野上綾!青春を謳歌する……?
私は高校一年生。名前は野上 綾。
この四月から高校生になったばかりのピチピチ乙女。
中学が女子校だったので、共学の高校に入った。思い切り恋したりしたいんだ!
近所の悟くんも同じ学校。
だから、一緒に行くと思っていたのに取り残されてしまった。
悟くんは私の一つ上で、サッカーが上手で人気がある。もちろん私も気になっている一人。
近所ということで有利だと思ってたけど、この扱いはないんじゃない?
走って駅まで行くと、まだ悟くんは電車に乗っていなかった。ラッキー!!
私は悟くんに声をかける。
「悟くん、朝くらい一緒に行こうよ。」
悟くんはめんどくさそうに
「なんで俺がお前と一緒に行かなきゃなんねーの?」
「なんでって、幼なじみでしょ?!」
「あー、そうだな。でも今からは関係ないから。」
そう言って電車に乗り込む悟。逃すもんですか!と腕を絡める私。それに少し驚いた悟が腕を振って拒否した。
「そこまで嫌わなくてもいいのに……」
と涙声になる私。
さすがの悟もそれには驚いたらしく、
「ごめん……ごめんな。もう冷たくしないから。」
と言い出した。
私は待ってましたとばかりに
「なーんちゃって。」
と顔をあげた。
「……っ、この野郎、俺を騙したな?」
「もう冷たくしないんだよね?」
「あーっ、はいはい!!」
「はいは一回でよーし!」
「あーもう、はい!」
と、いつもこんな調子で悟をからかうのが日課。
他の女子とは違うってところを見せつけないとね。
学校に着いて一番にしたことというと、仲良しの百合ちゃん探しだ。
私と百合ちゃんは今はクラスが別になっているけど、小学校五年生のころから中学全学年一緒だった腐れ縁の間柄だ。
今はクラスが別だから、教室までいかないと会えない。
百合は名前のごとく色白で清楚な美人だ。
私とは大違い。私はいつも外であそんでいるせいか、色黒で髪の毛は短い。百合みたくなりたいんだけど、活発なこの性格は変えられなかった。
「百合!」
教室へ行くと、百合にはすでに取り巻きができており、うかつに近づけなかった。
しかし、私の声に気づいてくれた百合は私を近くへと呼んでくれた。
「綾、まだクラスに仲良しができないの?」
百合が心配して言う。
「あはは、それがクラスにはもうグループができちゃってて……」
「それじゃ、どこかのグループに入れてもらわないと」
「私には百合がいるからいいもん。」
「でも、私は私でお友達がいるから……」
「迷惑なんですよね?!」
間を割って入ったのは取り巻きの一人だ。
「迷惑ということはないけど、いつまでも中学と同じわけにはいかないし……」
私はハッとした。
百合には私が負担なんだ。そりゃあ、クラスにこれだけ取り巻きがいれば、私の存在など邪魔でしかないだろう。
私は後退りすると、
「自分のクラスにいってくる!」
と言って走ってクラスに戻った。
クラスにはやっぱりグループができていた。私はグループに入っていない。それもそうだ。毎日百合のところへ入り浸りだったから、その間にグループができても仕方なかった。
派手なグループ、音楽系のグループ、オタク女子のグループ、クラスはこの3つで割れていた。
あえて入れてくれそうなのは、オタクグループだ。
私は彼女たちに近づいた。
「おはよう!」
しかし彼女たちは私を無視した。
仕方がないので、音楽系グループに声をかける。
あっさり入ることができてしまった。
話題はNLK48やボカロの話ばかりで、音楽を今まで聞いてこなかった私は話題についていけなかった。
そんなこんなで、私はまた一人になってしまった。
階段の上でボーッと考え込む。派手なグループは私をお呼びでない。頼みの綱は音楽グループなのだ。
そんなとき、階段でボーッと考えていたら、人にぶつかって階段の一番上で転んでしまい、頭を強く打った、記憶はそこで途切れてしまった。
目が覚めると、なんだか枕が固い。見慣れない木の天井。起き上がると、そこは別世界だった。