表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/36

入れ替わったみたいっす

小春日和に夢現(ゆめうつつ)



あかん。めっちゃ眠ぃ。数式とその下の線がぼやけてきた。それを書いているチョークが黄色と白の縞々に見える。



教師のチョークがチンアナゴ



いや確か縞々はニシキアナゴ。……眠ぃ。

寝るな。ここは前から2番目の席。下手すると最前列より教師から見える。寝るな、耐えろ。



がくっ



睡魔が体を揺らした。思わずオレはシャキッと姿勢を正す。がすでに遅し。


「星野くん。疲れてるんですか? 眠気覚ましに黒板の問題解いてください」


教師から指名された。ちょっとした注意で終わってラッキー。それにあの問題だったら解ける。

ガタッと立ち上がると、


あれ?


なんか眺めがさっきまでと違う。黒板が遠い。10m以上向こうにある。

隣の席のヤツが立ち上がったオレのカーディガンを引っ張った。

教師は、黒板のところからオレを一瞥。


「おい、(たいら)。また寝てたのか。座っとけ」


ははははっははは

ははは

はははははっははは


教室は和やかな笑いに包まれた。


平? 平って言われたよな?

さっきオレのカーディガンを引っ張った隣の席のヤツは「みんみん、寝ぼけるなってー」と気の毒そうに話しかけてくる。

いやいやいやいや、みんみんって? オレ、星野なんだけど。

取りあえず着席。座っているのは教室の1番後ろの窓側。

おかしい。確かオレは前から2番目の席だったはずなのに。


なんか、視界が悪い。目の前に髪がもさもさしてる。

前髪を手で避けながら前方を見ると、星野央治(ほしのおうじ)がぼーっと黒板の前に歩いて行く。ちょい猫背で上履きを引きずって。


あれオレじゃん。

なんで?


星野央治は黒板の前まで行くと、チョークを持ったまま直立不動。そしてダルそうに言葉を発した。


「分かりません」


は? すっげー簡単じゃん。解けよ。オレ。

教師は心配そうに星野央治を見る。


「大丈夫ですか? 星野君。具合が悪いなら保健室に行きなさい」


言われた星野央治は、チョークを置いた。なんか、チョークが白と黄色の縞々のチンアナゴ、じゃなくてニシキアナゴに見えるんだけど。まだ眠気が覚めてねーのかも。


「あー。じゃ」


短く答えた星野央治は、猫背のままずるずると教室の前のドアから退場した。

オレ、オレどこ行く。ちょっと。


教室がざわざわして女子がひそひそと星野央治を心配している。


「どうしたんだろ、オージ」

「具合悪そう」

「いつものオージと違うぅ」

「しんぱーい」

「私も保健室行っちゃおっかなー」


????

星野央治はオレなんっすけどー。あれ? あれ?

即行挙手。立ち上がったし。


「具合が悪いので保健室へ行きます」


指名されてもいないのに自ら宣言した。

教師は、メンドクサそうに手をしっしって感じで振りながらオレに言った。


「平か。目障りだから保健室で寝てこい」



廊下を走れば、すぐに星野央治のちょい猫背が見えた。

肩をぽんと叩く振り向いた。


「「%&&$# オレ!?」」





どうもオレ、星野央治は平民男と入れ替わったらしい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ