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高熱

晴明の祓いは確かだった。あんなに見た悪夢をパッタリ見なくなったのだ。

あのまま悪夢を見続けたらどうなるのか――

私は考えないことにした。

それにしても百合はどうしたというのだろう。そこまで私を憎いとは、前世ではそんなことはなかったのに。


前世で私は確かに嫌がらせを受けていた。それはホントに些細なことで、上履きに釘が入っていたり体操着が袋ごと捨てられたりといったことだったが、いつも百合は心配してくれた。

だけど、もしかしたら――嫌な考えが頭をよぎり、頭を強く横へ振った。そんなこと、あるはずない。

でも去年会ったときに、

「前から思ってたのよ、このうすのろ!」

と言っていた百合を思い出す。

もし、それが本当だとすると、私はずっと百合に嫌われていたことになる。そんなはずはない。だって私たちは親友なのだから。


私は百合に文を出すことにした。

手作りの州浜に文を結び、届けさせるようにと言いつけた。


ところが、百合は州浜をそのまま返してきた。

しかも

「あなたからの文は見たくありません。」

という唄と共に。


その文を見たときに私は確信した。



百合は、私を嫌っている。



それはこの世界に来てからじゃない、もっと昔からだ。あの「うすのろ」と言う表現は、まさに百合から私への気持ちだったんだと。

そして夢の中でのことを思い出した。



百合は、悟が好き……?



そう考えるとつじつまが合う。

いったいいつから?

確かに百合は悟がいるといつも機嫌がよかった。

悟がいると、いつもよりおしゃべりが多かった。主に悟に対して。


そう考え出すと、私は延々と負のループにはまりこんでいった。





綾から文が来た。

「私に悪いところがあるなら言ってほしい、親友だよね?」

きっとあの術者がしくじったのだ。でなければ今綾は床について起きれないはずだった。なのにぴんぴんした様子。許せない。

あの術者も適当なものだったのね、値段をふっかけてきといて、信じられない。もう何も信じられない。


そこへ芦屋道満が再びやって来た。

「そなたの術は失敗したようだな。あれだけの値段をふっかけてきて、呆れて涙も出ぬわ」

と言うと

「ふっふっふっ、これからが見せ場ですよ、姫ぎみ。奴等は安倍晴明を味方につけたらしい。」

「なんですって?!」

「ご安心なされよ。晴明とは兄弟弟子だったのですよ。故に技を見破れるのはこちらも同じ。」

「そうですの?」

「先手必勝となりましょう。そこで姫ぎみに確認したい。」

「何をじゃ?」

「綾姫を殺めてよいのかどうかです。」

「――っ。」

考えなかったことではない。綾がいなければ、と何度も思ったことだ。

だがしかし――

私にはそれができるのか?

ここでyesと言えば道満は簡単に綾を片付けるだろう。

しかし、私はyesといえないでいた――

それは最後の理性だったと思う。

私はこう言った。

「綾を苦しめて、悟がこちらを向きさえすれば、私は満足だ。」

「では、生かさず殺さず……をご希望ということでよろしいですな?」

「ええ。」

「御意。」

それだけ言うと道満は去っていった。





「綾姫、お気を確かに!!」

桃がなにかを言っている。

そうだ、私は急な高熱で倒れたんだった……

「早よう、湯を持て!」

桃が叫ぶのが聞こえる。

「今医師が参りますゆえ……」

桃が手を握る。ひんやり冷たくていい気持ちだ。

桃に手を擦られ、私はそれが気持ちよくて――意識を飛ばした。

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