同居
「突っ立ってないで、上がったら?俺の家初めてじゃないんだし…」
拓馬の家に着いたものの、今日からいざここで暮らすとなると、緊張してしまう。
それに、楓のこともやはり気掛かりである。
躊躇しながら、そっと一歩踏み出した。
「あの…お邪魔します」
「じゃねーだろう?」
拓馬が不愉快そうな顔でこちらを振り返った。
「今日からここがお前の家なんだから、お邪魔しますじゃねーだろう?」
あ…。そうだった。
で、でも、そう簡単に入っていけないよ。
そんな風に戸惑っている私の手を捕まれた。
「ほら、早く来いよ、お前の部屋案内するから」
拓馬に連れられて螺旋階段を上っていく。
拓馬の手が温かい。
ここは現実の世界じゃないのに。ちゃんと温もりを感じられる。
「ここがリンネの部屋だよ」
案内された部屋に既に私の荷物が置いてあり、私の好きな色の壁紙、私の好きなキャラクターのヌイグルミに囲まれた天蓋のついた大きな白いベッド。
天井にはミニミニサイズのシャンデリア。
ピンクのフリルカーテンが風に揺らされている。
楓のところの部屋も素敵だったけど、こっちのお部屋はまさに現実世界での私が夢見ていたお部屋。
「お前、こう言う部屋が好きなんだろう?」
「うん」
すごい、見事に私の好みで驚いた。
「すごい、すごい、クローゼットの中も私の好きな服だらけ」
「はしゃぎすぎだろう?」
拓馬は面白ろそうに言ってベッドに腰掛けた。
「リンネって本当に可愛いな」
え?
い、い、今私のこと可愛いって?
「そうやって子供みたいにはしゃでるとことか本当に可愛い」
そして、私の隣に来て頬に触れた。
思わずびくっと肩を震わせてしまうと、
拓馬はクスっと笑った。
「大丈夫。心配しなくても今日は何もしないよ」
「…」
「だけど、二人きりの時にさっきみたいな無邪気な顔されたら、俺どこまで自分を抑えられるか分からないよ」
「え」
拓馬の真剣な瞳に心臓が止まりそうになる。
な、何このシチュエーション。
どうしたらいいか分からない。
ゲーム画面の向う側でもこんなシチュエーションドキドキするのに実際にこんなのって…。
その時。
ひどい目眩に襲われて、立っていられなくなった。
「リンネ?」
「ご、ごめん、ちょっと疲れたみたい」
心配そうな拓馬にそう言うのが精一杯だった。
貧血なのかな?
それとも、拓馬にあまりにもドキドキしてしまったからかな?
拓馬はひょいと軽々私をお姫様抱っこしてベッドまで運び、優しく髪を撫でてくれた。
「今日はリンネが眠るまで側にいるから」
大好きな拓馬の声、こんなにも近くに拓馬を感じるのに…。
私の意識はそこで途絶えてしまった。




