

玄関先にある藤棚の下、陶器のテーブルとイスでは菓子を食べながら、女子中学生が大賑わい。


『お兄ちゃん、たまには役に立つじゃん』


妹はオレにポテトチップスを1枚くれた。

こんだけかよ。みんみん、いつもこんな扱いされてんだな。

でもって、星野央治が来ると女子中学生らはさっきまでめっちゃ騒いでたくせに、ぴたっと静かになって、髪なんかも直したりしてる。離れの窓から見えるし。


『『『『こんばんは』』』』

『どーも』

『兄はあっちの家にいます』


そして、星野央治の姿をしたみんみんがオレの居る一軒家に入ってきたとたん、きゃーっという歓声が聞こえる。





みんみんの方は家でオレの両親を欺いているわけだが、ノープログレムだと言っていた。

一度母から「靴を揃えなさい」と注意されたくらいだそう。

星野家は放任。何時に帰っても友達の家に泊まっても何も言われない。一応、0時を過ぎるときは連絡する。それだけ。そんなことは滅多にない。ほぼ規則正しい毎日。





互いに密に連絡を取り合った。主には友達に関する連絡事項。

みんみんは宝田と少し距離を置いているらしい。

得策だと思う。


テニス部の林はいいヤツで、お笑いのYouTubeで盛り上がる。





オレが注意深く大人しく1週間を過ごしていたというのに、みんみんはやらかしてくれた。


学校内に噂がたった。

星野央治が佐藤ミカと手を繋いで横浜の街を歩いてたって。


オレの体だ、みんみん。



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