『十三階段』
一段、二段、三段…。
俺は数えながら階段を上る。
どうして段数を数えているのかというと……。
『速水ー、早く、次音楽だぞ!』
『あ、チャイム鳴った!』
…と言って、先に行ったクラスメイト達が、登った階段。
その階段は、皆に「十三階段」と呼ばれていた。
たしかに、丁度ステップが十三段あって、一段数え間違えると十四段になる。
『速水~どうした、早く来いよ』
『音楽の先生、怒るよ~?』
クラスメイトの声が聞こえる。
俺はなかなか、一歩踏み出せなかった。
なんでって、だって。
目の前に…結構、長い階段がある。その先に扉…みたいな光が見える。
正直言って…別の階段から行きたい所だ。
でも。
『速水君、急ごう?』
クラスメイトが震える俺の手を取って、登り始める。
必死の抵抗虚しく、…力もあまり入らない。
俺の足が動き始める。一段、二段、三段…。
――ど、どうしよう…?
エスカレーターじゃないけど、死後の世界とか、変な所につながって?
これは、十三段でおわり、十三階段だ。
俺はそう思って、目を閉じて登った。
四、五、ろく、七、はち。きゅう、十…。
十一、十に、じゅうさん!おわり!歩くぞ!
「いてっ!!」
俺は盛大に転んだ。
痛い…。けど、良かった。十三段だ。
俺が足をさすりながら、登った階段を見下ろすと――。
真っ暗で、何も無かった。




