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聖属性魔力がありあまる  作者: 羽蓉
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07

それから5年の月日が流れ、私は前世と同じ年齢になっていた。

結果として…私は今も、魔力の発動ができないままだった。




5年間、あらゆる努力もした…前世の記憶も駆使して、様々な方法を試してみた。


発動するためには『知識』も必要であると考え、一日の半分は魔力の学習に努めた。

10歳の私には難しいことだったが、ユージンに協力してもらい、魔力や魔術に関する書物を取り寄せ、時間をかけて学んでいった。




あとのもう半分は、実技に費やした。


本来ならば王太子の婚約者としての教育を受ける時期ではあったが、それも魔力が発動しなければなんの意味もない。


まずは『回復』を唱えてみる…反応はない。

ユージンは不思議そうに見ていたが、前世で知っているゲームの呪文も唱えてみた。

時間を決め、何度も唱え続けてみた。


人体に手を当て、念じてもみた。

手を当てることで、通常と違う発動ができるのではないかと考えた。

知らない人が見ると、数時間微塵も動いていないように見えるだろうことはわかっていたが…私は延々と念じ続けていた。


魔石に、魔力を込めるということもやってみた。

自力で発動できずとも、魔石という形で魔法が使えればとも思った。

手に持ち続けて見たり、寝る時に温めるように眠ったりもしてみた。


回復薬の作成にも、挑戦してみた。

魔力を込められるのであれば、回復薬としてでも構わない。

これは思わぬ副産物で、ハーブや薬の調合を学ぶことができた。


実技に関しては、『いつか発動できるかもしれない』と毎日、毎日繰り返し行った。

少しずつ環境をかえたり、思いつくものを試していったりした。




   ◇◆◇




世に名を馳せる魔術師へ会いに行き、意見をいただいたりもした。

お会いする方の中には魔力が目に見える人もいて、私の魔力に…ただただ、驚いていた。


そこで学んだことは発動や属性、魔力の大きさに一貫性がないということだった。


家系によるものも少なくはないが、本人の資質によるものが大きく表れるのだという。

私のように魔力があり発動できないということは稀だが、なんらかの形でみな魔力をうまく使いこなしていたという。


「(私が取り組んでいる方向性は、間違っていないのかもしれない…)」


一向に発動できない状態に、焦りがないわけではないが…私の中に魔力は存在しているのだ。

発動のきっかけになる学習と実技を、より深めていこうと考えていた。


意見をいただいた方の中には、私との対話にすっかり気を良くし、手に入りにくい書物を譲ってくれたりする方もいた。

私の真剣な想いを汲んで、好意的な方が多かったように思う。


そこで驚いたのは高名な魔術師の方や魔術の研究に力を注いでいる教授らが、私の訪問を思った以上にすんなり受け入れてくれたことだった。

公爵家の名前がそうさせているのかもしれないが、私に関する様々なことは公には隠されている。


そこには…アシュリー様の口添えがあった。


「あの方は、多方面に信頼が厚いから…」


ユージンは照れたように頬を指でかき、誇らしげに話してくれた。

きっと私が色々な方へ意見をいただきに伺う、ということをアシュリー様に伝えてくれていたのだろう。

私はそんなユージンにも、支えてくれたアシュリー様にも感謝をし、日々の努力を続けて行った。




   ◇◆◇




そうして学院にも入学せず、王太子の婚約者として教育を受ける事、ふるまう事をせずに毎日を『発動』の為に過ごしていった。

もちろん公爵令嬢に必要となる、社交も行っていない。

公にはされていない秘め事であっても、貴族の情報交換の場では噂と言う獲物であった。


いつしか私は、陰で『聖女のなりそこない』と呼ばれるようになっていた。


王太子との婚約は解消までに至ってはいなかったが、貴族や王族は皆そのことがなかったこととして扱っていた。

元より美しい容姿を持つ王太子は、成長し身に着けた快活さで周囲を惹きつける魅力をまとっていた。

婚約者がいてもなお、縁談が途切れないのだという。


あれから王太子とは一度も会っていなければ、手紙を交わしたこともなかった。

『聖女』になれないのであれば、私など必要ないのだ。




すべてを『発動』に費やしていった、私の5年間。


「(ばかばかしい、勝手に聖女と持ち上げて…魔力を発動することでしか、私に価値はないの?)」


前世の記憶を持つ私は、報われなさを噛みしめ…壮大に拗らせていったのだった。

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