子どもは何人?
「兼平、お前結婚するの?!」
「相手はどこの誰?」
「いつから付き合ってたのさ?」
俺の周りは一瞬にして盛り上がった。
上司の上司も、
「ま、それなら仕方ないでしょう」
と納得をしてくれた。
周りからはまだ質問攻めだ。
「だから言いたくなかったのにー!!」
「それで?相手はどこの誰?」
「藤原彰悟様のところの百合姫」
「いつから付き合ってたの?」
「半年前かな」
周りがおぉーとどよめく。
「百合姫といえば相当な美人だと聞くけど?」
「美人だな。いや、可愛い……かな?最初は美人だなとは思っていたけど」
「なんだよ、のろけかよー!!」
周りがわっと笑い出す。
「それにしても、百合姫って言ったら、お前より年上じゃね?」
「年上彼女かよ、羨ましいー!!」
「年齢なんて、関係ないよ!」
俺が言うと、また周りがどっと湧く。
しばらくはこの調子で、誰も仕事をしていなかった。
上司の上司もにやけながら話を聞いていた。
そこに上司が戻ってきた。
「お前ら、何をしている!!仕事をせんか!」
慌てて皆仕事に戻った。
俺は、ホッと息をついた。
◇
私はそんなこととはつゆしらず、綾と琴を合わせていた。
ときどきお腹へ話しかける綾を見ながら、なんだかいいな……と思っていた。
私も早く欲しいな、赤ちゃん……って、結婚の途中だというのに気が早いか!!
でも、いつかは私もこうなるんだよね……と考えていた。
今日の晩、兼平が来たら子どもは何人くらい欲しいか聞いてみよう。その望む通りになるかどうかはわからないけど、理想が合えばいいな……と思った。
夜になり、兼平がやって来た。
私はいつも通りに兼平を迎える。
兼平もおしゃれで、今日は萌黄色の重ねを着ていた。私と偶然お揃いだった。
そんな話をしながら床についた。
「ねぇ……兼平様。兼平様は子どもは何人くらい欲しいですか?」
と聞くと
「もう妻になるんだから、様、と敬語はいらないよ」
と、笑いながら言った。
「子ども……ねぇ。7、8人くらいかなぁ」
「そ、そんなに?!」
「そんなに……って、当然だろ?」
「年子だとしても一年に一人……二人……」
「あぁ、やっぱり厳しいか?2、3人は欲しいな」
「よかったぁ……七年も八年も妊婦続けられないもん!」
「ふふっ、そうだな」
ん……でも、うちのお母さんは8人兄弟の末っ子だったな……ってことは、7、8人もありってことかな……
「とにかく多いほうが嬉しいのね?」
「まぁ、俺も6人兄弟の末っ子だったからな。多い方が楽しいだろうな、とも思う」
「よーし!私、頑張っちゃう!!」
「まぁ、そう焦るなって。授かり物なんだし、少なくても俺は気にしないからさ」
兼平はそう言うと優しく笑った。
◇
牛車の音がまた聞こえた。
よかったね、百合……
私は感慨深い気持ちになって夜明けを迎えた。
お腹の子どもは昼夜問わず私のお腹を蹴って、そのたびにううん、っていう気分になった。
これだけ元気なんだもん。きっと男の子だよ。
跡継ぎだよ。
私はそう思ってお腹を擦った。
いや、男の子じゃなくて女の子でもいいな。私とお揃いの服を着せるの。まるでお人形みたいに可愛い子。
私はそこまで考えると、ふぅ、とため息をついた。
とっちにせよ、無事に生まれてくることだけが大事だ。そう思うと心が引き締まったような感じがした。
生まれてくるまで、お母さんしっかり頑張るからね。と、お腹の子どもに言い聞かせた。