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吉嗣

異時代からの転生者。

その存在はどれだけ私の心を救ったか知れぬ。


まだ会うことが出来ないようだったので、おとなしく待つことにした。



そんな矢先、来客があった。

方がえだ。

貴族の坊っちゃんらしいのだが、天一神が存在しているため、一旦うちへ泊まって行くとのこと。

方がえなんて初めての経験だったので、ちょっとおっかなびっくりだった。

女官たちは忙しそうに料理の支度などを行っていた。


来客者は藤原吉嗣という貴族だった。

貴族様ともなると方がえやら何やらで忙しいらしい。

東の対に泊まることになっているらしい。


私も着替えをさせられた。いつ何時たるや、吉嗣様のお目にかかるやもしれないとのことで、萌黄色の重ねを着せられた。正直、緑色はあまり好きではないのだが、桃がどうしても、というのでしぶしぶ着替えた。


ほら、やっぱり似合わない……


桃は少し眺めると、紫の上着を持ってきて重ねた。桜萌黄という重ねらしい。



しばらく外を眺めていると、どうやら吉嗣様のお車が止まったらしく、さらに屋敷の中は騒然とした。

どうやら、こういうタイミングで男女の出会いがあったりするらしい。

私も年頃だし、ドキドキしてきた。

年頃と言っても、この時代からするとずいぶん年長者になるのだが、だからこそ余計に周りは私を気遣った。


しばらくすると、吉嗣様とおぼしき人物が庭へと出てきた。

私はそのとき、また桜を愛でようと御簾の近くをうろついていたので、ドキドキした。

桃から、あまり御簾の近くに寄ってはいけません、と叱られ、へいへいと部屋の中へ戻ってきた。


最近は五枚重ねにも慣れてきて、そう重さは感じなくなっていた。それでも肩は凝ったが……


相変わらずトイレのときはおおごとして、着替えたが、最近は慣れてきたのとあまりトイレに行きたくならないことでおおごとしなくて済むようになってきた。



基本的に特になにもせず、遊んでいるか勉強するかだったし、立ち上がることも少なかったから、便秘ぎみになっているのだと思う。



ところで、眉毛を剃られました。

吉嗣様が来るとのことで、身支度を整えるときにやられました……

今までなんとか眉毛は維持していたのだが、吉嗣様が来られるにあたって身支度をきちんとせねばということで、桃にやられました。はい。

化粧をして薄く眉を書いてもらったけど、違和感バリバリ。桃はさも満足そうに私を眺めていたけれど、今この顔で現代には戻れません……はい……



ときに、吉嗣様からお声がかかった。

「今回は突然の訪問、お詫び申し上げます。」

私は

「いえ、別に構いません。」

と言ったのに、桃が

「いいえ、その様なことはございません。吉嗣様がいらしてくださり、綾は誠に幸せでございます。」

なんて言ったものだから、吉嗣が調子に乗って、

「綾姫様もこちらにいらして桜をご覧になったらいかがでしょうか?東の対から見る桜もまた一興かと。」

なんて失礼なことを言い出した。

私がいつお前の恋人になったんだよ!!

とりあえずそこはお茶を濁しておいた。


四時になり、夕食の時間が来た。吉嗣が御簾越しに私と食べたいなんぞ言い出して、女官は大変そうだった。

桃のせいだよ!というと桃は少しだけしょげていたが、

「姫様には早く殿方のお手がついたほうがいいんです!」

と言って聞かなかった。


かくして私は吉嗣と夜桜見物といった食事をすることとなった。


そうそう、食事の件だが、普通は味噌(醤)、塩、酒など調味料と一緒に出されていたのだが、私が薄口が好みということになっていて、もったいないからつけていなかっただけだそうだ。


平安時代、侮れない。

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