表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖属性魔力がありあまる  作者: 羽蓉
3/103

03

高熱が引き、やっと起き上がることができるようになった頃、私に専属の侍女がついた。

今後『娘が聖女になるかもしれない』と、期待した父が手配したものだった。


「お嬢様…新しくお嬢様の専属となる侍女を紹介しますわ。」


「ブッドレア男爵家が次女、ミヨンともうします。これからお嬢様のお世話をさせていただきます。」


顔をあげた少女は、長いアッシュブラウンの髪の毛を綺麗にまとめ、しっかりと目を見て話す子だった。


「ミヨンはお嬢様と同じ年になります。」


「そう、よろしくお願いします。ミヨンとは仲良くなれそうな気がしますわ。」


呼ばれた少女は目を丸くして、こちらを見ていた。

彼女は男爵家に生まれている。

身分の差を考えても公爵家の娘に、そんなことを言われると思っていなかったのだろう。


目線が正直すぎる…でもそこが、とても好感が持てた。


再びミヨンを見ると、彼女はしっかりと目を見て口元だけで微笑んだ。




   ◇◆◇




「当然のことだと思いますよ。」


ミヨンが手際よく紅茶を入れながら返事をする。


私の予感通り、ミヨンとはすごく仲良くなった。

彼女は聡明で、はっきりと物を言う子だった。

多角的に物事を見据える洞察力がある上に、全力で私のことを肯定してくる。

必ず目を見て話す姿の彼女に、嘘がないとわかる。

私は彼女の目が好きだった。


「…そうかしら、神殿からの結果もまだわからないのに?」


私とミヨンは、先程お父様に呼ばれたことについて話していた。


測定の噂を聞いた王家から、王太子との婚姻の手紙が届いたのだ。

お父様は自分の発言力が確かなものになるという視点から、大変喜んだ。

ミヨンが言うには『聖女』を王家に取り込み、他国を威嚇する目的があるのではないか…とのことだった。


「聖女だから娶ったのではなく、『娶った女性が聖女に選ばれた』と言うことが大事なのだと思われます。」


事もなさげに言うミヨンに対して、少し眉間にしわを寄せる。

ミヨンの言うことはきっと正しいのだろうけど、言われる身にとってはたまったものではない。


「これで私が聖女でなければ、どうするのかしらね。」


「お嬢様ほど聖女にふさわしい方はいらっしゃらないので、大丈夫です。」


「…ミヨン、大丈夫には聞こえないのだけれど?」


「出過ぎたことを申し上げました、でも間違いないので大丈夫です。」


ゆずらないミヨンに、吹き出しそうになる。

自分が何者であるかわからない不安に悩んでいるというのに、絶対的な味方がいるのはありがたかった。


「(彼女のこういうところ、好きだな…ミヨンがいてくれて良かった)」


温かい紅茶を持ちながら、目線を窓に向けそっと考えをめぐらせる。


どんな思惑があろうと、神殿の結果がどうであろうと…私がこのお話を断ることはできない。

せめて、期待を裏切らないように努力をしよう。


そこまで考えて、ようやく紅茶に口をけてみた。

澄んだ香りが心地よい。

心の中のもやもやが溶け出すような、ほっとする味だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ