住む世界が違うのなら…。
「どうした?さっきから黙ったままで?リリカに何か言われたのか?」
リリカとレントが帰ってから、私たちは家の近くの公園に出掛けた。
道中も今も言葉数の少ない私に、拓馬は何かを感じたのだろう。
「ううん、特には…」
「じゃあ、何で黙ってるの?」
誰もいない小さな公園のブランコに腰掛けた私の背後に立ち、不満気に吐息を漏らした。
「ごめん」
私はリリカに言われたことを思い出していた。
『ここの世界はただの空想のようなもの、いずれ夢から覚めたら消えてしまう、私、契約更新しなかったの、あんたも早く戻っておいで』
ここは確かに二次元。
拓馬なんて人間あっちの世界には存在していない。
でも、今ここにいる拓馬は本物だ。
こうして私の言葉にも答えてくれる。
「何で謝るの?オレに話せないこと?」
ブランコの鎖がキシキシと音を立てた。
拓馬がぎゅっと鎖を握りしめたからだ。
「そう言うんじゃ…」
「じゃあ何?」
拓馬は私が違う世界から来たこと知っている。
でも、それが三次元と言う世界でここが二次元だと言うことは分かっていないだろう。
「楓のところに戻りたいとか思ってる?」
「違う、どうしてそんなこと言うの?」
拓馬の何気無い一言に思ったより強い口調で返してしまった。
「…。ごめん、リンネが気持ちを話してくれないから…」
話してみよう。今思ってること。
せっかく拓馬と一緒に暮らせるようになったのに、こんなことでダメになんてしたくない。
「拓馬二次元って分かる?」
「二次元?何それ?」
案の定、二次元と言う言葉この世界では存在していないようだ。
「私が違う世界から来たことは分かるんだよね?」
「ああ」
「そっか…」
だから何?と言う拓馬の視線を受け、これ以上どう話していいか分からなくなってしまった。
「リンネにとってそれは重要なことなの?」
「う…。ん」
重要?本当にそうなのかな?
このまま永遠にここで暮らせることが出来るのであれば、そんな重要なことではないのではないのかな?
それが可能であるならば。
だけど。
ここはゲームと同じ。
電源を切ったらおしまい、電源を切ったら元の世界に戻らなければいけない。
「ふぅん、それを考えて元気なかったんだ?」
「うん、もしかしたらこの世界は夢でいずれ私はここから消えてしまうのかもって…」
ここにずっといられる訳がない。
リリカが言いたかったのはそう言うことだよね、きっと。
「よく分かんないけどさ」
そこで拓馬は、私をブランコから立たせてそのまま抱き締められた。
「今オレはここにいる、たとえ世界が違っても。だけど、もし…お前の言う元の世界にお前がいつか帰ってしまうと言うのならば」
細くて長い指先で私の頬を撫で顎に触れた。
「住む世界が違うと言うなら、オレがそっちへ行く」
拓馬…。
そんな言葉私にはもったいなさすぎて、何も言えない、言えない変わりに涙が溢れ出る。
「約束」
そして、優しく唇を重ねた。




