大罪さんちの観察・長女
自分以外の兄弟が家にいない時の行動。
長女・色の場合
「はぁー……暇だなー。急に午後の講義なくなっちゃったし。みんなはまだ学校だからいないし」
白い半袖にショートパンツ姿の色はうつぶせになりながら脚をバタバタとさせる。
「そうだ!」
何かを思いついたようだが、無論ろくでもない事だ。
バッと起き上がった色は足早に部屋を出るとすぐ隣の怠美の部屋へと突入した。部屋の中心には広げっぱなしの布団が敷かれており、周りは服や本などが無造作に転がっている。本当ならベッドがあるはずなのだがスペースをとられる事を嫌った怠美の希望により設置されていない。他にはテレビと机の上にあるパソコン、そして服を入れるタンスが置いてあるだけ。
「うわぁ~。相変わらず散らかってるわね。人の事言えないけど」
小言を言いながら部屋の宝探しを始める色。手始めにぐるっと周りを確認すると、おもむろにクローゼットの扉を開ける。
中にはこれまで怠美が買ってきた漫画やライトノベル、ゲームなどが入っていた。中には怠美の歳では買えないと思われるものまで入っている。
「怠美ちゃんPCゲーム(18禁)なんか買っちゃって…………言ってくれれば買ってきてあげるのに。あ、このゲーム(もちろん18禁)借りてこ」
色々反応がおかしい姉の色はその後も物色するが特に目新しいものがなかったためか早々に切り上げた。
「さてと、次は妬亜ちゃんね」
次は隣の妬亜の部屋へと入室する。怠美とは対極的に片付いており、白のカーペットにベッドはピンク色の掛け布団。端にある机はちゃんと教科書が整理されていた。
「おぉ……やっぱり綺麗ね。さて、失礼して」
何の迷いもなくタンスの上から一段目の引き出しを開ける。そこには女子高生らしい服がたたまれた状態で収まり、二段目を開けるとズボンやスカートが彩っていた。
「ほうほう。可愛らしい服ね」
最後の段に手をかけ、勢いよく引き出す。そこには白やピンクと言ったどちらかというと清楚なイメージを持ちやすい下着の数々が。
「もー、妬亜ちゃんはダメね。もっと黒とか紫を買わないと」
躊躇いなくブラを一枚取り出すと自分の胸にあてがった。サイズなどもちろん合うはずがない。
「こんなの私はもう付けられないわね」
本人が聞いたら血の涙を流しそうな事を呟くとブラを元の場所に戻し、外へと出た。
次に足を向けたのは次男の部屋。扉をゆっくり開けて中へと入る。
「うん、そこまでひどくないね」
部屋には少し漫画が積まれているが散らかっているほどではない。むしろ年齢の割には殺風景とも感じられた。
タンスやクローゼットには上着や服しかなく面白みがないと感じた色はすぐに部屋を出る。
「傲君は見た目は少しチャラついてるように見えるけど、実際は凄く真面目なのよね……じゃあ、メインディッシュをいただこうかな」
色の瞳がきらりと光り、口の端からは涎を垂らしながら部屋の前に行く。
メインディッシュ。つまり努維の部屋だ。
早速ドアノブに手をかけるがガチャガチャと音を立てるだけで一向に開かない。どうやら備え付けた鍵がかかっているようだ。
「もう努維君はまた鍵をかけて。もしなくしたらどうするの。お姉ちゃんがスペアのカギ(無断)を持ってなかったら大変な事になっちゃうのに」
鍵を刺しこみ鍵を捻るとガチャリと開錠した音が鳴った。
再びドアノブに手をかけると今度はすんなりと扉が開く。
「お邪魔します!」
努維の部屋もどちらかと言えば片づけられているが、教科書などが出しっぱだった。だが、そんなものに目もくれずにまず始めにベッドの下を覗く。目的は男子高校生のお宝だ。
「ムフフ。さぁ、努維君の好みをさらけ出しなさい」
クローゼット、タンスの裏など探すが一向に見当たらない。
「おかしいわ。思春期の男子高校生なら10冊や20冊ぐらい持ってるはずなのに。まさか! 私で事足りてるのかしら! もう、努維君たら」
体をくねらせ、頭の中で自己完結させた色は次の獲物に手を伸ばす。
「さて、努維君の下着はどうかな」
引き出しを開け、荒い息遣いと恍惚した表情で努維の下着を眺める。
「き、記念に一枚貰おうかしら」
そう言ってトランクスを一枚引き抜きポケットの中に入れた。
「げへへ。今日はいい収穫をしたな~」
「へえ、なんで?」
「そんなの努維君のパ――」
ピタリと動きを止める色。思わず返事をしたが振り向く事はしない。なぜなら怖いから。
振り向けば絶対般若の顔で迎える弟がいる。
「色ねえ。こっちを向いてくれ」
だが努維の言葉に体が反応してしまい、自然と体が命令に従ってしまう。
「お、おかえり努維君。早かったわね」
にっこりと笑いながら青筋を立て見下ろしている努維。
「今日はスーパーの特売日だから忘れて置いてった財布を取りに行くために急いで帰ってきたら俺の部屋で姉が俺の下着を持っていたんだが……説明してくれる?」
「ま、待って! これは誤解なの!」
「右手にトランクス。左手にエロゲー持った奴の言葉が信じられるか」
と言う事でこの後色は一時間近くの説教を正座をしながら受けたのだった。
読んでくださり、ありがとうございました。