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JACK+ 怪談 ショートストーリー  作者: sungen
JACK+怪談 2章 子供時代
11/23

『お化け屋敷』 『帰り道』他2編

文化祭ネタです。

『お化け屋敷』①


「へぇ、ここか…」

「朔、早くイこう!!」

俺は短い茶髪の兄に手を引かれて、文化祭、と書かれた派手な風船つきの門をくぐった。


「どうぞ」

入った所で学生にパンフレットを渡された。やたら鳥のイラストがついている…。

さすが隼人だ。巻末には野鳥観察の豆知識が付いていた。


「隼人君は何組?」

「2-A。お化け屋敷やるんだって。張り切ってたから教室に行けば会えるかな…」


兄貴は去年くらいからなぜか急に丸くなって、今ではスッカリありふれた茶髪短髪のチャライ感じになってる。モヒカンで刈り込んだ部分もようやく人並みになって来た…。


「隼人のクラス見たら帰る」

俺は言った。

テレビで『たのしい外国語』を見ないと。


「ええ?折角だし他も全部見ようよ。たのしい外国語は録画しておいたし」

兄貴は言った。録画しておいたらしい。案外ぬかりない…。

「ほら、劇もある」

「見てどうするんだよ…」

と言いつつ俺は案内を見る。

「…『赤頭巾』?…ちょっと童話には興味無いな」

「えー面白そうなのに。童話って言うか時代劇?―江戸時代、赤頭巾と言われた伝説の人斬りがいた―。義理と人情…罰点黙々ハラハラのサスペンス。だって。おりょ、今からだ」

「あ、こっちだ。まだ人居ないな」

階段を上って直ぐ、2-Aと書かれた教室を見つけた。


「あ、隼人!」

受付ではちょうど隼人が、誰かと話してる。

「あ。来た来た。朔、いらっしゃい」

「うん。もうやってる?」

「ああ、君が一番。今日は出雲さんも一緒?」

「うん…ってあれ?また居ない――あ、そうか劇見に行ったんだな…赤頭巾だっけ?」

「ああ、あの劇か。練習見せてもらったけど良かったよ。午後の部もあるから朔も後で見ると良い」

「ん…」


…お化け屋敷って大抵大盛況だけど、そこはまだ誰も並んで居なかった。

雰囲気出しなのか、夜風が吹きすさぶ荒野、という感じのBGMが掛かっている。

「静かだけど、もうやってる?」

入り口はカーテン。

「やってるよ。君の感想を聞きたいな」

お化け屋敷は隣のクラスも借りてやっているようだ。

ちなみに2-Bは劇をやるクラス。


「分かった」

「いらっしゃいませ。ええと、ここは廃病院です…」

入り口のお姉さんが、ちょっと慣れないカンジで俺に話しかけて来た。


N県の病院で、殺人や自殺が立て続けに続いた…。

肝試しに来たあなたは、入り口で眼鏡をカラスに取られてしまう…。


「という訳で、このサングラスを掛けて入ってね。眼鏡は一番奥にあります」

「えっと、はい」

なんでギャグチック。

俺は受け取って、ちょっと大きめのサングラスを掛けた。

ただでさえ暗いのに、さらに暗くなる。


お化け屋敷か。ちょっと恐いな。


まあ、作り物だし――。



まずは待合室、って言うか入って直ぐの待合室こわ。椅子が三つ。

だれだよこのばあちゃん。普通に蜜柑食ってるけど。


段ボールで仕切られた暗い細道を通ると…段ボールに手術室→と書かれていた。

なぜかその下に、実験中、と書かれている。

「先生、このままだと麻酔が切れます…」「まだ大丈夫だ」

という会話が聞こえる。カチャ、カチャ、と。血まみれの医者と看護婦が音を立てる。

黙々として。手術を続ける。「あっ」と看護婦。


「俺の内臓がぁあーー!」

「うわぁっ!?」

俺は驚いた。というかいきなり患者が起き上がってびっくりした。

血糊も、脳みそと胃と腸が出てるっぽいのもやたらリアルだ…!

患者はすぐにまた寝て、実験は続いた。

…ちょっとドキドキした。


次は病室

ベッドが二台。もしかしなくても保健室の…たぶん治療用の幅の狭いやつだ。

もう一つは何かの台にシーツ掛けたヤツ。多分机。

血糊にまみれた、浴衣を着てミイラ状態の入院患者が痛みに呻いている。

なるほど…スプラッタ系か。


と思ったら、片隅の車いすが勝手に動いた。

「うわっ動いた」

意外とびっくりした。


廊下ではなぜか血まみれの手がいきなり出て来て、しかも足元からも出て来て、うわあっってなった。

廊下の端っこに立ってた、三角布を頭に付けた女の人に追いかけられた。

慌てて逃げた。


そのまま教室のドア――半分塞がれてて、段ボールの通路になって、這ってくぐっていく感じの道――を通って次の教室へ。


気合い入ってるな。


次はナース室。看護師さんが座って…?

っていうかこの看護師さん、めっちゃ死んでる!


突然、ガタガタガタガタ!と部屋の無線機みたいな機械が揺れて、プルルルルプルルルルプルルルルプルルルルビービービーと一斉にナースコールが響く。助けて、はやくきてぇえ、いたぃぃぃっ!と録音だが恐い。行かなきゃ~と看護師さんが復活した。

もちろん段ボールだけど、揺らしてるのは中に生徒が入ってるんだろうけど。


あれ?出口が…無い?


よく見ると、看護師さんが、出口は↓とダイイングメッセージを書いていた。

箱の横に取っ手が付いてて…扉になってる?


「次の部屋へはここからどうぞ」


「あ、どうも…」

開けたら、段ボールの中にいた血まみれの人に言われてビビッた。

「君が速水君?」「あ、はい…」

…段ボールの中の人は、懐中電灯で傷メイクのある顔を下から照らしながら、出口を開けてくれた。

「あ、この傷は本物」

「えっ」

嘘っぽいことを言われて、とりあえず這い出した。

これって、大きい人は通りにくいよな。


副院長室。院長室…。趣向を凝らしたお化け達と、なぜかゾンビ達がいた。

院長はドラキュラだった。そういえば看護師さん十字架持ってた。


――眼鏡はない。

「おかしいな」

と、矢印は続いてる。室内だけど外っぽいカンジで花の咲いたプランターがある。

また鈴虫の鳴き声。


「あ、あった!」

井戸の縁に眼鏡が置いてある。



「カラスは?いないのかな」


後ろでガー、と鳴き声がして、そこに居たのか、と俺は思った。



■ ■ ■


『お化け屋敷』②



「お疲れ様です~。眼鏡はありましたか?」

「あった。ふう…疲れた」

俺は段ボールで出来た眼鏡を受付の人に渡した。

出口にはわいわいと、クラスの非番?の人達が集まってる。


「朔、おかえり、どうだった?」

隼人も待ち構えていた。


俺は声を潜めた。

「えっと…院長ドラキュラだったのか?」「うん、そう言う設定。なんかヘンで楽しいよね」

院長は棺桶に入ってた。


あと院長室で、こちらに手を入れて下さい、と書いてあった四つ並びの箱に手を入れたら…カラスのミニキーホルダーが入ってた。当たり、プレゼントと書かれていた。

なんでだ、と心の中で突っ込んだ。貰ってきた。


「隼人、あれってギャグオチ?」

俺は少し脱力した。


どんな結末だろうかとワクワクしてたけど。ドラキュラって…。

箱は四つあって、隣は豆腐??とか、お決まりのこんにゃく、蜘蛛のおもちゃとか。


「何か成り行きで」「午後は私達もお化け役。後でメイクするの」

「まあ、面白ければいいんじゃないかな」「君が朔くんかー」


「なあ隼人、生徒会の仕事は?今から一緒に回れる?」

俺は言った。

「少しなら大丈夫――、何が一番気に入った?」


「ええと、―非常口?看護師さんの」

「ああ。アレか。後は?」

「そう言えばあのおばあちゃん、誰だ?」


「ああ、あれはクラスの子のおばあちゃん」

「―げ。そんなのアリ?」

「早く来ちゃったから。折角だしって悪ノリ?さっき帰ったよ」

隼人が苦笑した。


「なんだ。あ。後は―井戸かな。のぞいたら」

「井戸?ラストの?」



鏡が入ってて、後ろに誰か映って、地味に恐かった!



■ ■ ■


『お化け屋敷』③



「結構恐かった。――いや、楽しかった!」

俺は笑って言った。


「うーん、さすがに君はガチだね」

たこ焼きを食べながら隼人が言った。

「カラスも居た。たぶんメガネ取ったヤツ」

「へえ…あ」

隼人の携帯が鳴って、隼人は電話に出た。


『会長~!』

「ああ、いま行く―、じゃあ、今日はコレで。楽しんで行って。お兄さんは?」

「メールした」


俺はしばらくたこ焼きをつついていた。

あの女の人は、どうやら仕込みでは無かったみたいだ。

皆がびっくりしてた。


俺は――もしかして、意外と見やすい体質?

……よく分からない。


幽霊って脈絡無く沢山いるんだろうなきっと。


…俺は、そんな事を考えた。



■ ■ ■


『帰り道』



当たりのキーホルダーを眺めながら、俺は帰った。

隼人と一緒が良かったけど、やっぱりまだ学校があるみたいだ。


こんなキーホルダー、だれも入れてないって言ったけど。


本当は、だれかがこっそりサービスしてくれたのかも。




「~からすがないたらかえりましょう♪」




    「―からすがないたらかえりましょう~」


…だから、誰だよ、お前。






――。兄貴を忘れて来た。




■ ■ ■


『オバケヤシキ』④



「ただいま戻りました!ばあちゃん!お土産あるよ」


家に帰ってきた。

兄貴とは、一緒に住んでない。

親父とも、一緒に住んでない。


「おかえり、朔」

ばあちゃんがいる。

母さんは、いない。


ここが俺の家。……暗くて怖い本家なんて、知らない。


「おや…?」


「あれ?」


――椿の花が、ひとつ。玄関に落ちていた。



〈おわり〉

一番のホラーはなんで速水さんはお父さんお兄さんと暮らしてないの…?

別邸って?という謎の設定ではないかと…。

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