告白
昨日までこの世界にいたはずのバカ母の存在が消えて無くなってる。
リリカはいずれこの世界を去ることが分かっていた。
分かってはいても、みんなの中から完全に消えてしまうことにショックは受けたものの、この世界を去ると言う事はそう言うことなんだと自分に言い聞かした。
でも、バカ母は…。バカ母に限って私に黙って消えることなんてあり得ない。
「どうしたの、リンネ?」
突然黙りこんでしまった私の顔を覗き込む拓馬の顔を見てたら、自然と涙が溢れてきた。
「リンネ?」
やっぱりこの世界にこのままいることなんてできないの?
いつか私も拓馬から離れていかなければならないの?
こんなにも拓馬の事が大好きなのに。
こんなにも拓馬が愛しいのに…。
叶わない恋だと思ってた、出会えるはずなんてないと思ってた、それでもやっと出会えたのに?
どうせ私もいつかこの世界から消えてしまうのなら。
それなら…。それなら、いっそうの事今ここで想いを打ち明けてしまおう。
「拓馬。私ね、ずっとずっと」
拓馬の腕をぎゅっと掴み、拓馬の瞳を見つめたまま言葉を続けようとした、その時。
「この世界でのルール忘れたの?」
女の子のような高い声が外から聞こえた。
カーテン越しからも分かるキラキラとした可愛らしい男の子はバカ母のパートナーであった、瞬だった。
「瞬?」
「体調はどう?リンネ」
部屋に入ってきた瞬の雰囲気がいつもと違うことに気が付いた。
「瞬、バカ母は?瞬なら覚えているんでしょう?だって、あなたは…」
「リンネ、待って。…。拓馬悪いけど、リンネと二人にしてくれない?」
私の言葉を遮って、拓馬に視線を合わせる。
「は?何で?」
「拓馬に聞かれたくない話するからに決まってるでしょう?ほんの少しでいいから二人にして」
「…」
「僕のこと信用できない?」
「…。分かったよ」
拓馬もいつもと違う瞬の様子に気付いたのだろう。
何か言いたげな唇はそれ以上動かず、私の頭を優しく叩いてから部屋を出ていった。
「リンネ…。どうしてこの世界に来たの?」
拓馬が去るなり、静かなトーンで口を開いた。
「え?どうしてって?」
「ここはリンネのいる世界とは全く違う世界なんでしょう?絶対に交わることのない世界。キミ達の言う二次元と言う世界」
ここが違う世界だと言う事、瞬が気付いていることに驚いてしまい言葉を失う。
「何でここに来たの?」
「それは…」
現実世界が嫌だったから、だけど、そんな簡単な理由だけじゃなくて、うまく言えない。
「中途半端な現実逃避?そんなんでここに来たの?だとしたら、許せないんだけど…」
「…。瞬?」
イラついてるように拳をぎゅっと握り、それを口に近付けた。
こんな瞬の姿初めて見た。
「リンネもいずれ元の世界に帰るんでしょう?そして、僕達のことすぐに忘れるんでしょう?」
「…」
「二次元ってそう言うもんなんでしょう?二次元なら傷つくこともない、二次元に逃げていれば安心だから、現実から目を反らして…中途半端に僕達に感情移入して、行けない世界だから自分の都合のいいように頭に描ける、そして、電源を切れば僕達のこと忘れてしまう」
瞬の言葉が重くのしかかる。
瞬の言ってることは間違いじゃない、間違いじゃないけど…。
違う、私は…。
「言い過ぎた、ごめん」
何も言わなくなった私の手をぎゅっと握りしめ、ベッドに腰かけたままの私を切ない目で私を見上げた。
「リンネのお母さんが消えた理由、僕知ってるよ」
そして、私の隣に腰掛けて小さく言葉を続けた。
「僕ね、キミのお母さん、ルナさんに本気で恋してたんだ」




