拓馬あらわる
私、拓馬のどこを好きになったんだっけ?
王子さまなのに、王子さまっぽくないとこ?
ゲームの中で、私のために歌を作って目の前で唄ってくれたとこ?
それだけでも、現実を逃れられるには充分な要素だった。
息が詰まるほど辛い現実を乗り越えられるには、拓馬の笑顔と優しさがあったから。
「リンネ。何してんの?」
そう、一人でぼーっとしてる時、こんな風に私の前に現れて声を掛けてきてくれたのはいつでも拓馬だった。
あれ?
ゲームでは音声に自分の名前が入らないはずなのに。
「あ」
「やっと気付いてくれた。さっきから目の前にいるのに、全然気付かないから、どこが具合でも悪いかと思った」
外はもう真っ暗だったけど、星明かりがキレイ過ぎて、流れ星でもないかな?と思って外に出て、白のベンチに腰かけてぼーっとしてた。
「た、拓馬?拓馬がどうしてここに?」
「どうしてって?急にリンネに会いたくなったから会いに来た。それだけじゃダメか?」
拓馬はゲームの中で、私が一番大好きな白のブラウスにコバルトブルーのネクタイ、黒のパンツに真ん中が金色のコバルトブルーのベルトと言うファッションをしていた。
その姿を見て、胸がドキドキした。
その姿だけでもドキドキなのに、そんな言葉を掛けられたら、心臓やばいつーの。
「だ、ダメじゃない。」
「あれ?顔が赤いな。熱でもあるんじゃないの?熱があるなら、夜にこんなとこにいちゃダメだな。部屋に戻ろう」
ちょっと意地悪っぽく言う拓馬の言葉もゲームの中で言われる言葉そのもので。
それをリアルに言われるなんてどうしていいか分からない。
「今日、レントに聞いたよ。恋愛成就の実を取りに行ったのに、帰ってきちゃったんだって?どうして?」
「え?」
ゲームの中でも、レントと拓馬は親友同士だった。
親友ならそんな話するよね…。
「リンネ、今好きな人いないの?」
好きな人?
それは拓馬だ。
でも、今日ほんの一瞬迷ってしまった。
しかも、この世界では意中の人に思いを打ち明けてはいけないルールがある。
「僕、この間君が現れてからずっと君の事が頭から離れないんだ。どうしてだろう?」
な、何このシチュエーション‼
「ねー、明日空いてる?」
明日?明日の予定はノープランだけど。
「明日空いてたらデートしない?」
な、何ですとー?
私はどう返事していいか分からず、バカみたいに、口をパクパクしてた。




