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大罪さん、ショッピングセンターに行くpart4

 努維に抱えられている暴は携帯が鳴っている事に気がつき、努維のズボンの右ポケットに手を突っ込むとごそごそとスマートフォンを取り出す。

「努維兄様、色姉様から電話」

 電話に出た暴はそのまま両手でスマートフォンを努維の右耳にあてがった。

「ハァ、ハァ……もしもし!」

 荒い息を漏らす努維の声に色は兄弟達の現状を容易く把握する。

「努維君……お姉ちゃんもやぶさかではないわよ? でも、電話越しでそんなに興奮されちゃ困っちゃう」

「困るのは色ねえのピンク色の思考だよ!」

 弟のやり取りをほどほどに努維達の状況を打破するために場所を聞き出す。

「今どこ?」

「二階! ハァ、ハァ……今右手の本屋の前を通り過ぎた!」

 エスカレーター近くの全体の見取り図を指でなぞり、努維達の大体の位置を確認した色はエレベーターの位置を確認すると電話で努維にこの後の行動を指示する。

「そのまま進んで。私がエレベーターに乗るから怠美ちゃんだけ乗って、他の子は隣のエレベーターに」

「了解!」

 画面をタップして通話を止めた色は急いで近くのエレベーターを起動させて二階に上がった。

 一方の努維達はエレベーター付近まで近づくと二台の内の一台が扉を開く。そこには色の姿があり、怠美を渡すように催促している。

 傲は抱えた怠美を急いで色に引き渡すと、閉じるボタンを押す。

 残りの兄弟達はもう一歩のエレベーターを使って下へと降りる。

 ギリギリのところで追いかけてきた集団から逃げ切れたが、下の階に行ったとしても今の怠美の姿はすぐに人目を引いてしまう。

 もちろん、色もそんな事も百も承知だった。だからこそ、エレベーターにいる時間を無駄なく使わなければならない。

 エレベーターが閉じた瞬間、怠美の服に手をかける。

「ちょ! お姉さん何を――」

「ごめん。話す時間ない」

 二人きりのエレベーター内に少女の悲鳴が響いた。

 二台のエレベーターは殆ど同時に一階に着くと、扉が開かれる。

 五人はエレベーターを下りるが色と怠美の姿が見当たらない。念のため努維と妬亜、傲の三人は二人が乗っているはずのエレベーターを覗くと、扉の前で立つ色と隅っこでもぞもぞと蹲っているジャージ姿の怠美が。

 色が回収していた怠美の服に着替えさせたようだ。

「よく着替え間に合ったわね。あって十秒程度でしょ」

「……間に合ってると言えば間に合ってるし……そうでないと言えばそうだし」

 色のあやふやな言葉に疑問符を浮かべずにいられない。しかし、その疑問は色の持っている衣服に移り変わる。

 怠美がさっき着ていた服が色の手にかかっているのは分かるが、もう一枚白いTシャツがかかっていることが気になった。

 だが妬亜はシャツの正体に気づき、努維に耳打ちをする。

「努維……あれって、もしかして」

 話に参加していない傲はふと怠美の方を向くと、次第に顔が真っ赤になっていく。

 もぞもぞとしている怠美の腕の間から咄嗟に閉めようとしてジャージのチャックに引っかかった淡い水色の下着を纏う胸部がチラつき、傲の瞳に映った。

「な、なななな! 怠美姉さん!? なんで!」

「あ、あはははは……シャツは着る時間なかったからジャージの下は下着だけで色々まずい状態」

 色は苦笑する。

「とりあえず私とお姉ちゃんで遮るからその間に前をしっかり締めなさい! 男共はさっさと離れる!」

「わ、分かった。先に車に向かうから。色ねえ、鍵貸してくれ」

 鍵を受け取ると妬亜に押されながらエレベーターから離された二人は下の兄弟達と共に車へと向かった。

 残った妬亜と色は遮るようにエレベーターの前に立つが、妬亜の目は終始虚ろな目でジャージのチャックを邪魔している胸を眺め、ぶつぶつと呟く。

 色はフォローしようとしたが、妬亜に天敵と対峙する猛獣の如く睨まれ、萎縮してしまうのだった。

 数十秒後、ジャージの前をようやく閉め終えた怠美は色から手渡された眼鏡をかけ、ショッピングセンターに来た時と同じ格好(見える範囲で)になると落ち着いたのか深い息を吐き、三人は駐車場に歩いて行く。

 途中追いかけていた野次馬達を見つけるが、追いかけていた人物と同一とは知らずに横を通り過ぎた。

 難なく駐車場に着いた三人。色は運転席、怠美は助手席、妬亜は後部座席に乗り込む。

「怠ねえ、大丈夫だったか?」

「今日だけで辱めを何度も受けたけど、生きれる程度には大丈夫」

「それって本当に大丈夫なのか?」

「そんな事よりも早く帰ろうよ。走ったせいでクタクタ」

「そうね。じゃあ、すぐに帰りましょうか」

 色は努維から鍵を受け取ると、車に差し込み鍵を捻る。エンジンがかかり、発進した車は大罪さん達を乗せて家路についた。

 数十分後、家に着いた大罪さん達は疲れた表情を浮かべながら玄関の扉を開ける。

「結局買えたのは怠美ちゃんの服だけか」

「ごめん」

「気にする必要ないわよ。悪いのは十割あっちのせいなんだから」

 今さら野次馬達に対して腹を立て始める妬亜。

「あ、しまった」

 ここで努維は何かを思い出したようだ。

「今日の夕飯の食材もついでに買おうと思ってたのに、買ってきてない」

「なら、近くのスーパーで買ってくるしないじゃない」

「……仕方ないか」

 疲れた体に鞭を打って動かす努維を見て罪悪感を抱かずにいられるほど妬亜は冷たい性格ではない。

「ああ、もう! あたしも行くから。傲、買い物袋持ってきて」

 姉の指示に従い、リビングから買い物袋を手に持って妬亜の元に戻る。

「はい」

「ありがと」

 袋を受け取った妬亜は努維を引き連れて近くのスーパーへ歩いて向かう。


読んで下さり、ありがとうございました

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