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父の帰還

ドアをたたく音がする、誰か何か言っているがレインはその声を無視して眠りについている

音で一度は目を覚ましたが眠さからか二度寝を決め込んだ

その後、レインにとんでもない不幸が舞い降りる


「えい!」

レインはその掛け声とともに、何とも言えない苦痛に襲われていた

声が出ない、何か突然自分の上に重いものが降ってきた、いや乗られたと言ってもいいだろう


「レイン、レインってばー起きてよー」

レインはあまりの苦しさに目を覚ました

寝ぼけていたレインだったがさすがにミリアが自分の上に跨っているのを見て驚いた


「な!ミリア何してるんだ!」

「何ってレインが起きないから起こしに来たのよ?」

「だ...だからってこんな...」

「ん?いつもこうやって起こしてたじゃない」

レインは2年前まで、いつもミリアに起こされていたし、確かに起こされ方も変わらないが年頃のレインにとってはとても照れくさく、ましてやミリアは顔立ちもよくて可愛い、目を覚ましたらミリアが上に乗って顔が近ければ恥ずかしさのあまりに驚くのも無理はない


「た、確かにそうだけど、そ、その~........」

「なに?私じゃ不服?」

「い、いえ滅相もないです!」

「ならよし! 朝ごはん出来てるから早く着替えて降りて来て」

レインは頷き、ミリアがドアから出ていくと同時にため息をつきつつベッドから起き着替える準備をした

下に降りた時にはミリアも母も食事をテーブルに運んでいた

レインは朝の挨拶をかわしテーブルに着くといつもと違う朝ごはんに目移りしていた


「この朝ごはんは...」

「ミリアちゃんが作ったのよ、おかげでお母さんは楽させてもらったわ」

ミリアは照れながら残りの料理を出してきた


3人はテーブルに着き食事前のお祈りをすますと早速料理に手を付ける

母以外の料理を食べるのは初めてだったレインは恐る恐る口に運ぶ

それをじっと見つめるミルアがいたが、気にせず味を確かめるようにゆっくり噛む

レインは想像していたよりも美味しいと思った


「ミリアおいしいよ」

「よかった..」

ミリアはホッとしたような顔つきになり、ようやく朝ごはんに手を付けた

その時だった、突然ドアがノックされ一人の男が入ってきた

3人は驚き、突然空いたドアに注目する


「ロンさん!いったいこんなに早くどうしたの?」

ロンと呼ばれた男はレインもよく知っていた、父が宮廷にいるころの部下で、今は迷宮の入り口を見張る役目をしていた

普段は落ち着いていて滅多に慌てる事のないそのロンが血相を変えて飛び込んできたのだ


「リリスさん大変だ、隊長が....」

「!!」

母の顔色が一瞬で変わった、レインも父の事だとすぐに分かった

マッシュは宮廷では近衛兵の隊長として勤めていたが迷宮が現れてから、王の勅命で迷宮の探索を行っている


「マッシュがどうしたの!?」

「隊長がひどい傷を負って戻ってきた...」

母はその事を聞くと何の躊躇いもなく外に走り出し、レインも母の後を追い駆け出していた

ミリアは神官服を身にまといリリアとレインの後に遅れてドアを出る


迷宮前には人だかりが出来ていたのをレインは見つけ人をかき分けながら進みようやく父の姿を見つけた

そこにはマッシュが横たわりガイアスは呆然と立ち尽くしていた

傍ではフィーネが必死に回復呪文を唱えていたが傷がふさがらず泣きじゃくっていた

ミレーユも鎧の背中が裂けており酷い傷ではあったが意識があり命に別状はなく、近くにいた僧侶の手当てを受けていた

マリルもブラハムもミレーユのそばにいたが怪我は無い様だった


「お父さん!」

レインが駆け寄る、声をかけるがマッシュの反応はない

少し遅れてリリアも来て声をかける


「マッシュ...お願い目を開けて.....」

リリアは声を震わせてマッシュに話しかけ続ける


「リリアさん...ごめんなさい、私の回復魔法で傷がふさがらないの」

フィーネはそう言いながらも回復呪文の詠唱続けている

普通の傷であればフィーネの回復魔法で瞬時に治るはずだ、神官では無いが怪我などの回復に関しては僧侶も神官レベルの回復魔法は唱える事が出来る

神官と僧侶の違いは再生魔法や攻撃系の魔法が僧侶には使えない、再生魔法は例えば腕や足が切断されても再生魔法で元に戻せる高度な上級魔法だ

また、攻撃魔法では神聖魔法というのを使う、特にアンデットや魔族に有効な攻撃である


ただ、なぜマッシュの傷が塞がらないのか誰もが不思議に思っていて、フィーネ自身も戸惑っていた

マッシュの体からはおびただしい血が流れ、今傷が塞がったとしてもおそらく長くは持たないと感じていた

レインもリリアもその事は気づいていたのか必死に声をかけ続ける、少しでも意識が戻って声が聞きたかった

フィーネの魔力が尽きようとしていた、もう回復魔法を使う気力も体力もフィーネにはなかった


「ごめんなさい...」

謝る事しかできなかった

フィーネは流れる涙を止める事が出来ず、レインとリリアに謝り、そしてマッシュに顔を向けて申し訳ないという気持ちでいっぱいだった

レインもリリアもフィーネを責める事は出来ない、必死に治そうとしてくれたのだから、それに長年一緒に迷宮に挑んでくれた仲間だ


「その傷は普通の傷ではないわ」

ミリアがマッシュのそばに寄ると、なにやら一言二言いうとマッシュの体が光りだした

そして確信するかのようにレインとリリアに告げた


「この傷は、何か呪いのかかった武器で斬り付けられたものよ、その呪いのせいで傷が塞がらないの」

「ミリア呪いは解けないの?」

レインだった、その言葉を聞いて神官のミリアなら治せると思ったのだ


「レイン、ごめんなさい、この呪いは私にも治せない、その斬り付けた武器を壊すか斬り付けた本人を倒すしか呪いは解けないわ」

「そんな...」

それを聞いたレインはマッシュに近づき「お父さん、お父さん」と何度も言い続けた

レインにとっては父でもあり迷宮の最深部に行く英雄でもっとも尊敬する父と別れなければならない

リリアもただ涙を流している事しかできなかった


その翌日、マッシュは仲間とレイン、リリアに看取られながらこの世を去った

ミリアは神官らしくマッシュの体を清め、そしてこう言った

「英雄マッシュ、あなたの御霊と精神は清く美しい世界へと旅立ちました、どうかレインとリリアさんをお守りくださるよう見守りください」

(おじさま....きっと私とレインでおじさまに傷を負わせた相手を探します)


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