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JACK+ 怪談 ショートストーリー  作者: sungen
JACK+怪談 通常版
1/23

『林間学校』 


「ほら、旅先って色々起こるだろ?」

速水朔は声を潜めた。


「これは俺が経験したことだけど…」


その日は林間学校だった。

中学生の速水は面倒だと思ったが一応参加した。

食事はもちろんカレー。皆で作り、それなりに楽しかった。


『速水、洗いに行こう』

『ああ』

速水は片付けを手伝った。


「その途中、洗い場の奥の茂みから物音が聞こえた気がして。なんだろうって思ったんだ。けど洗い物してたから、別に確かめたりしなかった」


「中学生だし、皆噂とか好きだろ?…夕食の後、キャンプファイヤーがあったんだけど、その時にはもうその話が噂になってて…噂って言うのは、十年以上前、ここで、キャンプしてた人が行方不明になったらしいって。その人は若い女性だったって。…噂好きの男子達が、怖がる女子にあること無いこと言いふらしてたらしい…」


らしい?

「らしいってのは、俺は何か、洗い物した後、気分が悪くなっちゃって、レクリエーションと、その後のキャンプファイヤーには参加しなかったんだ。先生に言って、テントで休んでた」


「…一人で寝てると、歌が聞こえるんだ。日本ではキャンプで良く歌う、おなじみの歌…えっと多分メロディーは何か英語の曲が元だったかな…こう…」

速水は口ずさんだ。


あ、その歌、知ってる。

「そうか…それで寝てる間ずっと、この歌が聞こえてたんだ。俺はああ、参加出来なかったな、まあ良いかって思って。それで、結局…さっき言った、男子が言ってた噂の内容とか、そう言う詳しい事は全部後で聞いたんだ。どういう噂だったかって…ノアも聞くか?」


「…う、ちょっと待って」

ノアは止めた。

「ハヤミ…これどんな展開?恐いの?」

ベスも聞いた。

「そんなに恐くないから、大丈夫」

速水は微笑んだ。


「このキャンプ場、俺たちが行ったときは、新しくなってそこそこ綺麗だったんだけど、その前は寂れてたんだって。その時キャンプに来た、若い女性が仲間とちょっとふざけてて…奥まで散策しに行って。まあ、仲間が悪かったのか、客が悪かったのか、夜になっても返って来なかった」


なんで?

「さあ、何でだろうな。…警察が総出で捜したけど、結局見つからなかったらしい。それが…駆け落ちとかなら良いけど、そうじゃ無かったんだって俺たちは知ってる」

速水は目を伏せる。


「何でしってるの…!」

ノアが言った。


「…見つかったんだよ。死体が。…まあそれは後の事だけど」


「話を戻そう。…キャンプファイヤーの後で、止せば良いのに肝試し…って言っても全員で星の見える展望台に行くって、言うそう言うイベントがあって」


「…距離も、キャンプ場からすぐで、道も広いし、明かりもある。けど俺もさすがに、一人でテントに残されるのは、ちょっと恐かった」

速水は思い出したのか、部屋の暗がりを見た。


「…俺は歌が止んだから、次はそのイベントだと思って、起き上がってテントを出た」


「先生達がいて、おれはホッとした。それで皆と合流して、高台まで歩いたんだ」


星は本当に綺麗だった。

キラキラして、いっぱい見えて。女子は流れ星が見えたってはしゃいでた。

速水君どうして来たの、具合大丈夫?って女子達に聞かれて、さすがに一人じゃ恐かったって俺は正直に答えた。


「男共にはからかわれたな。お前にも恐い物があったんだなって」

速水は苦笑する。


「それで、その後皆で戻って、点呼して。まあ普通に寝た――、恐い話とかしながらな。次の日も、ああ、日程は二泊三日だ。…俺はあまり気分が良くなかった。だいたいイベントはサボって、何回も読んだしおりとか、だれかがこっそり持って来た漫画とか読んでた。まあ、ほとんど寝てたけど」


「なんか、散々だね」

ノアは言う。

「ホントな。それで日程も終わって、俺たちはバスで帰る段になった」




バスに乗り込んで、残ったお菓子とか食べて。

それでガイドさんがあのキャンプ場にまつわる噂をきっぱり否定してくれた。

ただの噂ですって。行方不明があったのは、隣の県のキャンプ場だって。


それはそうだよな。先生がそんなおかしな所、選ぶわけが無い。

「俺は、先生の顔を見た」


「けど―」

その人、知らない女の人だった。


■ ■ ■


俺の前に座ってるんだよ。バスの運転席の直ぐ後ろ…。

窓ガラスに映って見えたんだけど、絶対知らない人だった。



あ、やばい――って俺は思って、目を瞑った。



「その時バスが急停車して――、これはマジなんだけど、事故った」

「え!!」

「もう、目茶苦茶驚いた。皆が悲鳴上げて。全員シートベルトしてて良かった」


「――まあ、それだけなんだよ。あんまり恐くないだろ?ガイドさんも軽傷だったし」


「っ恐いよ!!…その女の人、ゴースト?」

「さあ。けどな…後で気づいたけど、その人…星を見ながら、俺に『ひとりは寂しいよね』って言った人で…」


うぁあああ!!と言う、凄い悲鳴が聞こえた。

「お前等!!そんな話するな!!!」

とっくに寝ていたはずのレオンが起き上がっていた。


「あ、起きてたのか?ノアが日本の怪談聞きたいって言うから」


そのノアは、大変ビクビクしながら部屋の明かりを付けた。

「ベス、今日一緒に寝よう…」

「もちろんよ」

ベスも同じくだ。


「オチって言うか、実はその人隣の県で――」

「いい、もう言うな!分かったから!」

レオンは言った。


「まあ、この話、ジョンも寝れなくなってたから。まだ幾つかあるけど…?」


「「「ノーサンキュー!!」」」

皆の声がこだました。


「悪い」

速水は苦笑した。

結局、その女性は隣の県で殺され、こちらのキャンプ場に埋められた、と言う話だった。


〈おわり〉

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