第九話 新発見
俺が殺した盗賊が教えてくれた武器庫へ、警戒しながら進んでいた。
「いきなり何だけどさ、カルラってどこに住んでたんだ?」
「え?えっと、西の街のヴィアインって分かるよね?」
「分からん」
「……あなた、本当に人間族?」
「そこまで言う?!正真正銘人間ですが!!」
「はいはい。いい?西の街って言うのは王都を中央とした時にちょうど西側に来る街なの。魔族がいる魔界から最も遠い街だから人間界では三番目に安全なんだよ」
はいはいって……スルーかよ。魔界って何だ、魔族って何だ。てかそこから最も遠いのに三番目って……なんか突っ込み所多くてやばい。
「へぇ、全然分かんねーや」
「…………」
「怖いよカルラさん、半眼で睨まないでよ。こっから出たら俺のこと教えてやるから」
「本当に?」
「ああ。信じてくれるかどうかは別だけどな。それよりお前の話は?」
「えっと、どこまで話したっけ?」
「全く話せてないから最初から頼む」
「分かった。私はね、西の街ヴィアインよりも更に西にある村に住んでたの。平和な村だったけど、貧しかった。それでも私たちは楽しく過ごしてたの。だけどある日、あいつらが、奴隷商と盗賊が突然村に押し寄せてきて……」
「拐われて今に至るって訳か」
カルラは無言で頷いた。盗賊も攻めこんで来たってことは、奴隷になった奴ら以外はおそらく……ああ、嫌な記憶が甦ってきた。クソッ。
ん?でも貧しかったんだよな?なのに何で攻めこんで来たんだ?知らなかったからか?それとも単純にバカだからか?
そんなことを話しているうちに武器庫に到着した。何となく空気が暗くなってしまったが……なにもギャグが思い付かない!!
「さ、さて武器庫に到着したぞ」
「……え、あ、うん」
暗いよカルラさーん。もっと元気出そうぜ?
さて武器庫に到着した訳だが、鍵が掛かっていて開かなそうだな。ぶっ壊すか?うん。そうしよう。
「あれ?ソウスケ?なんで構えてるの?」
「フッ、決まっているだろうカルラ。壊すんだよ!」
「いやでも、音がーー」
「はあっ!!」
カルラが止めるのも聞かずに俺が鍵を正拳突きで破壊した。当然轟音が鳴り響いた。そのせいで三人こっちに向かってきているのが分かる。
「あ、やべ、敵来た」
「だから言ったのに!どうするの?!」
「落ち着けカルラ」
「落ち着けないよ!」
慌てすぎだぞカルラ。あいつらにはまだちゃんと"弾"がついてる。この距離でもオーラは制御出来るな。
「よし、行くぞ。捕縛しろッ!【弾】ッ!!」
俺がそう唱えた瞬間近づいてきていた敵が止まった。よしよし、第一段階成功だな。これから第二段階だ。
「次だ、縛りつぶせ、【糸】」
もう一度唱えると三人の反応が一斉に消えた。成功した。間近で見なくても殺す方法が。
今のは【弾】を【糸】に変えて捕縛し、変わった【糸】で敵を握り潰したって訳だ。まさか遠隔制御ができるとは思ってなかったから、通路に足を引っかけさせる糸を張っていたんだけど要らなかったな。
とりあえず武器庫で適当な物を……そういえば俺、剣以外使えないんだった。クソー、槍術とか槌術とかあったのにな。取っておけばよかった。仕方がないので、ロングソードを一本見繕うと腰に差してカルラを待つことにした。
「カルラ、お前武器使ったことあるか?」
「ううん。ないよ。ただの村娘にそんな機会ないし」
「それもそうだな……ならナイフでも持っとけ。護身用にな」
「そうだね。ナイフなら動物の解体とかで使ったことあるし」
「なら決まりだな」
カルラが武器を決めたので、洞窟の出口に向かおうと、出口の方向に意識を向けると沢山の敵の反応があった。それは何かを囲うように円を描いていた。
「待て、出口に何か来ている……新手か?」
「そんな……もうすこしなのに」
表から出るか?いや、貴族共が雇った傭兵が怖いな。他の奴隷達を連れて逃げないといけないし……カルラ一人なら何とか守れるか……?いや、だが……
「少し、様子を見よう。【気纏】で周りに溶け込めるか……?やってみるか。俺を見ててくれカルラ。俺の気配が薄くなったら右手を上げてくれ」
「分かった」
「よし、始めるぞ」
俺は宣言すると周りの気をいつもより余計に巻き込んで【気纏】をする。カルラを見ると右手を上げていた。
よし、成功だな。しかしなかなか便利だなこれ。これなら女風呂入れるんじゃ……
「ふう、どうだった?」
「最後なんかえっちぃこと考えてなかった?」
な、何故バレた?!
「何故バレたじゃないよ……もう」
声に出てた?!まさかの不注意?!