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大罪さんちの観察・四女

 自分以外の兄弟が家にいない時の行動


 四女・暴の場合


「1時間したら帰ってくるから留守番お願いね」


 色はそう言い残して外出をする。

 一人残った暴はソファに座り、静まり返ったリビングを見渡す。

 兄姉達は勉強のため近くの図書館を利用しに行ったり、出かけたりしている。同い年の強は友達の家に遊びに行っており、嫉妬心の表れからか暴は頬を膨らませた。

 唯一残っていた色だが、レポート用紙など大学必要なものが不足していた事に気がつき、買い物に行ったのだ。

 やる事のないはリモコンを手に持ち、テレビに向かって電源ボタンを押す。

 しかし、昼過ぎの時間にやってるのは情報番組やサスペンスなど。小学生の暴には何の面白味もない。

 電源を切り、ソファに身を預けて無意味にただぼーと意識をあやふやにした。


「色姉様、まだ帰ってこないかなー」


 そんな言葉が出たのは留守番が始まってから10分後の事だ。

 暴の腹から虫がなく。眉をハの時にさせた暴は空腹を少しでも満たすため机の上に置いてある箱に入った煎餅に手をつけた。

 バリバリと噛み砕く音が虚しく部屋に響く。


「……あ、そうだ!」


 寂しさから落ちていた肩が上がり、小走りで二階へ駆け上がる。

 勢いよく開け放たれた扉の先は色の部屋だった。


「えーと、確か」


 机の上に置いてある小箱を自分の所まで引き寄せ、蓋を開ける。

 中には口紅、ファンデーション、マスカラなど最低限の化粧品が入っていた。

 食欲の塊の暴でもやはり女の子。キラキラした化粧品を使う事に憧れていたが、姉達に阻まれ、使う事が出来なかった。

 そして、その願いがやっと叶うのだ。


「にひひ」


 手鏡を立たせ、写った顔を覗きながら以前色がやっていた姿を思い出しながらファンデーションをベタベタに塗っていく。

 気が済んだ所で今度は口紅を取り出し、唇をなぞっていくのだが、慣れない手つきでつけた口紅は、唇を外れて頬にまで真っ赤に染める。

 次に持ったのはキラキラと光るパウダー。それをベタベタの顔にかけ、不自然な輝きを得る。

 鏡に写る暴の顔はお化けのように白く、血のように真っ赤でいびつに描かれているラインはお世辞にも上手とは言えない。

 そんな失敗だらけの顔を見ても暴は不満になるどころか、むしろ満足気に笑みを浮かべていた。


「ただいまー」


 帰ってきた色を出迎えるついでに自分の姿を披露しに行く暴。


「おかえりなさい!」

「暴ちゃん、ただいーー暴ちゃん!? どうしたのその顔!?」

「お化粧したの!」


 おそらく自分の化粧品を使ったのだろう。しかし、満面の笑みの妹を怒る事など出来ず、ついつい優しくしてしまう。


「もう暴ちゃん。勝手に使っちゃダメでしよ?」

「う……ごめんなさい」


 色は中腰で、ショボンとする暴の頭を撫でた。


「うん、許す。それじゃあ、お風呂入ろっか」

「うん!」


 暴の手を握って風呂場に向かった色。

 風呂場からは楽しそうにはしゃぐ二人の声が聞こえた。

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