覚醒への一歩
久しぶりの投稿になりました。
今年中に一つを完結させ、そのあとはこちらをメインにしていく予定なので、末永く、よろしくお願いします!!
では、どぞ(/・▽・)/
人工幻獣を連れた人物を取り逃がしてから、早数週間が立った。
あれからの目撃情報といえば、野生の幻獣が姿を現すと、決まって蒼色の炎が討伐幻獣を焼いていた。
そんな内容の目撃例ばかりだ。
――まるでその幻獣を食らう様に・・・。
「今月で怪我人は十二人目ね・・・まあ、全員軽い火傷ですんでるからいいけど・・・」
「でもいいのか?このまま野放しにしても」
これまで被害にあった幻獣使いの名簿を見て、個人的にまとめていた美依。
「にしてもさ、何で自分で聞きに行ったりしないんだ?その方が早いだろ」
美依は怪我人の確認や容体を、全部俺に行かせた。
わざわざ俺を、隣街の小規模本部にまで行かせて・・・。
「それに通路で妙なこと言われたんだ・・・あまりあの女に関わるなって、どういうことだ?」
「気にしなくていいわ・・・」
明らかに雰囲気が違うことが見てわかる。
それに美依は、嘘をつくと左手を右ひじに当てる癖がある。
「嘘・・・なんだろ?言えよ、・・・何のことなだよ!」
「・・・・・・はあ、別にいっか・・・あのね、私は他の人、幻獣使いよりも戦闘能力が上なの。だから本来新人は養成所に行かないといけないんだけど、私みたいな特殊な人間や、あなたみたいな人間は、特別に免除なの、だから周りからはあまり好かれてなの」
「・・・そうか、そんなことだったのか」
口ではそういったが、少し引っかかる。
でもまあ、本人がそういってるし、いいか。
「それよりも、デュランとの方はどうなの?」
「相変わらず、進展なしだよ」
俺の答えを聞いて、少し納得いかない様子で美依が考えている。
「どうかしたのか?」
「ん、ちょっとね。普通どんなにかみ合わないパートナー同士でも、二、三週間も経てばお互いに認め合って、しっかりとしたパートナーになれるはずなんだけど・・・・・」
言葉のあとに「おかしいわね」と付け足して、考え込んでいる。
「あ、ごめん、予定入ってて、もういいか?」
「あ、うん、今日はもういいわ」
俺は一言言って美依の部屋を後にした。
その後すぐに部屋に戻り出かける準備をし、家を出た。
一昨日、前に連絡先を交換した魔衣から連絡が着て、今日の昼に会う約束をした。
俺はいいと断ったんだが、どうやら前のアクセサリーのお礼をしたいと言われた。
場所は前回に別れたアーケードで待ち合わせしている。
「ごめん、遅れた」
俺が着くと、もうアーケードのベンチに真依は座っていた。
「いいえ、そんなに待ってないわ、私もさっき着いたばかりだから」
「そうか・・・ん、その手、どうした?」
彼女の上着で隠しているが、左手には、包帯が巻かれていた。
「・・・これ?ちょっと火傷しただけ。・・・料理失敗しちゃっただけよ」
「そうか、後とか残るのか?」
「大丈夫、そんなに酷くないみたいだから」
料理で失敗とは、真依は意外にもドジなのかもしれない。
「じゃあ、行きましょう」
「ああ、そうだな」
俺は彼女に連れられしばらくアーケードの中を見て回った。
魔衣はずっと楽しそうに笑っていた。
そして今は、歩き疲れて休息をとっているところだ。
「ここのカフェのココア美味しいのよ」
「そうなのか?今度頼んでみるかな」
「・・・じゃあ、飲んでみる?」
そういって持っていたカップを俺の方に差し出してきた。
これはつまり・・・。
「い、いいのか?」
「・・・あ、でもシュンには恋人がいたんだったわね」
「いや、せっかくだし、貰おうかな」
俺は引っ込みかけたカップを手に取り、口をつけた。
そんな俺の光景を、なぜか魔衣は少し不思議そうにみている。
「どお、おいしい?」
「ああ、甘くて美味しいな、少しコーヒー豆入ってる?」
香りには、ココアの甘さに、コーヒーのような香りも混ざっている。
「そうよ、入っているわ・・・・・・ところで、シュンは誰にでもそうするの?」
「ブッ、す、するわけないだろ!」
危うく飲んでいたココアを吹き出しそうになった。
「・・・そう」
「魔衣はどこに住んでるんだ?」
「・・・内緒よ」
そういっていたずらっ子のような笑顔を見せた。
「ねえシュン、私のこと、人として好き?」
「好きだよ、大人しくて、控えめなとこがね」
「それって褒めてるの?」
俺の正直な返事が裏目に出てしまった。
俺は良い意味で言ったつもりだったが、彼女にはあまりいい聞こえはしなかったみたいだ。
「でもふどうしてそんなこと急に?」
「特に深い意味はないわ、私はあなたからどう見えているのか、気になっただけ」
魔衣は、本当に特に深い意味はない様子で、俺からココアを受け取再び美味しそうに飲んでいる。
俺達がゆったりとカフェの雰囲気を堪能していると、いきなり少し大きめの揺れが起こる。
「・・・なんだ?」
俺は外に出ると、辺りを見回す。
ここ最近大きな地震が起こる原因といえば一つ。
幻獣しかない。
案の定、近くの建物にから建物に、蜘蛛型の幻獣が跳んで移動していた。
「うっわ、美依が見た発狂するな、あれ・・・」
美依は大の虫嫌いで、G(黒くて素早いアレ)が出たときは、悲鳴を上げながら俺の部屋に助けを求めに来た。
今思うと、その時の美依は、最近の美依からは想像もつかないほど女性らしさがあった。
最近は生きに急いでいる一兵士のような感じだ。
「どうしたの?」
外に出た俺が、建物を見ているのを見て、魔衣も建物の上を不思議そうに見ている。
当然、幻獣のことをニュースなどで知っていても、幻獣使いでない魔衣には幻獣自体は見えない。
「ああ、なんでもないよ、さあ、避難しよう、もしかしたら大きな地震が来るかもしれないし」
「え、ええ、わかったわ」
魔衣の背中を押し、広報のお知らせで緊急幻獣災害避難シェルターへ向かわせた。
「ごめん魔衣!俺やることあるから、あとでまた会おえっと・・・ここで!」
俺の言葉に、人混みに押し流されながらもコクリを深く頷いて応答した魔衣だった。
魔衣が行ったのを確認して、俺は辺りを見回すと、跳んだ時に反動で崩れたがれきなどがかな落下していたが、巻き込まれた人はいないようだ。
「さってと、デュラン!」
辺りに人がいないことを確認し、俺は左手を前に出す。
今ならいける気がする。
俺は意識を左手に集中し、目を閉じ、頭の中に無意識に浮かんでくる単語を口ずさむ。
それはきっと初めて美依の戦闘を見たときに聞いた美依のモノと似ている。
なぜかわからないが、心の中でデュランが何かに反応して俺に力を貸そうとしている。
「汝 白き鋼の 小銃扱い 聖なる獣に選ばれし 使い者。性はデュラン 元名は狼神 契約の下左手に武として参れ!」
ポウっと左の人差し指から発せられた、柔らかい光が俺の手を包み、手から鉄のような冷たく硬い感触が伝わってくる。
これは人口幻獣の幻武ではない、重みが違う。
「荒現せよ、デュラン!!」
軽く掴んでいた幻武を、ガシッと掴むと、光は収まり、俺の左手には、白銀の小銃、ハンドガンが握られていた。
「・・・・・・できた!」
でも喜んでる場合じゃない。
デュランを幻武にできても、幻獣を倒さないと意味がない。
「行くぞデュラン!!」
俺は左手の小銃に宿るデュランに合図を送り、地を蹴るように走り出した。
幸い蜘蛛型の幻獣は足は遅く、走って追いつく程度だ。
「ここを・・・こうかっ!」
俺は走りながら両手で構え、しっかりとターゲットを捉えて放った。
「なっ・・・弾かれた?!」
しかし撃った弾は甲羅のような見た目の鋼鉄のように硬い背中に弾かれ、掠り傷一つつかない。
その後も続けて何発も打つが、すべて弾かれ、こっちの装填していた弾が切れた。
「くそ!・・・ってお、おいまてまてっ!!」
いい加減うざくなったのか、まるで顔の周りを飛んでいるハエでも振り払うような感じで反転してこちらを向いた。
その八つの赤い目は、すべて俺を見ているように見える。
「デュ、デュラン!弾出してくれ!おい!!」
もう装填している弾は底を尽きたはずなのに、デュランが腰のマガジンホルダーに予備マガジンを召喚してくれない。
まるでこれ以上の使用を拒むような、そんな感じだ。
そして俺は、訓練での美依の言葉を思い出した、「その使い方、デュランが見たらなんて思うでしょうね?」「いい?この子達も生きてるの、そんな適当に使ってると、いつまでたってもデュランも言うことを聞いてくれないわよ?」そんな言葉を思い出し、今の自分の使い方は、訓練の時と全く同じだったことに気づいた。
しかし、今気づいたところで、デュランがマガジンを召喚してくれるわけじゃない。
さらに、俺が動こうとしたときに、蜘蛛が糸を吐き、俺の足はその糸につかまり、地面に接着された。
「っ・・・くそ、取れねえ!」
外そうと、必死に足を振り動かすが、糸の粘着力が高く、まったく離れない。
そして獲物を品定めするように、俺のほぼ上まで来る。
俺は死を覚悟した、でもその時だった、蜘蛛の顔の部分に、硬質な素材ではない部分があった。
それは恐らく蜘蛛の口。
さらに、それに気づくと、待っていたように、デュランが追加マガジンを召喚した。
「えっ・・・・・・よしっ!」
俺は素早く替えのマガジンを装填し、ゼロ距離で蜘蛛の口に数発、ぶち込んだ。
すると蜘蛛は奇声のような鳴き声を発しながら後方に呼んで距離を取った。
蜘蛛が距離を取った時だった。
横からあの蒼色の炎が蜘蛛を包み、喰らうように串済みにしていく。
俺はとっさに炎の放たれた方向を見る。
「黒・・・いや、紺色?」
すると、ビルの裏道の隙間に、長く、暗い色髪をもった人がたっていた。
そしてその手には、銀色刃に、微量の蒼い炎を放出している背丈ほどある剣を持っている。
「あれが、人工幻獣の幻武・・・」
人工幻獣に幻武としての威力は通常の幻武をはるかに上回ると聞いていたが、実際見ると、まだ間もない俺でもわかる。
あれはヤバい、何がとかは特にないが、とにかくマジでヤバい。
俺が見ていると、ふとその人と目が合った。
「赤い・・・目?」
暗いビルの裏通りの中で、少女は俺を見つめていた。
少しして少女は俺から目をそらし、幻武を隠して路地に消えて行った。
「ん?・・・少女?」
そういえば、なぜ俺は少女だと思ったのか。
理由は分からないが、きっと特徴的なものが女性と被るからだろう。
長い髪や、さっき暗がりで光って見えた少したれ気味の瞳。
「あ、そうだ幻獣!」
俺が思い出して焼かれていた蜘蛛の方を見ると、そこに蜘蛛の存在はなく、焦げた跡が残っていた。
シェルターにいた人たちも、出てきていて、ちょうど緊急車両も着ている。
俺は慌ててデュランに戻るように命じ、アクセサリーに封印すると、シェルターにいるはずの魔衣を探す。
「あれ・・・・・・いない、もう出たのか?」
しばらく探すが、全員出てきて、シェルターが閉じ、魔衣の姿はどこにもない。
さらにしばらくカフェの前で待っているが、くる気配はない。
すると端末に、魔衣から連絡が入った。
どうやら急な用事で先に帰ってしまったらしい。
となれば俺もここにいるようななくなった。
少し時間は余ったが、そろそろ家に帰ることにした。
「・・・ただいまー」
玄関には俺を引き取ってくれた義母が出迎えてくれた。
義母と言っても、別に仲が悪いわけじゃない、ごく普通の仲だ。
だから俺に「おかえり」と言ってくれる。
「そういえば春、美依に少し多く睡眠をとるように言っておいてもらえないかしら?あの子ったら私の言葉を聞いてないみたいだったのよ」
「そっか、また寝てないのか・・・わかった、俺から言ってくよ」
「助かるわ。私も幻獣について調べるときは、昔よく徹夜したわ、でもそのたんびに体調を崩いていたから、あまり戦闘にはでてないけど。ああみえて美依は私に似て身体弱いから、心配になっちゃってね」
どうせ美依のことだ、母さんに何か言われたとき、「自分の管理は自分でできるから大丈夫!」とか少し強くいったんだろう。
俺は階段を上って二階の美依の部屋にそのままいった。
そういえば、蜘蛛型の幻獣が出たのに、美依は通知一つよこさなった。
幻獣が出ると絶対に通知を送る美依が、珍しいこともあるもんだ。
「・・・美依、入るぞ・・・?」
ノックし一言言った後、一秒ほど待ち、美依の部屋に入った。
「なんだ、寝てたのか」
昨日も夜中まで何かしていたのか、机は散らかっていて、本人は気持ちよさそうに寝息を立てて熟睡している。
何かしても置きそうにはない。
かといって、特にすることもない。
俺は興味本位で、机の上の書類を手に取って見た。
「どれも、人工幻獣に関する報告書か・・・」
どれをみても、最近の報告書ばかりだった。
「これもか、よくこんなに報告書ばっか書いていられるな・・・・・・ん?ひとつだけ違うのがあるな・・・」
俺が手に持っていた報告書を机におこうとした時だった。
机の端の方に、すこし紙の色が青くなっていていて、違うこのがある。
「幻獣使い・・・」
報告書のようなものではないらしい。
中を見ると、紙いっぱいに数人の顔写真と、そのプロフィールが書かれていた。
その中に数人、写真に赤ペンでバツじるしが引かれていた。
「なんで美依がこんなものをもってんだ?」
美依の幻獣使いとしての地位はそれほど高いのかと思ったが、報告書をこんなに書く手前、あんまり上ではないと思える。
そして最後のページには、学校で教師などが持っている出生簿のように、この紙に書かれていた全員の名前が書かれていて、そこにもいくつか印がつけられていた。
「・・・・・・死亡?」
名簿にはそう書かれている。
その死亡の意味が、戦死なのか、病死、あるいは事故死、はたまた何者かに殺されたのかは、当然俺にはわからない。
「ぅ・・・んんっ・・・あれ、春?」
「わっ!っと、美依、起きたのか?」
後ろから伸びをする声をだし、暗い部屋にいる俺の存在に気づいた様子だった。
部屋の中は暗く、お互いの姿はほとんど見えない。
俺は慌てて持っていたものを机に戻した。
「何してたの?・・・なに?寝てる相手に夜這い?」
「んなわけないろ。・・・そんなことよりも、お前また寝てなかったんだろ?母さんに言われたぞ」
俺がそう言うと、美依はバツの悪そうな顔をして顔を背けた。
「べ、別にっ、すこし寝ない程度で、倒れるような私じゃないわ」
「どの口が言うんだか。中学の頃にそう言って倒れたろ」
「昔の話でしょ?!」
俺が昔の事を話すと、恐らく顔を赤くしているだろう美依は、少し声を裏返して言った。
本人にとっては恥ずかしいことなんだろう。
「それより、幻獣、倒しみたいね、連絡入ったわよ?」
「さすがに情報が早いな。あぁ、倒したよ。正確には、あの炎が喰らった、だけどな」
俺が正確な情報を渡すと、美依は立ち上がり、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「火傷とか、大丈夫だったの?」
「あ、ああ、大丈夫だ、大丈夫!それより顔近い!」
「何言ってるのよ、恋人同士なのに、あんまり交流少ない、なんて思ってたんでしょ?顔に出てたわ、寂しいって」
そのまま美依は、一度俺に抱きつきギュッとし、すぐ離れた。
「それで?部屋で何してたのかな?」
「・・・え?」
美依はニッコリと俺に笑顔を向けた。
「ただで私があんな事するわけないじゃない?ん?」
その時の美依は、どんな幻獣よりも悪魔に見えた・・・。
次回投稿はなるべく早くできるよう頑張ります!
俺と不思議少女の一年間!のほうもよろしくです!