表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/48

結界

悟の使いがやっと我が家に来た。

ここぞとばかりに私は暖房器具を頼む。それから炭も。

本当は直接悟にあいたいのだけれど、正月前の忙しい時期だからと少し遠慮をしてみせた。

憎き綾は今頃火鉢で暖まっているのだろう。口惜しい。


悟がこなくなって、もうやがて2ヶ月になる。私が何をしたというのだろう。悟はやって来なかった。代わりに使いのものが数回、御用聞きに訪れただけだった。

私は悟に文を書いた。ありったけの愛情を持って。

ところが肩透かしをくらったかのように事務的な返答しかこなかった。


これは綾の仕業だと私は決め込んだ。前世ならぬ現世までも邪魔をして来る。憎らしい。あぁ、口惜しい。


そう思っていると、ある男が訪ねてきた。

「呪い、引き受けますぞ。」

怪しい風貌、小汚ない格好に女房たちは悲鳴をあげた。

私はなんというタイミングで来てくれたのだろうと運命すら感じた。

彼の名前は芦屋道満という、陰陽師だった。

「呪い、引き受けますが、ちぃとお値段が張りますぞぇ。」

私は躊躇しなかった。





最近また夢見が悪くなってきた。

もうお正月がそこまで来ているというのに、ウキウキすらしなかった。


悪夢は前回と同じ、百合が出てくる夢ばかり。

でも、少しの間だからと思い、我慢していた。



――――「ねぇ、悟さん……」

妖艶に百合が悟に話しかける。私は金縛りにあったように、動けないし、声も出せなかった。

百合の姿がだんだん豹変していき、一匹の狐となる。邪悪な顔をした狐だ。悟は徐々に狐に取り込まれていく。

そこで目が覚めた。目覚めるとそこは見慣れない天井で、桃を探しに御簾からでた私はとんでもないものを見てしまった。


それは、悟と百合のエッチシーンだ。


気絶しそうなほどショックなのに、気を失うことができない。誰か、助け――――

そこで目が覚めた。今度は見慣れた天井だった。

私は桃を呼んだ。

「桃、桃?」

火鉢の番をしていた桃はすぐにやって来た。

そして全身汗ぐっしょりの私を見て、異常を感じたらしく、まず手拭いで身体をふくと、着替えをさせられた。

それから私は今見た夢について話始めた。

聞き終えた桃は、

「明日にでもすぐに陰陽師を呼びましょう。」

と言った。

私は大騒動したくないので、呼ばないで、といった。

桃は断固反対した。しかし、私も寒くて夢見が悪くなっているかもしれないし、と桃を制した。


しかし、その日から夢見はさらに悪くなっていった。

鬼やらいでなんとか邪気を祓えるかもしれないと期待した。

鬼やらいとは、12月30日に、鬼や邪気を祓うために宮中で行う行事の一つである。

だが、鬼やらいが終わっても更に夢見は悪くなっていた。

正月ではあるが、無理を言って、また陰陽師の派遣を依頼した。


またしてもやって来たのは晴明だった。

「姫ぎみは本当によい星の元にお生まれですな。」

と言いながら祓いの準備をした。

前回はそんなことはしなかったのに。

お祓いが始まると、なにやら小さい人のようなものが見え、それが床下に潜っていった。

しばらくして小さな人のようなものが、人形の紙を持って出てきた。

「ふむ……厄介な敵が現れましたな。」

「厄介な敵……?」

「あちらについている陰陽師は芦屋道満ですな。」

「その者は?」

「私の生涯をかけたライバルです。」

「そのように強い人物が……」

「先手を打って出たいところですが、姫ぎみ、いかがしましょう?」

「私は大事にはしたくないので……」

「ではとりあえず簡易ではありますが、結界を張っておきましょう。道満ならばこれは簡単に破ってしまうやもしれませぬが、念のため。」

そう言って晴明は結界を張ると陰陽寮へと帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ