拓馬はどこ?
と、走り出したものの、どこに向かえば、拓馬に会えるのか全く分からない。
拓馬、拓馬、どこにいるの?
「リーンネ、そんなに走ってどうしたの?」
バカ母の声とパカパカと映画などで聞こえる馬の足音がした。
まさか…。
振り返ると、白馬に乗ったバカ母と瞬が私を追いかけてきていた。
う、馬?
どこまでメルヘンチックな世界になってるの?
「着いてこなくていいから、バカ母」
そのまま落馬してしまえと思ってしまう。
「リンネちゃん。走ったら疲れるよ。この馬大きいから三人ぐらい乗れるよ」
いやいや。
一頭の馬にさすがに三人はきついでしょ?
「ほら、瞬もこう言ってくれてるんだから乗りなさいよ」
「てか、バカ母が降りればいいんじゃないの?」
「はぁ?誰がバカ母よ。私はルナって言ってるでしょう」
「はいはい」
さすがに、足が疲れて切り株に腰かけた。
「ほら、無理するから」
嬉しそうな声を出すバカ母に腹が立つ。
「大丈夫?リンネちゃん?」
馬から降りた瞬が、ズボンのポケットからレースのハンカチを取りだし、私のおでこに充てた。
「すごい汗だよ。これでも飲んで」
どこから取りだしたか分からない、スポーツ飲料のペットボトルを私にくれた。
「あ、ありがとう」
「髪の毛も乱れちゃって…。リンネちゃん、何であんなに急いでたの?」
瞬が自然に私の髪を撫でるから、ドキドキしてしまう。
「拓馬を探してたの」
光希だって、瞬が簡単に呼び出せたのだから、拓馬だって呼び出せるかもしれない。
それなのに。
「ああ、拓馬ね…。拓馬は…。今ちょっと…」
ビミョーに言葉を濁す瞬。
「拓馬が何?」
「リンネには、僕がいるじゃん。僕じゃダメかな?」
いやいや。
貴方にはもれなくバカ母がついてるでしょう?
って、そう言う問題じゃなくて、
「私は拓馬に会いたいの」
そう言うと、瞬はとても悲しそうな顔をして、私の目を見た。
「そっか…。僕じゃダメなんだ。僕だったらいつでもリンネのそばにいることができるよ。リンネが望むならいつでも飛んでくるよ」
ヤバイ、ちょっとドキドキしてる。
ドキドキしてる場合じゃないのに。
こんなのゲームの中のセリフにあるじゃん。
正直このセリフが聞きたくて、この場面だけ何度もリピートしたこともあるけど、瞬は二番手なの。
「さっき光希を出したみたいに拓馬を出すことできないの?」
「やっぱり、僕じゃダメなんだ。…。拓馬は呼べないんだ。僕が呼び出せるのは、彼女のいない友達だけなんだ」
え?彼女のいない?
それって…。
「残念ねー、リンネー。拓馬には彼女がいるんだってー」
嬉しそうに言うバカ母に突っ込む元気もなくなってしまった。
拓馬に彼女がいるってどういうこと?