大罪さんちの気持ちいい事
外はすっかり夜に移り変わり、月明かりが住宅を照らす。
その中の一軒、大罪さん達の住む家から甘美な吐息の音が聞こえる。
あまり触った事のない場所を責められる少女の身体は痙攣したかのようにビクッと反応してしまう。
しかし少女の兄はどんどん奥へと挿れていく。
「怒維、にい、さま」
「じっとしてろ。すぐに終わるから」
「だめ……もっと、やって、お願い」
ギュッと手に力を入れ、頰を赤く染めた暴は潤んだ瞳で懇願する。
「でもこれ以上は」
「気持ち良いから、もっと」
暴の頭に手をポンと置いた怒維は、
「暴……ダメだ。これ以上は耳が傷つく。もう耳かきはお終いだ」
耳かきの棒を暴の耳穴から抜き取り、乗っかっている耳垢をティッシュの上にトントンと落とす。
「やー、もっと!」
「ダーメ」
梵天で細かい耳垢を取り除くと膝枕していた暴を起き上がらせる。
頰を膨らませながらもそれ以上の駄々はこねない。
「怒維兄ちゃん、次は僕の番!」
間入れず強が怒維の膝の上に寝転がった。
「分かってる分かってる。じっとしとれよ」
慣れた手つきで耳掃除をする怒維の姿を他の兄弟達が感心した様子で見ている。
「流石怒維兄さんというべきなのか」
「無駄に女子力が高いわよね」
「どちらかというとオカン力」
「暴ちゃんの時もそうだけど、小さな子供のトロンとした顔を見てると何だかイケナイ気分に、ヘブシッ!」
妬亜の裏拳が色の顔面に綺麗に入ると椅子から転げ落ちて大きな音が立つ。
「大きな振動させるなよ! 強が痛がったらどうするんだ!」
「現在完了系でお姉ちゃんが痛い目に遭ったのに微塵の心配もしてくれない」
起き上がり、椅子を立てて座り直すと裏拳が入った鼻をさする。
「怒維にいちゃん早く続きー」
「はいはい。じゃあ体転がせ」
体をコロンと反転させ、再び匙は耳の中をかき回す。ゴロゴロと喉を鳴らしそうなほど気持ちの良さそうになすがままの強。その姿をじっと見つめる上の兄弟達。
手際の良さと定期的に耳かきをされている強には耳垢が少ない事もあり、あっさり終わってしまう。
「ふ〜、終了。強起きろ」
うつらうつらの強の肩を揺する。
寝ぼけ目を擦る強を抱っこすると同じく眠そうな暴を顎で差して傲に指示を出した。
「傲。暴も連れて来てくれ」
「うん。ほら暴。もう寝るよ」
ウトウトする暴を抱き上げて二階の暴と強の部屋に入ると、電気を点けずに敷いてある布団に寝かせて優しく布団を被せる。
小さな寝息を立てている事を確認した二人は大きな音をさせないように廊下に出て、そっと扉を閉めた。
「二人は寝たの?」
「あぁ、ぐっすりだ」
降りてきた怒維はソファにどかっと座り、傲は少し離れて同じソファに腰を下ろす。
「怒維が耳かきする日は何時も暴と強は寝るの早いよね」
「相当気持ち良いのかしら。あの子達以外誰も受けた事ないし」
双子の姉妹のボソボソと喋っている内容が聞こえたからではないが怒維はふと視線を傲の顔へ。正確には耳に向けた。
「ん? 傲、じっとしろ」
「え?」
耳を引っ張り耳の中を覗く。
暴と強とは違い耳穴内の壁には垢がベッタリと一面に張り付き、奥の方にも溜まっていた。
「兄さん?」
「お前、耳かきしたの何時だ?」
「えーっと」
視線を宙に彷徨わせるが一向に答えが出でこない。
忘れるほど前にした傲に呆れたようにため息を吐いた。
「おいおい。これじゃ聞こえづらいだろ。痒くなかったのか?」
「確かに痒いなーと思った事はあるけど指でかけば治るし」
「そんな事したら垢が奥に入るだろ。耳かきしてやるから寝転がれ」
半ば強引に膝枕をされ、ガッチリと耳を掴まれた傲は身動きが取れない。
「じ、自分でやれるから良いよ」
「ダメだ。こんなに張り付いた垢を見ずに綺麗に取れるはずねえ。それに、ここまで溜まってると綺麗にしたくてうずうずするんだよ」
口角を吊り上げていつの間にか持っていた耳かきの棒の先端が耳に触れる
こうなっては少しも動く事は出来ない傲は諦めて兄の気がすむまで付き合う。
たかが耳かき。そう思っていた。
「まずは耳の表面から」
耳のシワに沿って匙がなぞる。
手際の良さも相まって心地良い。
(あー、これは確かに気持ち良いな。でも)
表面が心地良い分、耳穴の痒みが主張が激しくなる。
「兄さん。その、穴の奥をかいて欲しいな」
「ダメダメ。手前から取らないと耳垢は奥にいくんだ。だから我慢しろ」
お預けをくらい、余計に気になる痒みを誤魔化そうとして体をくねくねと動かすが、
「動くなって。耳の中傷つくぞ」
そう言われ制止された。
匙が動くたびガソゴソと砂が入っているのではと思うほどの音が響く。
相当溜めてしまっていたようでまだ痒みの大元まで時間が掛かりそうだ。
だが確実になくなっている。
耳垢をすくい取る音に心地良さを覚えていると、ガサッと音が経つと同時に痒みが治まった。
「あ」
「どうした?」
「今触ってるのが気になってるやつ」
耳を少し引っ張り元凶を覗き見る怒維。
「あー、確かにこれは痒くなるわ」
奥の壁にべったりと張り付く大物を匙で突く。
少し硬く、なかなか手強そうだ。
「周りから少しずつ剥がすしかないな」
匙を奥に入れ、端っこから小刻みにカリカリかく。
魅惑の響きに傲の口はだらしなく開いた。
「あ〜」
ただ快楽に身を投じる事しか出来ない。
着々と壁から剥がしていくと手に伝わる感触が変わった。
「お、これなら一気に」
少し力を入れて引っ張る。
ゴソッと大きな音を立ちながら壁から完全に剥離した垢をすくい取ってティッシュの上に落とす。
「よし、終わりだ」
「あ、ありがとう」
もう少しで理性をすべて離しそうになったが、ギリギリの所で踏みとどまった。
耐えた自分を称えながら起き上がろうとすると肩に手が置かれる。
「おいおい、どこ行く気だ?」
怒維の悪気のない笑みが今の傲には恐ろしく見えた。
「終わったからどこうかと」
「何言ってんだ。まだもう片方が残ってるだろ?」
体を半回転させられて膝枕をされると間髪入れずに耳かきの棒が逆の耳の中へするりと入り込んだ。
「あ、あう」
「大丈夫?」
床に転がって真っ白に燃え尽きている傲をツンツンと指先で突く怠美。
「ほ、本当にただの耳かきなの?」
上二人の姉が疑いの眼を向けるが自然体で怒維はこう言った。
「この機会に全員するか?」
悪魔の囁きが姉達を身震いさせる。
「ど、どうする?」
「どうするって、せっかくだし怒維くんの誘いを受けた方が」
「傲の後だと怖いんだけど」
「わたしが行く」
意を決して立ち上がった怠美。
「ほ、本気なの?」
「怠美ちゃん。無理しなくても」
「ううん、大丈夫。わたしは必ず傲の仇を取る」
目の前の茶番劇を冷ややかな目で見る怒維は手で招く。
「早く来てくれ。簡単に済ませるから」
「二人共行ってくる」
怒維の前まで歩き、ポスンと怒維の膝枕に頭を乗せる。
「怒維。傲の仇、取らせてもらうよ」
「一体俺が何したってんだよ」
耳かきの棒が耳の表面をなぞり始めた。
『わたしはどんなに気持ち良くても屈したりなんかしないから!』
「って、言ったのがほんの数分前なんだけど」
「あんっ! そこいいの、もっとやって下さい!」
視界の先にいる双子の妹が体をくねらせてねだる姿に頬杖をついて眺める。
「数かきですでに限界って、どんだけ耳が弱いのよ」
「即落ち巨乳少女……薄い本が厚くなりそうな内よ、ウボッ!」
妬亜の肘打ちが後方の色の鳩尾をクリーンヒット。椅子に座っていた色はうずくまる。
「ごめーん、手が滑った」
「妬亜ちゃん。後で、覚えててね」
不穏な言葉をボソリと呟く。
「よし、終了」
「ご主人様、もっと」
「誰がご主人様だ!」
怠美は物欲しそうな顔で妬亜達の元に戻る。
「あんた、途中から言動がおかしかったわよ」
「その、あまりの気持ちよさに昨日やってたゲーム(18禁)に出てくるヒロインのメイドになりきっちゃった」
「あー、あのゲームね。私もやり直してみようかな」
同感する色はさておき、次は誰が行くのかだが。
「お姉ちゃん、どうする?」
「先に行かせてもらおうかな」
スッと立ち上がり怒維の元へ。
「今度は色ねえか」
コテンと頭を預けた。
「うん、よろしくね。その怒維くんの(耳かきの)棒でお姉ちゃんの(耳の)中をかき回していっぱい(耳垢)出して気持ち良くさせてね!」
「語弊しか生まないその口を先に縫い合わせるぞ!」
棒が表面をショリショリと手際良く擦る。
確かにこれは気持ちいいと思いながらも心の奥は欲望に忠実だった。
(ぐへへ、これで怒維くんのあんな所やこんな所を触っても合法よね)
ワキワキとした片手が怒維の太ももに触れようとしたその時、掃除されている右耳からガソッと大きな音がなる。
「色ねえ、自分の状況が分かってないのか?」
何をどうするかまでは言わないが、匙は予定よりも奥に突っ込まれ、鼓膜付近まで近づいていた。
「ふふ、怒維くん。怒維くん大好きなお姉ちゃんがたった耳一つで止めるとでもーーあっ、コツコツしちゃダメ。鼓膜に響いちゃう」
軽く数回コンコンと壁を叩かれ、怖気付いてしまった色は大人しく怒維に身をまかせる。
「最初からそうしてくれればいいんだよ」
棒を引き抜いて手前から垢を剥がす。
お触り出来ないのは残念だが、この心地良さを味わうだけでも役得と思っていた。
しかし、それはまだ快楽の序章に過ぎない。
匙がどんどん奥に伸びていくにつれて体が疼き始める。
匙は奥の垢に触れた。
「ひゃっ!」
思わず声を上げてしまい両手で口を押さえ込む色。
「や、やめてくれよ。今日に声出すの」
「ご、ごめんね。今度は大丈夫だから」
再度奥の垢に匙を引っ掛ける。その度色が口から漏れる微声と上気する頬。汗ばんでいく体にシャツがピッタリ張り付いてラインを強調させる。
「くっ、ふぅ……はぁ、はぁ、あっ」
下唇を噛み、潤んだ瞳は朧げに遠くを見つめていた。
そんな姿に姉妹は直視する事など出来るはずもない。可能ならばこの艶かしい声も聞きたくはない。
「ぬ……ぬ、い、くーー」
「はい終了! 今度は反対側をパッパ終わらせるぞ!」
すぐに体を反転させて手っ取り早く終わらせようと匙を入れる。
「ん〜〜、はぁ……気持ちよかった。ありがとう怒維くん」
つるつるの色とは正反対に何処となくげっそりとしている怒維。
だが休んでいる暇はない。
まだ後ろには妬亜が待っているのだから。
「じゃあ次、妬亜ねえ」
「してもらうのはいいんだけど。あんた大丈夫?」
「平気平気」
と言いながら虚ろな目をしていた怒維に若干不安を抱かずにはいられない。
しかしこの機会を逃したくはない妬亜は頭を怒維の膝に乗っける。
予想以上の気恥ずかしさによって早まる鼓動。ほんのりと紅潮する頬。
恥ずかしさやら嬉しさやらがごちゃまぜになって訳が分からない。
おもむろに怒維が妬亜の頭に手を乗せると妬亜の体はビクッと反応する。
「じゃあ、動かないでくれよ」
棒が耳に近づいてくる気配がするのかギュッと目をつぶった。
「あ、ちょっと待って」
突然のタイムを出したのは何故か色。
「どうしたんだ突然」
「いやー、そういえば怒維くんが簡単に済ませるって言ってたからもしかして本格的な方法もあるのかなーって」
「え?」
色の意図している事が一切理解出来ない妬亜を膝枕しながら怒維は答える。
「まぁ。と言ってもマッサージをしたり、ちょっとかき方を変えるぐらいだけど」
「ちょっとそれ見てみたいなー」
「見たいのか?」
「うんうん。見たい見たい。だから"妬亜ちゃん"で実際にやってみて」
「いいけど」
ようやくここで色の目論みが読めたが時すでに遅し。
妬亜の頭は両手で持たれてしまい動けない。
「ちょ、怒維。別に手間をかけなてもいいわよ」
「そのー、なんだ。俺もやってみたいってのもある。これ暴と強にやった事あるんだけど、二人とも1分も持たずに寝るせいで感想聞けないんだよ」
この時点で結末が予想出来たが、おそらく妬亜の予想などゆうに超えるのだろう。
「て事で、続けるから」
率先して行動に移す怒維を止める事など出来ない。
諦めて全てを怒維に任せる。
「まずはマッサージから」
耳をムニムニと揉まれ、包まれでとても気持ちがいい。そんな事を思っていると体に異変を感じる妬亜。
(み、耳が熱い)
揉まれるたびに赤みと熱を帯びていく耳。そして奥から湧き上がるムズムズ。
「血行が良くなったから大分熱くなったな」
「怒維。も、もうそろそろお願い」
「分かってるって」
耳かきの棒をくるりと回すと先端を耳の皺に沿わせた。
(手前からで奥がもどかしいけど、これはこれで気持ちいい……ん?)
耳から伝わる感触に違和感がある。
確かにかかれている。しかし、それだけではない。
(匙でかいて、湾曲した部分で撫でるを交互に行って耳かきと同時にマッサージをしてる!?)
妬亜の前にやった兄弟達のような掃除目的だけでなく、耳のつぼを的確に押して相手を気持ち良くさせようとしている。
「どうだ妬亜ねえ」
「い、いいんじゃない?」
はっきり言って気持ち良すぎるが、別の事であまり余裕がない妬亜。
(気持ちいいけど、一気に痒くなった!)
上質な心地良さに紛れて痒みが牙を剥く。じっとしていられず、足元がソワソワとせわしなく動いている。
「そうかそうか。よし、表面はこのぐらいでメインの穴に」
匙が穴の手前にある垢を触った。
ーーカリッーー
「ふぐっ!」
耳に響く乾いた音。体全体に電流が流れると共に歓喜が訪れる。
「えっと、大丈夫か?」
「大丈夫、よ」
溢れ出そうな甘い吐息を堪えて答えた。
「なら続けるぞ?」
「きなさい!」
覚悟して受ける妬亜。だが快楽には勝てない。
手際良く垢が取り除かれていくとどんどん奥に向かい、それに比例して体が敏感に反応してしまう。
「お、大物」
大きな垢の塊に匙を伸ばし、カリカリと小刻みにかく。
「ひやぁっ! や、あん!」
もう声を抑える事が出来ない。
弓なりに背中を大きく反らせてしまう。
「ちょ、動くなって!」
ぐっと体を近づけ妬亜の動きを片腕と体を使って止めながら作業を進めていく。
「もう少し」
素早く動かし早々に取り除事するに怒維に対し、激しく伝わる快感でより一層動いてしまう妬亜。
「こんの!」
匙引き抜きくと、先端には大きめの耳垢が乗っていた。掃除は無事終了したようだ。
肩で息をしてぐったりとしている妬亜の頭をポンポンと叩く。
「妬亜ねえ終わったぞ」
「う、うん。ありが、とう」
(やっと終わった。あれ以上あのまま続いてたら私の中の何かが粉々に砕けそうだった)
体を起こそうとしたが色の横槍が入った。
「あれ、まだ片側残ってるよ」
妬亜の動きが止まる。
「そうだった。妬亜ねえもう一回横になってくれ」
もう一度あれを味わうのは限界が。だが、もう片方が終わってないのも少し気持ちが悪い。
「こ、今度は簡単に済ませて」
「流石に俺もそうする」
お互い顔を真っ赤にさせ、妬亜は体を半回転させた。
その後は声が上がる事なく耳掃除が終わったらしい。
耐性がついたのもあるが、怒維の股を目の前にしてあわあわとしていたのが大きな理由だったとか。