仮想空間
どのぐらい眠っていたのだろうか?
目を開けると、暖かな陽の光に包まれた自分の部屋にいた。
かなりの時間眠っていたはずなのにまだ眠い。
昨日あれからどうしたんだっけ?私…。
「リンネ、目覚めた?」
ノックも無しにドアが開き、拓馬が入ってきた。
「あ…」
拓馬の顔を見て昨日のこと全てを思い出してしまい、顔が熱くなる。
昨日、私…。
拓馬とキスしたんだ。
夢のようなあの出来事…。
何度もキスを交わして、それから…。
『もう寝ないとダメだよ。これ以上続けてたら理性が抑えきれなくなる』
顔を赤くした、拓馬が軽々と私をお姫さま抱っこしてこのベッドに運んできてくれたんだ。
「どうした?まだ調子良くないの?」
ベッドに腰を降ろした拓馬が私のおでこに触れた。
「熱はないみたいだな。それなのに、何でこんなに赤い顔してんの?」
そして、おでこに置いていた手を顎に移すと、
「昨日のこと思い出したのかな?言っておくけど、今度は止める気ないよ」
そう言って意地悪な笑顔を見せるから、心臓が飛び出てしまうのではないかと思うほど、勢いよく動き出す。
「本当お前って分かりやすいよな。そんな顔オレ以外の奴に見せるなよ」
ぽんぽんと軽く頭を叩き、今度は優しい笑顔を見せてくれる。
私の大好きな笑顔だ。
「本当、お前って可愛いな」
現実世界で毎日毎日、乙女ゲームをして拓馬の言葉に一喜一憂していたあの頃、こんな言葉を実際に言われるなんて思ってもみなかった。
でも…。
この世界は本当に現実の世界なのだろうか?
二次元なんて仮想空間でしかないのでは無いだろうか?
「拓馬…私どのぐらい眠ってた?」
「うーん…。半日ぐらいかな?」
「そんなに?」
いくら何でも寝すぎじゃない?
と言うか最近の私、何でこんなに眠ってばかりいるの?
「ここに来て色々あったから疲れが出ているだけだと思うよ、どう起きれる?一緒にブレックファーストでも食べよう!」
差し出された拓馬の手に私はゆっくり触れた。
拓馬の体温を感じながらも、一抹の不安を消すことはできなかった。
「ずっと眠ってただけなのにお腹空いちゃった」
空腹を感じた私は、左手でお腹を押さえた。
「こんなにすぐお腹が空くなんてうちのバカ母みたいだね」
常にお腹を空かせているバカ母を思い出して、クスっと笑ってしまった。
この二次元では、モデル並のスタイルを持つバカ母だけど、現実世界では中年太りのぷよぷよ体型。
あんな風になったら困るなー、と小さく続けた。
「リンネの母親もリンネに似てきっと可愛いんだろうなー」
え?
拓馬の信じられない言葉が耳に響いた。
「拓馬?今何言った?」
「え?リンネの母親ってきっと可愛いんだろうなーって」
何言ってるの?
拓馬は何度も何度もバカ母に会ってるじゃない‼
一体どう言うこと…。
まさか、リリカと同じようにバカ母のことも忘れてしまったの?




