第27話 エピローグ
エピローグです。
カーラの葬儀は、皇后レミアの元、国葬として執り行われた。
俺たちが行った偽の葬列などとは比べ物にならないほどの人数が列をつくり、しずしずと街の北端から南端まで、カーラの眠る棺を運ぶ。黒い旗を高々と掲げている兵士たちが棺の四隅に控え、棺の上には橙色の布が被せられている。
橙色と言うのが国家の色とされているらしく、こうした公的行事では多く用いられるらしい。
民衆が大通りの左右に分かれ、この街を長く統治していたバレー家の終焉を見届けている。このままカーラの遺体は南門城を出て、街の外にある墓地に埋葬されるらしい。
「この街は、これからどうなるんだろうな」
俺はポツリとつぶやいた。
「大魔法陣を管理できるものが居なくなりましたからね。近いうちに水が枯渇して、この街も滅びることになるでしょう」
右後ろに控えていたメイドが答える。
「そうなのか!?」
「ええ。もったとして400年と言ったところです」
「あ、そう」
機械人形の時間表現は、スケールが大きかった。
「しばらくはレミア軍が統治することにはなりそうですが。バレー家がなくなった以上民衆も逆らわないでしょうし、なんだかんだ上手くいくのではないでしょうか」
アーティ・マーティが淡々と言った。
「ところで、ハルキ様」
「ん?」
「ハルキ様は私の2247番マスターになってくださるのでしょうか」
「随分主人をとっかえひっかえしてきたんだな」
「ええ、なにぶん、人と言う生き物はすぐに死んでしまうので」
アーティ・マーティが答える。
「……カーラの遺言、なんだっけ」
バレー家の騒乱が収まった後、俺はアーティ・マーティからカーラの最期を聞いていた。彼女はなんだかんだ、笑って死んでいったらしい。最後の言葉が「あーあ、妾は、処女のまま死ぬのかぁ」だったというし、決して悲嘆にくれた死ではなかったようだ。
「うん、まあ、よろしく頼むよ、アーティ・マーティ」
俺は、そう答えることにした。
「よろしくお願いします、2247番マスター様」
「そこはハルキ様でお願いします」
「はい。あと、私は私の主人となる方に、三つ、承諾してもらっている事があります。一つ、私の本当の主人はただ一人だけです。あなたはあの方の代用品でしかありません。二つ、私にとって一番大切なのは、私の命を守ることです。ですから、機械人形だからと言って命がけであなたの命令を遂行するわけではありません。三つ……」
そこで彼女は不意に黙り込む。
「三つ目は?」
「……いえ、三つ目は有りません。以上の二つを、承知していただけますか?」
なんじゃそりゃ。
「いいよ。お前はカーラの忘れ形見みたいなもんだ。好きなようにすればいい」
葬列がだんだん遠ざかり、街の外へと出て行く。
シャン。
シャン。
シャン。
シャン。
……ばいばい、カーラ。
ついにヒーバー治伐記、完結となりました。
久しぶりに小説というものを書いたら、やたら文章力が落ちていたり、細かい設定に振り回されたりと苦労しましたが、まあ、何とか走り切ったかな、という感じです。この話はノリと勢いで書いて行こう、という企画だったので、割と楽しめました。
今はこの話とは別に文学賞応募用原稿を執筆しているので、それが完成してから第2章を執筆し始めて、12月半ばには連載を再開できたらいいな、と思っています。
また、ご感想お待ちしております。




