私ってずるい
「リンネさま。足の腫れどうですか?」
家に戻ると、誰に聞いたのか分からないが、私が靴擦れで動くのもきつかったことを既に楓は知っていた。
あれから、絆創膏を貼りしばらく動かなかったこともありだいぶ足の痛みは無くなってきたのだが……。
拓馬のじゅうたんに乗って帰ってきた私をめちゃめちゃ心配そうに楓が出迎えてくれた。
じゅうたんから降りる時、拓馬が差し出してくれた手に躊躇いながら、私はその手に自分の手を重ねた。
「今日は楽しかった。今度は歩きやすい靴でデートしよう」
そう言って笑顔を見せてくれる拓馬がやっぱり大好きで……。
でも……。
「送ってきてもらって済まなかった」
拓馬に頭を下げた楓の長い髪がパラパラと顔を隠した。
「別に。楓のためにした訳じゃないし」
楓より身長の低い拓馬は若干見上げるような感じで言った。
見上げると言うのは聞こえはいいが、言い方を変えると睨むような目線だった。
一触即発とまでは言いがたいけど、二人の間に不穏な空気が感じられる。
ゲームの中で、楓と拓馬はそんなに仲のいい感じでは無かった気がするけど、こんな風な険悪な感じは一切無かった。
「また後で連絡するね」
拓馬は楓から視線をずらして、私に言うとじゅうたんに乗って帰って行ってしまった。
「リンネさま。こちらの軟膏をどうぞ」
楓が私の手を肩に掛けて部屋へと連れて行き、リビングにある紫色のソファーに私を座らせると、自分のポケットから軟膏を取り出した。
「これを塗ればどんなケガでもすぐに治りますよ、さっ、足を」
え?
「じ、自分で塗るから大丈夫だよ」
「私はリンネさまのパートナーですよ、この世界でリンネさまが、よりよく生活できるようにするのが私の仕事ですから」
私が次の言葉を探す前に、楓は私の素足に触れ、クリームを塗り始めた。
どうしよう?
恥ずかしかったけど、楓の手が優しくマッサージするようにクリームを塗っていくうちに心までも落ち着いてきた。
「今日は楽しかったですか?」
下を見たまま聞いてくる楓に、うん。と素直に答えることができずにいた。
私ってずるいよね?
楓を傷付けないようにしておきながら、本当は自分を守ってるだけ。
「リンネさま。私は永遠にあなたの味方ですからね」
そんな私の気持ち多分楓は分かってる。
それでも、楓はこんな風に私の側にいてくれてる。




