『エイジ・オブ・ギャラクシー』エッセイ:宇宙描写について
■宇宙ってどんなとこ?
『エイジ・オブ・ギャラクシー』とは、はるか未来の宇宙で冒険するテーブルトークRPGというジャンルのゲームです。
RPGをご存じない方のために捕捉いたしますと、皆でわいわいやりながら「お話を作る」遊びだと思っていただければよろしいでしょう。
RPGによって、得意とするお話のジャンルは異なります。ファンタジーあり、ホラーあり、伝奇アクションあり、です。
そして『エイジ・オブ・ギャラクシー』はスペースオペラのような宇宙SFの冒険を創作するのに向いたRPGなのです。
宇宙での冒険は、ワクワクするものですが、問題もあります。
そのひとつが身の回りの情景が見えにくいことです。
SFやスペースオペラ作品によく触れていればともかく、普段は宇宙らしいものというと、テレビの天気予報で気象衛星からの映像を見るくらい、という人にとっては、自分が宇宙にいて、冒険をしているという情景は、なかなかに思い浮かばぬものであろうと思います。
そこで、よく使いそうな場面をあげて情景描写してみました。
本エッセイが『エイジ・オブ・ギャラクシー』に限らず、宇宙で冒険するゲームを遊ぶ際に、皆さんのお話作りの一助になればと思います。
■ゲート通過
宇宙空間に浮かぶ巨大なリング。
これがゲートと呼ばれる物体だ。恒星間の何十光年という距離を超空間を通して結ぶ装置である。
ゲートの内側は鏡になっていて、星空を写している。
キミ(私)の宇宙船は、そのゲートの鏡面に向かって前進する。ゲートは鏡面のどちらから入っても機能は同じだが、事故を防ぐために片方側からだけ入る決まりだ。
宇宙船の先端が、鏡面に写る宇宙船と触れ合った次の瞬間、キミ(私)は星と星との間を一瞬で跳躍し、新たな星空の下にいた。宇宙船の後方に、くぐり抜けたばかりの、この星のゲートがある。
ここは[パイオニア・アルファ]星系。[植民が進む開拓宙域の拠点となる星]だ。
※[]内はシナリオに応じて変更。
■宇宙での遭遇
宇宙船のセンサーが、何かをキャッチしたという報告が来る。
キミ(私)が船室からブリッジに通信を繋げると、ドロイドが情報をスクリーンに映し出した。
どうやら[遭難船]だ。[救助]の必要があるかもしれない。
キミ(私)は船の反応炉の出力を上げるよう命じた。反物質燃料を消費して得た膨大なエネルギーが、エンジンに、そして武装に蓄えられる。
船がぐん、と猛烈な勢いで加速する――が、キミ(私)がそれで潰れるということはない。
加速による反動は、慣性制御装置に蓄えられる。唸りをあげて貪欲に慣性エネルギーを呑み込む慣性制御装置のリミッターが来るまでは、テーブルに置かれた[コップの紅茶]に細波ひとつ、立つことはない。
現場に到着するまで、まだ時間がある。キミ(私)はその前に[シャワーを浴びて着替える]ことにした。
※[]内はシナリオやPCの役に応じて変更。
■宇宙ステーション1(ドッキングまで)
宇宙ステーション[赤の女王]が近づいてきた。
開拓惑星[パイオニア4]の衛星軌道に浮かぶこの宇宙ステーションは、元は巨大な植民船だった。
人々をこの開拓惑星まで運んだ後、宇宙ステーションに改造されたのである。
周囲に浮かぶ太陽光電池パネルの間を縫うようにして、キミ(私)は宇宙ステーションに近づく。
接近しながら宇宙船を減速させ、宇宙ステーションと速度を同期させる。惑星の衛星軌道の軌道速度は秒速で数キロメートル。ものすごい速度に思えるが、同期させてしまえば互いに止まっているも同然だ。
※[]内はシナリオやPCの役に応じて変更。
■宇宙ステーション2A(ドッキング後&艤装化せず)
キミ(私)は宇宙ステーションの管制に連絡してドッキングの許可を得ると、宇宙ステーションの埠頭にある指定された番号のドッキングアームに船を横付けさせた。
アームががっちりとキミの宇宙船を掴み、固定する。
宇宙港のエンジニアが、宇宙服を着てドッキングアームから出てきた。その後を、わらわらと作業用ドロイドたちが追いかけてくる。エンジニアの命令に従い、ドロイドたちはキミ(私)の宇宙船に取り付いて整備と補給を始めた。
※ゲーム的には、整備と補給はセッション開始前のプリプレイで完了しており、メインプレイの間に整備や補給は行う必要はなく、また行ったとしても財産点や弾数などが回復したりはしません。あくまでロールプレイの補助と考えてください。
■宇宙ステーション2B(ドッキング後&艤装化)
キミ(私)は宇宙ステーションの管制に連絡して艤装化の許可を得ると、宇宙ステーションの埠頭にある指定された番号のドッキングアームに船を近づけた。
「[艤装転身]」
キミ(私)が自分で定めたキーワードを唱えると、宇宙船の表面が亜空間フィールドに包まれて輝き、続いてその輝きの中で宇宙船の輪郭が消える。
輝きが消えた後、キミ(私)は[普段着のまま]宇宙空間に浮かんでいた。
真空でも息が苦しくなることはなく、強烈な太陽光の放射を浴びても肌は日焼けすらしない。無重力でも、まるで床があるかのように歩くことができる。
艤装状態になったキミは、いわば見えない、触われない宇宙船の中にいるようなものだ。
キミ(私)を包む亜空間フィールドは、砲撃すら遮るし、キミ(私)が目をこらして遠くを見たいと思えば、宇宙船のセンサーがコンピュータで解析した情報を脳に直接届けてくれる。
キミ(私)はドッキングアームのエアロックを開けて中に入った。
※[]内はシナリオやPCの役に応じて変更。
■惑星着陸(呼吸可能な大気あり)
キミ(私)は衛星軌道で減速を開始した。
宇宙船の軌道速度が落ちると、惑星の重力とのバランスが崩れる。
軌道速度というのは「永遠に落下を続けられる」速度だ。下向きに落ちても落ちても、横向きの軌道速度があるから惑星の丸みに従って、惑星に近づかない。
軌道速度が落ちると、このバランスが崩れて、惑星が近づいてくる。
惑星が近づくと、そこには薄い大気がある。薄いが、何しろこちらは秒速数キロメートルだからぶつかれば、その場所を中心にぎゅっと圧縮される。圧縮された大気が高温になり、それが宇宙船を赤く光らせる。
この大気をブレーキに、さらに軌道速度が減速する。がくがくと船体に衝撃が走る。
高度が下がるにつれ、びょうびょうと船体か風を切る音が聞こえてくるようになる。
キミ(私)は宇宙船に命じて目的地へ進路を向けた。
※ここが開拓惑星であれば、この後は飛行場のように滑走路を持つ宇宙港に着陸します。無人の惑星であれば、そのようなものはありませんので、目的地に近づいたところで艤装化して地面に降ります。
■宇宙船戦闘1(砲戦距離)
[宇宙海賊]が、惑星[パイオニア4]の影から出現した。
惑星の向こう側にいる敵までの距離は、およそ[2万キロメートル]。キミ(私)の[大型プラズマカノン]にとっては十分に射程圏内だ。
キミ(私)は五感を宇宙船に接続し、相手との間合いをはかる。
目をこらす。敵のエンジンが放つ赤外線が、センサーを通してキミの目に映る。ドップラー反応は[青]。敵はこちらに[近づいてきて]いる。
鼻をひくつかせる。星間ガスに混じる敵の推進ガスの成分が、スペクトル分析を通して匂いとなってキミに感じられる。[小型船用の推進剤の刺激臭が混じっている]のが感じられる。宇宙魚雷などの近接戦が得意な敵が混ざっている[可能性が高い]。
敵に向かって想像上の腕を伸ばす。太陽風のプラズマや宇宙を漂う塵が肌にぶつかってチリチリする。この濃度ならば[砲戦に影響はない]。
耳をすます。恒星の重力場の中を公転する[惑星パイオニア4]の質量が生み出す重力の偏差が、回転する磁場が、風の音となって聞こえてくる。惑星の近くでの砲戦は、常に重力や磁力の影響を意識して行う。[2万キロメートル]向こうの目標を狙い撃つには、わずかな誤差すら許されないからだ。
センサーで得たこれらの情報を元に、宇宙船はキミ(私)の意図を汲み取って幾つかの戦闘プランを組み立てる。それをキミ(私)が承認すれば、いよいよ戦闘開始だ。
※[]内はシナリオや宇宙船の搭載武装に応じて変更。
※なお、これらはあくまでフレーバーであり、どのような演出をしたとしてもシナリオとGMの指定以外、プラスにせよマイナスにせよ戦闘に修正は入りません。
■宇宙船戦闘2(至近距離)
相対速度[秒速10キロメートル]の交差軌道。
すれ違いざまに、敵に[対艦斬艦刀]をたたき込む。
手応えが浅い。すぐさま追い撃ちで[パルスレーザー機銃]を放つが、敵は強引に進路を曲げてこれを避けた。
キミ(私)の背中に、ぞわっとした感触が走る。
何が起きているか分からないまま、直感に従って宇宙船を減速させる。推進剤の噴射による減速では間に合わない。慣性制御装置に、持っている運動量を吸収させて無理矢理に静止状態へと移行する。
軌道速度を失ったキミ(私)の宇宙船が惑星の重力に引っ張られて、すっ、と下に落ちる。[高度500キロメートル]の衛星軌道は、実は無重力ではない。軌道速度を持つから地上に落下しないだけで、ここで静止すれば[地表の8割くらいの]重力があるのだ。
そして、この惑星の重力加速度がキミ(私)の命を救った。
宇宙船の頭上すれすれを、敵が放った[空間浸食魚雷]が通り過ぎる。
どこから?
一瞬だけ疑問がよぎるが、すぐに答えは出た。
敵は、自分の船体を盾にして放った[空間浸食魚雷]を隠し、キミの迎撃から守ったのだ。
肉を斬らせて骨を断つ。敵ながらあっぱれな敢闘精神だ。
最初のラウンドは五分と五分。敵にわずかに手傷を負わせたが、こちらも慣性制御装置に運動エネルギーを食わせすぎたせいで、動きに制約が出ている。
次のラウンドで、この戦いに決着をつける。
キミ(私)はそう考えて、[対艦斬艦刀]をかまえ直した。
※[]内はシナリオや宇宙船の搭載武装に応じて変更。
※ここでは慣性制御装置に運動エネルギーを吸収して減速していますが、馴れてきたら重力アンカーを打ち込んだとか、船体のエーテル帆を広げて進路を変えたとか、船体を二つに分割して攻撃を避けたとか、自分の宇宙船に応じた演出を試みてください。
※なお、これらはあくまでフレーバーであり、どのような演出をしたとしてもシナリオとGMの指定以外、プラスにせよマイナスにせよ戦闘に修正は入りません。
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追記:
本エッセイは、あくまで非公式のサンプルとなります。
「これが正しい!」「これしが許さぬ!」みたいな強制力のあるものではなく、イメージの補助であります。難しいとか物足りぬという場合には、各自で端折ったり、追加したりしてください。
また、「こういう場面が欲しい」という希望がありましたら、コメントで受け付けます。書けるかどうかは別として、皆さんが何に興味を持っているかの参考とさせていただきます。なお、公式のサポートではないのでルール面の質問や指摘についてはFEARにメールやハガキなどでお願いいたします。