第四話 盗賊の檻での出会い
まさか異世界にきてこんなにも早く人間と戦うとは思ってなかった。まだ覚悟はできていないんだけど……。
俺は馬車を先に行かせて、盗賊達と向かい合っていた。
「オイ、こいつ丸腰だぜ!」
「絶対金なんか持ってないぞ!」
「それでも身ぐるみ剥いで売っ払っちまえば多少の金にはなるだろうよ」
「「それもそうだな!!」」
頭悪そうなのが二人、そいつらを纏めてる少しは頭良さそうなのが一人の計三人が俺の目の前にきた。てかマジで言ってることが世紀末だな。かなり頭が沸いちゃってる。
「流石にまだ人を殺すのは気が引けるな……」
「ああん?なに言ってるか聞こえねえよ!」
「ビビってんのかぁ?ギャハハハハハハ!!」
めんどくさい奴らだな、と思っているとリーダーみたいなやつが俺に突撃してきた。
「さっさと捕らえて売ってしまおう」
「「わかったぜぃ!!」」
あの二人は兄弟なのだろうか。いや、普通にどうでもいい。とにかく殺さないように、手加減して殴ってやる。
俺がリーダーの乗っている馬に向かって駆け出す。すると行く手を遮るように兄弟が足止めしてくる。
「「行かせねーぜ!」」
「うるっせえ、どけ!」
そのまま俺は飛び上がって兄弟の一人の顎を殴り飛ばした。俺が殴った奴はかなり後方まで吹っ飛んでいった。思った以上の威力に驚きつつも、油断せずに前に進む。
「弟よ!!……てめえ、ぶっ殺してやる!!」
「やっぱり兄弟だったのかよ!」
世紀末兄弟の弟の馬を踏み台にして兄の方へ行き顔をぶっ飛ばす。こいつもまたかなり後方に飛んでいった。そして兄の馬も踏み台にしてリーダーに向かうが、リーダーが馬を反転させ逃げようとしていた。
「は!?おい待て、逃げてんじゃねえぞこの野郎!」
「…………」
リーダーは黙って走っていく。俺は夢中で追いかける。すると後ろから馬車の音が聞こえてきた。後ろを向くと物凄いスピードで俺を追いかけてくる。
「おっさん!また何かあったのか?!」
俺が問いかけると笑いながら馬に鞭を入れていく。どんどんスピードが上がり、俺の後ろにくっつかれた。そしてそのまま俺は轢かれてしまった。物凄い衝撃で意識が飛ぶ寸前、こう聞こえた。
「馬鹿だなぁ、お前」
それを最後に俺の意識は飛んでいった。
ー・ー・ー・ー
ーー私は、約二週間前からここにいる。ここは、奴隷市場であり、盗賊共が棲みかにしている洞穴のなかにある牢屋だ。約二週間前、私の村に奴隷商と盗賊がやって来て、村にいたほとんどの人が殺された。
そして残った私達は奴隷として売られて行った。少し前までは皆居たのに、今ではもう私以外誰も居なくなっていた。私が売れ残っているのは片足を奪われているからだろう。
盗賊共が私の足を奪って行ったのに"金に成らない役立たず"だと殴り、蹴られる毎日だった。いつも同じ毎日。盗賊共が食べ残した残飯を食べ、裸で展示されて、ストレス発散に殴られる。処女の方が高く売れるからと、犯されなかったことが唯一の救いだと思う。
そんないつも通りの日を今日も過ごすのかと思っていたが、今日は違った。私がいる檻に新入りの奴隷が入ってきたのだ。