第二話 能力の獲得
「えーっと……それだけですか?」
「それだけって……いいですか?!貴方には何もないんですよ!?才能も運も何もかもが! 長く女神としてやってますがここまで何もないのは初めてですよ!!」
うーむ。なんか熱弁されてるけどな、16年間こんなだったしなぁ……。
「ま、まあ、これから才能とかくれるんですよね?なら、その時貰えるだけ貰っていきます。今何もないならなんでも入れられますよね?」
「確かにそれは可能ですが……。」
「なら決まりです。俺が使えそうな才能とか能力をください」
俺が女神様に能力をくれるように促すと女神様は俺に説明するのを諦めたようにため息をつき、頷いて大きな浮かぶ水晶玉を目の前に創り出した。
「おお、これが魔法ですか?」
「はい。これは神々だけが使える創造魔法です。そしてこれは今私が創り出した検査水晶です」
検査水晶は俺の顔くらいの大きさで、水晶の真下に魔法陣みたいのが浮かび上がっている。多分これで浮かび上がっているんだろう。
「さあ、これに手をかざしてください。かざしている間水晶の周りに取得できる才能や能力が浮かんできます」
言われるまま俺が手をかざすと水晶の周りに文字が浮かび上がってきた。
「少な……」
「で、ですが、かなりレアな才能や能力がありますよ!そ、それに普通は十個も浮かび上がってきませんし!」
女神様が必死で俺をフォローする。優しいね、女神様。
そう、浮かび上がってきた文字は想像よりも少なかった。その数十個だった。もっと来ると思ったんだけどね?まぁ、十しかないなら仕方がない。その中で選ぶしかないしね。さて、出てきた文字はこれだ。
【剣術・技術、才能】【槍術・才能】【気術】【格闘術・技術″才能】【超身体能力】、【身体強度強化】、【槌術・技術、才能】
だった。この中で選べるらしいが、水晶の中に【0/500】となっていた。
「女神様、この水晶の中の数字は何ですか?」
「それは能力のコスト上限ですよ。試しに何かの能力を選択してみてください。」
試しに【剣術・技術】を選択すると、『50/500』になった。選択を取り消すと『0/500』にもどっていった。
「なるほど、コスト上限を越えて能力を得ることは出来ないんですね」
「そういうことです。これから使い続ける能力や才能ですから、ゆっくり慎重に選んでくださいね。」
女神様はそういうと俺と自分の分の椅子を創り出して腰掛けた。ゆっくり選んでいいと言うことだろう。
「じゃあお言葉に甘えて……」
俺は2時間ほど考え、自分にあったものを選び抜いた。それが
【剣術・才能、技術】【格闘術・才能、技術】【気術】【超身体能力】【身体強度強化】
そして残りのコストが『470/500』になった。
「終わりましたか?」
「はい。お待たせしました」
「それでは、異世界言語の読み取り、書き取り、それと喋れるようにしておきます。少し頭痛が起きますが一瞬ですので」
「了解です」
「それでは行きます。……ハァッ!」
すると一瞬だが頭痛が起き、その後身体中にエネルギーが満ちた感覚がした。
「これで能力、才能は貴方のものになりました。私には見ていることしかできませんが、どうか魔王討伐を、よろしくお願いします」
女神様が深く頭を下げてきたので慌てて止めた。
「やめてください!そういうことをするのは魔王を討伐した後にしてください!」
「……!確かにそうですね……分かりました、貴方と勇者を信じます。それでは貴方を異世界イースに送ります」
女神様が何もない所に両手をかざすとワープホールみたいなものが出来上がった。
「ここを通れば異世界イースに行けます」
「女神様、能力とかほんとにありがとうございました。ちゃんと恩は返させて貰いますからね」
女神様は一瞬驚いた顔をすると、すぐに微笑んで
「ええ、期待してますよ」
笑顔で手を振る女神様を見て頷くと俺はワープホールに飛び込んでいった。