蒼い炎の反乱
少し時間が空きすぎたので、俺不思より先に投稿させてもらいました。
どぞ(/・▽・)/
あれから美依に勝てず、全てを話すことになった。
ただ、それでもやっぱりあの謎の名簿に関しては聞かなかった。
そして次の日、美依に黙って、勝手に部屋に入り、再び名簿を見た。
理由は、一つ気になったことがあったからだ。
そして再びその気になったページを見て知った。
幻獣使い―――沙雪彰人―――任務中疾走及び死亡確認。
死亡原因―――使用幻獣の暴走による事故死。
幻獣の行方は今だ不明。
俺はその記事を見て、美依が幻獣使いになった本当の理由がわかった気がした―――。
「さあ、起きてちょうだい」
謎の名簿を見てから、三日後の真夜中だった。
熟睡している中、美依が俺の部屋に入ってきて、俺を起こした。
「んだよ夜中に~」
「寝ぼけてないで、本部から不可視の火災の発生よ」
「っ・・・人工幻獣か?」
それを聞いて、俺はすぐに人工幻獣だとわかった。
幻獣は普通の人には見えない、適正があるか、軍隊の持つ特殊なレンズの付いた道具のみだ。
それだけに、幻獣という言葉は聞いたことがあるが、見たことがない人がほとんどだ。
ただ例外があり、災害の時は、その姿を見れたと、最近の歴史の本かれていた。
「それじゃあ。準備はいいわね?」
「あぁ。問題ない」
今回も演唱すると、すんなりとデュランは出てきてくれた。
リンも既に幻武になっている。
場所は使われなくなった古い廃工場。
ところどころ蒼い炎が立ち上っている。
「いい?しっかりと狙って・・・」
「あー!わかってるから、いくぞ!」
俺はまた説明に入ろうとする美依の言葉を遮り、先に工場の敷地に入って走って行った。
後ろからは、美依がすぐに走り、追いついてきている。
しばらく走っていると、より一層激しく燃えている場所にたどり着いた。
「キャァッ!」
「ん?人?」
少し奥の方から、人の声が聞こえた。
声を聞く限り、女性の声だ。
「お願い!・・・止まって!」
「おい!そこにいるの誰だ!」
暗い工場の倉庫の中、髪の長い人影が見えた。
「まって春・・・」
美依が駆け寄ろうとした俺を、肩を持ち止めた。
「・・・シュン?!」
その人影は、俺の名前を驚いたように、また同時に、嬉しそうに言った。
「その声、魔衣!」
「シュン!」
俺が彼女の名を叫ぶと、奥から魔衣が駆け寄り、俺に抱きついた。
俺に抱きついた魔衣の体は震えていた、きっと怖かったんだろう。
「どうしてここに?それに火が見えるのか?」
俺は、俺の腕の中で震える魔衣に問いかけた。
しかし、魔衣の回答よりも先に、美依が話した。
「春から離れてちょうだい」
そう言って魔衣の頭に、リンの銃口を向ける。
その人差し指は、トリガーをかけられていて、妙なことをすれば、容赦なく撃つといった感じだ。
「落ち着けよ美依!魔衣は大丈夫だ、もしかした適正があるのかもしれないだろ?」
俺がそう言ってんも、美依は魔衣から銃口をそらさない。
「・・・いいえ、彼女は適正者よ。人工幻獣の刻印・・・・・・」
そう言い、美依はいつになく魔衣の右側の二の腕を、冷い目で見ている。
その目は復讐心で燃えている。
「よくも私の彼氏を弄んでくれたわね?人工幻獣使いさん?・・・この事は高くつくわよ?」
「私は、別にそんな・・・」
「・・・黙って」
人工幻獣を使う魔衣を、美依は許せないんだろう。
だからこうして銃口を銃口を向けている。
「やめろって!・・・なぁ魔衣、幻獣戻せない?」
美依の銃口を手で下げて逸らし、魔衣に問いかける。
「・・・ダメ、言うこときかない、完全に暴走してる・・・・・・」
奥にいる蒼い炎は、次第に、あの不死鳥の形を型どり、鳥としてその場に具現化する。
そして一鳴きする。
「春、撃つわよ!アクアバレット!」
リンを構え、美依は牽制射撃を開始する。
「いくぞデュラン!アクアバレット!」
俺はあらかじめ受け取っておいたリンのアクアバレットを装填し、一緒に牽制する。
「幻獣の暴走は、幻獣を殺すか、使用者が死ぬか、弱ったところを強制的に封印するかよ」
「わかった!魔衣はやらせない!」
俺たちは部の悪い室内から、広い外へとでて、不死鳥を待ち構える。
すると不死鳥は、狭い鳥かごから解放された鳥のように、自由に頭上を旋回している。
そして、同じ音程の鳴き声を、何度か繰り返しながら、地上に降り立った。。
「・・・・・・呼んでる」
すると、魔衣が不死鳥に反応するように、ゆっくりと、不死鳥の方に向かっていく。
「・・・魔衣!!」
牽制していた俺は、魔衣の後ろから手を伸ばし、止めようとするが、彼女と俺を、蒼い火が遮り、近寄れなくなる。
「くっ・・・・・魔衣っ!!」
俺は再度叫ぶが、魔衣は一度も振り返らず、不死鳥の真下まで行ってしまった。
「・・・人によって作られた不死鳥―――生誕せよ、蒼き火の聖剣―――」
魔衣は俺たちのように、幻武にするときの演唱をして、不死鳥に向かって手をかざす。
しかし、演唱の最後に幻獣の名前が入るのだが、魔衣はまだ名前をつけてないようだ。
そして不死鳥は呼ばれると、体を蒼い炎にしその炎は魔衣の手を包み、まるで刃についた血を払うかように腕を振るうと、魔衣の右手には背丈ほどの大きな大剣のような幻武が握られている。
その大剣は銀と青が基本で、常に蒼い炎を纏っている。
「・・・あ。魔衣!!」
呆気にとられていたが、すぐに我に返り、魔衣に呼びかけるが、返事は当然帰ってこない。
彼女の瞳は、虚ろで、正気じゃない、そんなきがした。。
「無理よ、完全にあの人工幻獣に乗っ取られてるわ・・・」
「それって・・・」
「残念だけど、使用幻獣の方を殺せないなら・・・使い者の方を殺すしかないわ」
そういって美依は銃口を再び魔衣に向けて構えた。
そして美依から自分に向けられる殺意に、魔衣は反応し、大剣を肩に乗せて地を蹴って駆け出した。
「・・・っ春、右から左方向に抜けるなぎ払いが来るわ、後方に下がるわよ!」
美依は攻撃パターンがわかっているように、俺に助言し、先に数歩後方にさがり、つづいて俺も後方に飛び退いた。
俺たちが後方に飛んですぐ、さっきまでいた場所には風を斬る音を鳴らしながら、重い一撃が通った。
「次、その逆!」
「お、おうっ!」
美依に言われるがまま、次から次へと繰り出される攻撃を避けていく。
さっきから一度も攻撃がやんでいない。
魔衣の華奢な体では、あんな大きな剣、振ることもできないし、振れたとしても必ず隙ができるはずだ。
そしてそうこうしているうちに、魔衣の攻撃がやんだ。
「今。撃って!」
美依は振り戻しの時にできた隙を狙い、俺に撃つように告げる。
いつの間にか、美依と俺は二手にわかれていてた。
そして魔衣は、俺に向かい剣を振り下ろそうと走り出す。
「っ・・・魔衣!」
俺が躊躇している隙に、魔衣は間を詰、俺に向かって剣を降ろそうと、構えている
「何やってるのよ!!」
「・・・キャッ!」
魔衣の小さな悲鳴とともに、魔衣の腕から血が溢れる。
横を見ると、美依が魔衣を撃っていた。
そして魔衣は大剣を大きな音とともに地面に落とし、撃たれた腕を抑えながら、呻いている。
「美依、何で撃ったんだよ!!」
「バカじゃないの!?私が撃たなかったら死んでたわよ!」
美依は俺の腕を掴んで、魔衣から離れて言う。
美依は、人を撃った割には、とても落ち着いていた。
俺のイメージ的には、初めて人を撃ったら、アニメや漫画のワンシーンのように、同様する事を考えていたが、現実はそうではないのだろうか・・・。
「なんでそんな簡単に人を撃てるんだよ!」
「人だからって関係ないわ、相手は幻獣に侵された人間よ?」
「だとしてもっ・・・!」
「じゃあ春は、自分は彼女に殺されても良かったってこと?・・・違うでしょ?」
美依は、人を撃つことに、何一つ抵抗が無い様子だ。
幻獣使いって、そんなもんなのか?
「この先、場合によっては人型の幻獣とも戦うかもしれないのに、こんなところで躓いてたら生き残れないわよ」
「・・・・・・俺は、彼女を助ける・・・・・・魔衣、大丈夫か?」
俺は美依の言葉を無視し、魔衣に近寄り、触れようとする。
「・・・来るなぁ!」
その言葉は、普段の魔衣からは絶対に発せられない言葉だった。
そして魔衣は、触れようとした俺の手を叩き、立ち上がると、俺に攻撃を仕掛けようと予備動作に入った。
「・・・っんぁぁぁ!!」
しかし、魔衣は攻撃を行う手前で、残る片手と、両足に、銃弾を浴びた。
そのまま力なく地面に倒れ、何度か体を起こそうと試みるが、痛みで麻痺し、思うように動かない様子だった。
「さぁ春、決めてちょうだい。あなたが本当に今後も幻獣使いとして、私の隣で私を守りたいなら・・・彼女をその銃で撃って」
美依はそう言って俺の手にあるデュランを指さした。
「・・・・・・俺は・・・」
「無理なら私が撃つわ・・・」
「っ!俺が撃つから!!」
俺はその勢いで彼女にデュランを向ける。
「そんなに揺れてたらしっかり撃てないわ。腕の力抜いて・・・・・・簡単よ、トリガーを引くだけ」
尚も、美依は冷静で俺に指示を出す。
俺に銃口を向けられ、魔衣は呻きながらも、逃げようと体に力を入れているが、やはり動けない様子だ。
その表情は、とてもつらそうだ。
「・・・魔衣・・・」
脳裏には、短い間だったが、彼女との記憶がフラッシュバックする。
昨日まで笑顔で笑っていた魔衣を、今まさに、自分がその命を刈り取ろうとしているのだ。
「―――ごめん・・・・・・」
デュランが自ら安全装置を解除し、俺はそれに合わせ、彼女に向かってトリガーを引いた。
それは、火が上がり、木が燃えはじける音が鳴るなか、静夜に響いた、その日最後の銃声だった。
「・・・随分時間がかかったわね」
魔衣に抱きつき泣く俺に、美依が冷めた様に言葉を放った。
魔衣の大剣は今まさに、光となり消えようとしている。
「・・・魔衣、俺は・・・」
もしかしたら、他に助ける術があったのかもしれない、自分がもっと強かったら、守れたかもしれない。
いや、元はといえば、元々合宿先でしっかりと討伐していれば、こんなことにはならなかった。
(―――彼女はまだ生きています―――)
悲しみに暮れる俺の耳に、女性の声が響く。
「・・・え?」
美依を見るが、相変わらず変わらない表情で俺を見ている。
次にあたりを見回すが、誰もいない。
(―――彼女の刻印と彼女に、契約を交わしのです―――)
女性の声は、よりはっきりと聞こた。
(―――彼女は人類最強にして最高の人型人工幻獣です。決して失ってはなりません―――)
「誰だよ、お前・・・」
俺は小さな声で答える。
(―――私は幻獣の祖ナル者、汝達の中にいるもの―――)
言ってる意味はさっぱりだ。
第一、祖なる者って事は、生みの親なのか?
「言うとおりにすれば、魔衣は助かるんだな?」
俺はその祖なる者に、大事なことを聞いた。
(―――当然です、彼女は決して失ってはいけない最後の切り札―――)
・・・切り札?
何のことをいっているか分からないが、彼女の言葉を信じることにした。
(―――さぁ、私の後につづいて唱えて下さい―――)
俺は女性の言う通りに、自分の魔衣の顔に近づけ、唱えた。
「我 種の創世を助けし 生の契約を結ぶ 汝を我が下僕とし この世に留ませる」
俺は唱え終わると、魔衣の唇に、キスをする。
「・・・春!?」
美依が驚きの声を上げるのが聞こえたが、今は無視だ。
俺がキスをすると、魔衣の体は光、次第に暖かい光に包まれ、消えた。
「・・・魔衣!?」
(―――彼女は汝の親愛なる獣とともにいます。今は休息を必要としていますが、明日には召喚できるでしょう―――)
謎の声は、そのあとはなにも聞こえなくなった。
「う・・・目眩が・・・して・・・・・・」
そのまま俺は、意識を手放した。
最後に聞こえたのは、美依が俺に声をかけながら駆けてくる音だった。
それでは次回の投稿でお会いしましょう。