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携帯

百合はことごとく俺に付きまとった。

綾がいないと見ると、すぐにベタベタと引っ付いてきた。

「ねぇ、悟さん……」

いつも甘えた口調で物事を頼んできた。

綾のいる前ではおとなしかったのだが、俺一人と見ると、すごい早さでやって来た。

そして

「ねぇ、悟さん……」

と始めるのだ。

最初は気のせいかと思っていたが、どうやら違う様子。さすがに俺でもわかる。


こいつ、俺のこと好きなのか?


そうとしか思えない態度。それしか思い付かない。

俺も自意識過剰かなって何度も思った。だが、百合はことごとく俺に付きまとった。それも、綾がいない留守を狙うかのように、だ。


俺は綾が好きだ。だから気持ちがぶれることはなかった。


それがまた彼女のかんにさわってしまったようで、彼女はいつしか綾に嫌がらせをするようになっていった。

当の綾はそんな素振りは一切見せず、むしろ前以上に百合に絡んでいた。まさか気づいていないとか?


そのまさか、だった。


「なぁ、お前、百合とさ……うまくいってんの?」

「うん!!今度もまた同じクラスになっちゃった!」

にしし、と笑う綾。

「でも、なんで?」

「何でって……別に。ただ、嫌なことがあったら必ず俺に相談するんだぞ。」

「はい、わかってますよ、悟様!」


俺はそれでとりあえず納得した。本人が気づいていないならいいや、と。


高校も二人は一緒に入って来た。

二人が仲良くしてるならそれでいいや、と思っていた俺がバカだった。


俺が見たものは、見てはならないものだった。

階段で綾を見かけた。声をかけようとしたところ、百合が綾を突き飛ばしたのだ。


「綾……!!」

俺はかけ降りたが、間に合わなかった。

不意をつかれた綾は変な体勢で落ちていった。





そこまで夢に見ると、俺はガバッと起き上がった。11月の寒空の下なのに、すごく汗をかいていた。





私は我慢していた。

必ず行くから待ってろよ、という文だけを頼りに。


悟と会えなくなって、もう一月(ひとつき)になる。一月たてば疫神もいなくなるだろう。

案の定、もうしばらくしたら行くよ、と文が来た。



平安時代は風流ではあるが、不便だ。

前世だったらメール一つで済む用事も文を何回も重ねなければわからなかったりもする。


「あぁー、せめて携帯があればなぁ」

「携帯とは何ですか?」

「携帯ってねぇ、うーんと……電話……もわからないか……」

「電話……?」

桃の頭上にクエスチョンマークが飛び交う。

「ええっとね、雷。雷があるでしょ?」

「はい……」

「あれの力を使って、遠くの人とすぐに会話できる機械!」

「雷神様のお力を使って、ですの?」

「そうそう、それで文もボタン一つで、ピューッと飛んでっちゃうわけ」

「ボタン……はて?」

ボタンがわからないか……!!そこか、そこなのか!?


「とにかく、そういう便利なものがあったの。」

「神様のお力ですものね、それは大層便利そうでございますね!」

「うん、あれがあれば、今こうして焦れったく待ってる必要がないし、声も聞けるしね。場合によっては、面と向かって話ができるしね。」

「まぁ、そのように便利なものがあるんですのね。」

「そう、あれさえあれば、どこにいたって連絡が取れるのに。」

「そんなに彰悟様のことが気がかりでいらっしゃいますの?」

「うん……ホントのとこは不安でたまらない。桃だから言うけど、百合に悟を盗られちゃう気がして。」

「そのようなことはございませんよ!姫様、姫様がお想いの方を信じなくてどうしますか?!」

桃のこの一言で私はようやく我に返ったのだった。

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