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百鬼夜行

名前を名乗って使っていますが、本来平安時代では名を名乗る行為は命をとられたも同じなので、基本的に名前で呼ばれることはないです。

晴明は昼過ぎにふらりと現れた。

「結界の確認をね。」

と言うと、あちらこちらを確認して歩いた。


そのとき、私の飼っていた猫がすとん、と庭におり、晴明が確認していた糸にひっかかった。

慌てる晴明。しかし、その願いも虚しく猫は糸を絡め、いらいらしたようすで糸をちぎった。

「しまった!」

と晴明が言うのと同時に辺りは真っ暗になった。



道満はどこかに結界の(ほころび)がないか確認して歩いていた。

そこへ、突如結界が突然崩れた。

これはチャンスとばかりに、道満は式神を呼び寄せ、攻めにかかった。


「……これはこれは、安倍晴明殿ではありませんか。」

「芦屋道満……やはりお主か。」


辺りは真っ暗なのに、二人の周りにだけスポットライトが当たったように明るい。


私は息を飲んだ。


「お主の結界はなんと(もろ)いことよの!」

道満は叫びながら式神を放った。

式神は赤いエフェクトを(まと)って晴明目掛けて飛んでくる。

晴明はとっさに(ふところ)から竹の筒を取り出した。

「ふっ、管狐(くだぎつね)か。」

管狐は式神の喉を掻き切った。

晴明はなにかの呪文を詠唱し始めた。

晴明の周囲に魔方陣が浮かび上がる。

「討てっ!雷神っ!破っ!」

道満は落ち着いて呪文を詠唱する。

「吹けっ!風神!!」

雷神と風神の力が押し合う。

その間に晴明は私たちに結界を張った。

道満は思いの外潰れない雷神にしびれを切らしたらしく、式神を晴明に向かって放った。赤いエフェクトが走る。式神は晴明の喉を掻き切ろうと攻めてくる。

式神を管狐で制しながら、もう片方の手で人形(ひとがた)を放つと、それは式神となり、青いエフェクトを纏い道満に襲いかかる。

あと少しで道満の喉を掻き切るというところで道満は式神でそれを防ぐ。

そしてニヤリとする。

晴明はハッとする。


百鬼夜行だ。


鬼門の方向からやってくるそれに、晴明は呪文を詠唱する。

「綾姫様、何があってもその陣からでてはなりませぬ!何があってもお声を立てられますな!!」

「は、はいっ!」

晴明は自身にも魔方陣を張る。そうしなければ百鬼夜行に喰われてしまうからだ。


そしてすぐに違う呪文を詠唱する。

道満はそれを見て自分も呪文を始める。


晴明は地獄の門番を召喚した。

熱い熱い溶岩から生まれいでたような地獄の門番。


道満は美しく大きな氷の美女を召喚する。氷神だ。


門番は炎を吹き掛ける。

それすらを凍らせようとする氷神。


負けじと(ほのお)を吹き出す門番。


しかし、召喚した時点で勝負はついていた。

地獄の門番の熱さに、氷神が溶けていく。それは、ゆっくりと進んだ。


道満は、チッ、と舌打ちすると、

「この勝負はお前の勝ちだ、晴明!」

と言うと、どこかへ逃げ去ってしまった。


私がはたと気づくと、百鬼夜行は通りすぎており、いつもの風景が浮かんでいた。


晴明は怪我をしていた。

あれだけの闘いだ、怪我をしない方がおかしい。


私たちは魔方陣から出ると、晴明の介抱をした。幸い急所は外れており、晴明いわく、数週間で治るだろうとのことだった。


晴明は念のため、怪我をしている身で再び結界を張ってくれた。

「今度は姫様の猫ぎみに崩されない高さにしましたよ。」

最後にそう冗談を飛ばすと、晴明は明るく帰っていった。


私たちはやっとの思いで息をついた。百鬼夜行なんて見るものじゃない、今度からは方角その他も気にかけよう。そう、思ったのであった。

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