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似たもの同士

宝田が可憐のことを好きって?


          『それ、周りに誰か

           いた?』

『いない』

          『マジか』

『宝田怖い』

          『すっげーいいヤツ

           だから』

『怒るし』

          『それは単に熱いだ

           け』


『友達のカノジョ好

 きとか』


『怖い』

 

          『宝田は怖くない!』



怖くないって? 嘘ばっか。

オレが1番認めてる男は宝田。周りから信頼されて、試合ではゲームを組み立てる。サッカー部で80名近くの部員一人一人まで見ているスーパーな男。

例えば恋敵が大学生と聞いても、メンズモデルと聞いても、オレはここまで狼狽えなかったと思う。


嫌な味の唾が喉の奥に込み上げてくる。



ぶぶー



LINE。送信者は宝田。


『部活のとき変なこ

 と言ってごめん。

 冗談だから』


スマホは今まで通り、それぞれのものを使っている。どう返す。

朝練に出なかったことを謝るのか? 可憐のことを聞くのか? 部活にいつも通りに取り組まなかったことの言い訳をするのか?


朝練や部活のことについてコメントしたとしても、明日から今まで通りにはならない。みんみんにオレであることを強要なんてできねーじゃん。


じゃあ、可憐のことはどうする。

宝田の『変なこと』は可憐を諦めたことを指す。


          『分かってる』


返信。

なんて曖昧。冗談だと分かってるのか、宝田がそんな冗談を言うわけないって分かってるのか、それとも朝練や諦めずにボールを追うことに答えているのか。


こんな風に悩みながら、自分が渦中じゃなく「みんみん」として傍観していることにちょっとほっとする。オレって結構なヘタレ。


いったい宝田はいつから可憐を好きなんだ?


オレが可憐に一目惚れしたのは去年。1年の4月に可憐を初めて見た。クラスは別々だった。今もクラスは違う。

宝田は1年のとき、可憐と同じクラスだった。だってオレ、サッカー部の用があって宝田のクラスに行ったとき、可憐を見つけだもんな。で、即行、宝田に聞いたんだよ『あのコ、誰?』って。

でもって、宝田に会いに行く用作って、可憐を見に行ってた。

ダンス部とサッカー合宿が一緒って知ったときは運命だと思ったっけ。その運命の合宿は1年の8月。


いや待った。宝田って高1の最初んときは中学時代のカノジョと切れようと頑張ってたんだよな。

なんとなく好きでもないけど仲が良かったからつき合うことになって、中3の秋に別れようとしたら『高校受験前に酷すぎる』って泣きつかれて、『せめて受験まで勉強を頑張るために連絡だけでもしたい』って。『合格したらお互いにスマホの登録消そう』って約束して。前向きなんだから後ろ髪なんだか。それ、実行したとかっつってた。

でもさ、宝田の元カノはサッカー部の練習試合に毎回応援に来た。

ホントにすっげー好きなんだろうな。

宝田の方はガン無視してた。

更に宝田の元カノは平日にG高の校門まで会いに来たこともある。イタイ。

宝田は別の門から帰った。


宝田の元カノは、すっげーいっぱい泣いたと思う。ストーカーにちょい足を突っ込んだ行動は男から見たらドン引きだけどさ。そんなことまでするくらい、宝田に会いたくて姿を見たくて、自分じゃどうにもできない気持ちを抱えてたんだと思う。


『オレ、もう好きな子いる』


あの時、宝田はオレにそう言った。

あれは確か、1年のゴールデンウイークより1週間前、千葉の遠征試合の帰り。その日も宝田の元カノが応援に来ていて、宝田は心底困った顔をしたっけ。


オレが可憐に告る前に、もう宝田は、たぶん、可憐のことを好きだった。


もしかすると、オレが宝田のクラスへ行ったときに可憐を見つけるよりも前。


可憐は誰の目から見ても綺麗だ。



ああ、そっか。




宝田、お前も一目惚れかよ。





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