『幕間』(速水) 『ティーカップ』
暗闇から、くすくすと云う笑い声がする。
「――だから、賭をしよう」
―かけ?
俺は聞き返した。
「ああ。この子供が生き残れるか――」
この子供…?
つまり、さっきから、こいつが話している、怪談もどきの主人公…?
「それとも、この子がくらやみに、のまれて終わるか。語り比べをしようぜ」
くすくすと、そいつが闇の中で笑った。
『ティーカップ』(速水)
その日、カップが割れた。
俺が触れる直前に。
「あ…」
いいや、少し触ったと思う。
もうずっと使ってたし、ヒビも入っていたから、寿命だったんだろう。
俺は新しいカップを買う事にした。
――けど。
新しく買ったカップを戸棚において、茶碗を拭いていたら。
小さな音がして。
「あ…」
いつのまにか、新しいカップにひびが入っていた。
――これは粗悪品だっただけだよな?
■ ■ ■
『お手本』(JACK)
これは、別の角度から見た話だ。
ある子供が、カップを割った。
その子供はギリギリ触っていなかったけど、元々ヒビが入っていたけど。
そのカップは独りでに割れてしまった。
その子供は、もしかしたら。
『こんなヒビの入ったカップはいらない』
そう思ったのかも知れないな。
別の角度から見ると。
その子の後ろの、ある人が、手を伸ばしていた。
カチャン。
そして割れた。
子供は新しいカップを、嬉しげに買ってきた。
「~♪」
…新しいカップが気に入ったみたいだ。
だけど。
カチャン。
食器棚に置いた、そのカップは割れた。
――どうしてだろうな?
〈おわり〉




