第七話 計画開始
今日で俺がこの牢屋部屋にきて五日目になる。つまり、脱出計画を開始する日だ。絶対にここを脱出して、俺の楽しい異世界ライフを始めてやる!と、俺が一人燃えていると、カルラが不安そうにしていた。
「どうした?不安か?」
「ううん、そう言うわけじゃないんだけど、何だか嫌な感じがして……」
おいおい、これから計画を実行するってのにそんなフラグみたいなこと言わないで……ってもはや既にフラグか?だがフラグなんぞに俺は負けん!!……あ、これもフラグだね。
「う~、そう言う不吉なこと言うなよ~、俺も不安になってくるじゃねーか」
「ご、ごめん……でも、あの時の感じに似てるの……私にとって良くない事が起こりそうな、あの感じに」
「あの感じ?」
カルラがあの感じに似てると言うので、俺がどんな感じか聞いても顔を青ざめさせて答えてくれなかった。トラウマなのかな、あまり聞かない方がいいな。
「……よくわかんねーけど、お前にとって良くないことが起きるんならとにかく警戒してればいい。悪いがこの計画を遅くする気はないぞ」
「うん……分かってる」
「とにかくこれから計画を実行するぜ。いいな?」
カルラは無言で頷いた。だが、その顔にはまだ恐怖と緊張が残っていた。
「うし!じゃあ始めるぞ。『奴隷市場脱出
計画』改め、『ドキドキ!市場の牢屋から抜け出しちゃうゾ☆大作戦』開始だ!」
「名前ダサすぎでしょ……」
「ひひ、少しは緊張ほぐれたか?」
「ふふっ……うん、ありがと」
俺の気がきいたギャグがカルラの緊張をほぐしたところで、『ドキドキ!市場の牢屋から抜け出しちゃうゾ☆大作戦』開始だ!
壮介達がいる奴隷市場の奥、盗賊のアジトの幹部部屋に一人の新入りと思われる盗賊が入ってきた。
「ク、クラッドさん!お頭です!お頭が帰ってきました!」
クラッドと呼ばれた男は、前に壮介にゲス野郎と罵られた男で、盗賊の幹部だった。
「ノックを……ってお頭が帰ってきたのか?」
「そうです!今、アジトの入り口でクラッドさんを待ってますよ!」
「……分かった、今行く」
クラッドは自分の部屋である幹部部屋から出るとアジトの入り口に向かいながら、後ろを付いてきている新入りの耳には聞こえないくらいの小さな声でつぶやいた。
「くそ、なんであいつが帰って来やがったんだよ……クソ親父が」
さて、今俺たちは牢屋に繋がっていたダクトを通って脱出して……いない!!だってここ岩をくりぬいて作ったみたいだし。
ちなみにカルラにダクトの事を教えてそこから逃げようと言ったら『ソウスケが布の中を覗いてきそうだから嫌』だってさ。
覗かないよ!多分……。でも一回展示されるときに裸見れるんじゃないかと思ったら、目を瞑れって怖い顔でカルラが言うからさ?見れて無いんだよね。
そんで肝心の脱出方法なんだけど……まあいわゆる強硬突破だね。ダクトがなけりゃそこからいくことは出来ないし、かといってピッキングの技術も道具も無いからね。力づくで檻を破って出てきた。俺の能力の【超身体能力強化】がここまでの腕力を生み出してるとは思わなかったな。
さて、俺たちが脱出計画を実行するのにここまでの時間がかかったのには訳がある。それは、俺の能力【気術】の応用技術をマスターするのに時間がかかってしまったことと、その技術を使って準備するのに手間取ってしまった事だ。
その応用技術というのは、【弾】と【糸】だ。ちなみに俺の能力のことはカルラには適当にはぐらかしておいた。ここを出たら教えるつもりだ。このフラグを回収しないで無事に脱出できたらの話だが。話が逸れた。
俺が編み出した新技術【弾】と【糸】だが、名前の通り"弾"は弾丸のようにオーラの塊を飛ばす技で、"糸"が細い糸状のオーラを作り出す技だ。
俺は"弾"を盗賊と奴隷商の一人ずつに撃ち込み、衣服にに付着させ、近くに来た人間に対して破裂し、付着させるようにした。そのお陰で盗賊と奴隷商全員がどこに居るかが何となく分かっている。俺はこれを使って二人で脱出するつもりだ。