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ご機嫌伺い

悟はそれからも頻繁に出入りするようになった。お兄様のおかげである。


ただ、私のところへ機嫌伺いに来るのだが、その時がめちゃくちゃ冷たい。そんなんなら挨拶に来なくていいよ!というくらい冷たい。私は桃がいなければ発狂したであろうほどに冷たい。

やっぱり無理矢理文のやり取りをしているせいだろうか。それなら文をやり取りするのを止めればいいのだが、文では結構お熱い感じなのだ。余計におかしい。

桃に相談してみたが、これという決め手がなく、そのままにしている。

そこで、次にご機嫌伺いに来た時に、文のやり取りをやめるかどうか聞いてみることにした。





頭が痛い。ひどい吐き気と頭痛。風邪でもひいたんだろうか。

俺は今日の出仕の後に、成明のところへ出向こうと思っていたが、こんな体調じゃ蹴鞠どころか、話すこともままならない。これは一旦帰って様子を見るか……

と思っていたところ、有名人に出くわした。

安倍晴明だ。

晴明は俺を見ると、

「ほほう……」

と言った。

「な、何ですか?!」

「いや、お主変わった相をしておるなと。」

「変わった相?」

「現代人にあらぬ相をしておる。」

「なっ……失礼な!!なんということを申すのだ!現代人でなければなんだというのだ?」

「例えば、未来人……とか?」

晴明はさらに続けた。

「それ以上のことは無料では申せぬな」

はっはっは、と笑うと晴明は宮中へ消えていった。

なんだっていうんだ、失礼な……


俺は帰るなり布団を敷いて横になった。いくぶんか、気分が悪いのも治まる気がする。そして俺はそのまま、眠りに落ちた。


「悟!悟ってば!待ってよ!」

「綾か。相変わらずうるさいな。」

「悟くんが置いていくからでしょ!?」

悟……あぁ、俺のことか。綾……懐かしいな……

「悟くんはいつでも勝手なんだから!」

綾、相変わらず怒ってるのか、フフ。

俺から見た綾はいつも怒ってばかりの膨れっ面だ。そんなところも可愛いんだけど、俺は綾の笑顔が一番好きだった。綾の笑顔は向日葵のように周りを包み込んでくれる。そう、綾は向日葵だ。


俺はいつでも綾に邪険に振る舞ってきた。それでも綾は俺の後ろについてきてくれた。


そう、俺にとって、綾は――――


そこで目が覚めた。なんだったんだ?今の夢は?綾姫が俺の子とを悟って呼んで、そして俺は――


いや、先程の陰陽師がいらぬことを言ったせいであろう。忘れよう。


忘れようと思えば思うほど忘れられないのはなぜだろう。





今日は曇り。私の心の中みたい。

悟はしばらく来ていないし、なんだか退屈。


桃が、

「姫様、州浜づくりでもなさいますか?」

と聞いてきた。

退屈だし、それもいいかな、と思ってつくることにした。

州浜づくりとは、砂浜をイメージした箱庭あそびのようなもので、貝や石を飾って砂浜を作り上げる遊びだ。

私はまず砂を三段にして、石と貝を設置した。この、砂を三段にするところが苦労した。砂浜で波が押し寄せた後のイメージだ。枯れ木も置いてみたりして、流木のつもり。

あまりに出来映えがよかったので、お兄様にあげることにした。

お兄様はちょうど出仕から帰って来られていたところで、私の作品を大変褒めて下さったそう。

私は大満足でもう一つ作り上げた。

これも思いの外よくできたので、部屋にかざることにした。



悟からの文は途絶えることはなかった。いつでも丁寧に返事をくれていたし、私も丁寧に返事をした。


十月の風が吹くある日、悟が私に用事だと言って来訪した。

私は再び十二単を着せられて、悟を出迎えた。

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