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大罪さん、ショッピングセンターに行く

 数十分後、目的のショッピングセンターに到着した大罪さん達。しかし、努維はショッピングセンターにまだ入ってもいないのに疲れた表情をしていた。

「努維兄ちゃん、どうしたの?」

 努維の表情を見た強が気遣って尋ねると、努維は笑みを浮かべるが、引きつってしまっている。

「俺は大丈夫だから、お前達はまだ汚れないでいてくれよ」

「なんだかよく分からないけど、分かった!」

 無邪気な笑顔を振りまき、努維はその笑顔で、ここまでの道のりの傷を癒す。

 何故、努維がここまで疲弊しているかというと、目的地までにつく間に二桁を超える色のセクハラ発言に耐えていたからだ。

 例えば、道中にこんな話をしていた。

「努維君努維君。窓の外に手を出してみて」

「別にいいけど」

 努維は指示されるまま手を外に出す。

(てのひら)を風が向かってくる方に向けて」

 掌を車の進行方向に向けた。そして、色が一言。

「それが胸を触った時の感触だよ」

 努維はスッと手を車内に引っ込めてから、開けていた窓を閉める。

「ちなみに、二の腕も胸と同じ感触らしいから試してみて。答え合わせはお姉ちゃんの使っていいから」

「するか!!」

 この話の時、暴と強はというと、妬亜と傲が機転を利かせ二人の両耳にイヤホンを装着させ、持ってきていた音楽プレイヤーに入っていた曲を聞かせていた。そのため教育上悪影響しか生じさせない色の発言は全てカットされ二人の耳には届いていない。

 しかし、この会話はどちらかというと優しい方であり、テレビに映ればカットか、会話の殆どをピー音にされ何を言っているのか視聴者には分からなくなるレベルの言葉を当然の如く発言していたのだ。

 そんな状況を耐えきった努維に傲は肩に手を置いて労った。

「お疲れ兄さん。帰りは怠美姉さんに助手席を座ってもらおう。今はただ楽しんだ方がいい」

「……そうだな」

 二人は後を追うようにしてショッピングセンターの中へと入っていった。

 ショッピングセンターは一階から三階が吹き抜けとなっており、下の階からでも上の階が人で賑わっている事が見て分かる。

 努維達が辺りを見回すと入ってすぐのトイレの近くで、妬亜以外の兄弟達が待っている事に気が付く。

「妬亜ねえは?」

「努維君達を待っている間にトイレ行っちゃった」

 そこにちょうど良く、トイレから帰ってきた妬亜が合流する。

「あ、努維達来たんだ」

「ああ、今さっきな。で、先にどうする?」

「移動する時に荷物は邪魔になるから、買い物は後の方がいいと思うよ」

「珍しく色お姉ちゃんがいい意見出してくれたよ」

「最近、お姉ちゃんに対する扱いが酷いと思うなー。私を一体何だと思ってるの」

 軽い気持ちでされた質問に、他の兄弟はお互いの顔を見てから色の方に向きを直す。

「僕の姉ちゃん」

「ウチの姉様」

「ちょっと変わってる姉さん」

「頭の中がピンクなお姉さん」

「男だったら通報されてもおかしくない言動をするお姉ちゃん」

「歩く公然猥褻物」

「年齢が上にいくにつれて酷い! 努維君に関しては、「姉」に類似する単語すらないよ! 物質扱いだよ!」

 嘆かずにはいられない色。流石にやりすぎたと思ったのか、努維は声をかける。

「あー、言い過ぎたよ色ねえ。ほら、機嫌治してゲーセンに行こうぜ」

 色は俯きながら一度だけ首を縦に振った。


 二階のゲームセンター着いた大罪さん達。

 目の前に広がる、クレーンゲームややメダルゲームなどの種類様々なゲームから発するライトが場を彩っている。

 耳には大音量のゲームの音楽や、大量のメダルの獲得を知らせるけたたましい音が鳴り、近くにいても少し声を張らなければ聞こえないほど騒がしい。

「で、来たはいいけど、何するの?」

「「ウチ(僕)! クレーンゲームがしたい!」」

 妬亜の質問に年少組の二人が答える。

「はいはい。でも、あまり沢山取ったらだめだよ。移動するの大変だから」

 妬亜の言う事に、「ハーイ」と言いながら大きく手を上げ、妬亜と色と共にクレーンゲームへと向かった。

「わたしはメダルゲームに行ってくる」

 と言って、怠美も動く。

「兄さん、オレ達はどうする?」

「そうだな……」

 ゆっくりと歩きながらゲームを品定めしている努維の後を追う傲。やがて、一台のゲーム機の前で努維の脚が止まる。

 そのゲーム機は『ゾンビキラー』という、街に徘徊するゾンビをひたすら倒してスコアを競うシューティングゲーム。

「傲。これで、勝負するか?」

 ニヤリと笑う努維に傲は同じように笑い返す。

「望むところ」

 すぐに、二人分の硬貨を投入口に入れ、手元にある銃で『VSモード』めがけて努維が引き金を引く。画面の映像を弾丸が打ち抜き、今まで写っていたものは崩れ落ちる。入れ替わるように廃墟と化した街の映像が流れた。

 二人は銃を構え、次々現れるゾンビを一心不乱に打ち続ける。



 十数分後。ステージが終わり、スコアの結果を待つ。

 画面にスコアが映し出される。結果は僅差ではあったが、努維に白星がついた。

「あー、負けちゃったかー、もう一発当ててれば」

「はっはっは―、まだまだ、弟には負けるわけにはいかねえよ」

「あ、あのー……」

 勝敗に一喜一憂している二人は声を掛けられ、後ろを振り向くとそこには三人組の女性達の姿が。

「ゲーム上手ですね! よかったら私達と一緒に周りませんか?」

 見知らぬ女性達からの誘い。所謂、逆ナンというものだ。そして狙いは傲だと努維は気付く。

(あー……この三人は傲目当てだな。視線がチラチラ傲に向いてるし。さぁ、傲はここでどう答える)

 努維はあえて口を出さずに、傲に全てを任せた。

 緊張で、震えている傲は決心したように一度深呼吸をしてから口を開く。

「オレと一緒に? 一緒にいたらお姉さん達の心を撃ち抜いちゃうよ。……行こうか、兄さん」

 颯爽と傲はその場を立ち去る。

 立ち去る前に努維は女性達を一瞥すると、全員惚けた顔で傲の後ろ姿を眺めていた。

 傲に追いついた努維が声を掛けようとすると、傲は壁に手を突きながらぶつぶつと喋り始める。

「またやっちゃったよ。どうしてこう変な事を言っちゃうんだ。あんなセリフはイケメンの奴しか似合わないのに。どんだけナルシストなんだよオレ」

 落ち込んでいる傲を眺めながらお前もそのイケメンだから大丈夫だ、と心の中で努維は呟いた。

「傲、とりあえず、怠ねえのところ行くぞ」

 傲を引きずって、メダルゲームコーナーに向かい、怠美を探す。

「あっ、いたいた」

 ボサボサの長髪でジャージの女性を探すのに時間はかからなかった。ゲームで遊んでいる怠美に近づくと、コインケースには溢れるどのメダルが。それも一ケースではなく、三ケースも。

「あれ、努維。ん? 傲はどうしたの?」

 振り向いた怠美はすぐに傲の様子がおかしい事に気がついた。

「まぁ、色々あってこうなった。俺はこの後、妬亜ねえのところに行こうと思うから傲を頼みたいんだけど」

「うん、分かった。ほら、傲。お姉ちゃんの隣に座りな」

 座っていた長椅子から少し左により、右手で誘導するようにポンポンと椅子を叩くと傲は素直に隣に座り、怠美は右手で傲の頭を撫でながら左手でメダルを投入していく。

「終わったら、こっちに合流してくれよ」

 怠美が右腕を上げるのを見た努維はその場を離れ、妬亜達がいると思われるクレーンゲームのコーナーに差しかかる。


読んでくださりありがとうございます。

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