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世界一の天才発明家は、退屈なので異世界へ行く  作者: 凪塩 未来


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1/1

世界一の天才発明家は、退屈なので異世界へ行く

皆様、はじめまして。


この作品を読んでいただき、ありがとうございます。


「最強だからこそ退屈だった天才」が、自ら未知の世界へ飛び込み、科学と発明で異世界の常識を塗り替えていく物語です。

俺TUEEEだけではなく、発明・研究・魔法理論・世界の謎なども楽しんでいただける作品を目指しています。

少しでも「続きが気になる」「面白い」と思っていただけたら、ブックマークや評価、感想をいただけると励みになります。

それでは、主人公が新たな世界でどんな発明を生み出し、どんな天才たちと出会うのか、ぜひ最後までお付き合いください。

プロローグ 退屈な天才


天才。

そんな言葉は、生まれてから何度聞いただろう。

物心ついた頃には、大人たちは俺を見て口を揃えた。

「この子は本物だ」

……違う。

俺は、生まれつき頭が少し良かっただけだ。

小学生になる頃には、父親の名義を借りて会社を立ち上げた。

世間は"子どもの遊び"だと笑った。

その笑いは、一年も続かなかった。

俺が作った製品は世界中へ広がり、中学生になる頃には世界シェアの四割を占めていた。

高校卒業の頃には、日本で使われる工業製品、生活用品、医療機器──その約半分に俺の技術が使われていた。

資産は数え切れない、豪邸、専属の使用人、世界中に研究、優秀な社員。

そして何より、家族にも恵まれていた。

誰もが羨む人生、誰もが夢見る成功者。

 ……だが。


「つまらない。」


心の底からそう思った。

金があるから幸せ?家族がいるから幸せ?社会に貢献しているから幸せ?

違う、全部違う。

俺が欲しかったのは、そんな安っぽい幸福じゃない。

命を懸けるほどの勝負だ。

才能と才能がぶつかり合い、一歩間違えれば全てを失う世界。

昨日の自分を超え、今日の自分を超え、明日はさらに高みを目指す。

そんな血が沸き立つような毎日。

 

俺が欲しかったのは、それだけだった。

だから俺は発明した。

誰にも思いつかないものを、世界を変える技術を。

文明そのものを書き換える発明を。


特許?

知るか。

そんな紙切れに興味はない。

アイデアを独占するくらいなら、空き缶にでも詰めて捨てておけ。

発明は金儲けの道具じゃない。

人類を次の時代へ押し上げるための"武器"だ。

俺の会社が売る製品は、ただの製品じゃない。

凡人が天才へ至るための道具だ。

その道具を使い、新たな天才が生まれ、世界を変える。

そう信じていた。

だが――。

世界は、俺の期待を裏切った。

誰も競いに来ない、誰も俺を超えようとしない。

人は俺を神と呼び、崇めるだけだった。


……くだらない。


俺が欲しかったのは信仰じゃない。

命を懸けて俺を倒そうとする、本物の天才だ。

もし、この世界にいないのなら──俺が、その世界へ行けばいい。

その瞬間、世界そのものが、音を立てて崩れ始めた。




第一話 世界一の天才は、退屈だった


世界には二種類の人間がいる。

天才と、天才になる途中の人間だ。


凡人?


そんなものは存在しない、才能が眠っているだけだ。

俺は、それを証明するために生きてきた。

──だが。


「……退屈だ。」


誰もいない研究所の天井を見上げながら、俺はため息を吐いた。

世界最大の研究施設、地上百階、地下五十階。


ここだけで一つの都市が築けるほどの設備が揃っている。


 窓の外には俺の会社が所有する研究棟が並び、その向こうでは無人輸送機が昼夜を問わず飛び回っていた。


全部、俺が作った。

いや、正確には俺が考え、世界中の研究者たちが形にした。

今や世界で使われる電子機器の四割。

医療機器の半分、生活インフラの多く、それらには俺が設計した技術が組み込まれている。


金はある、権力もある。

名誉なんて数え切れないほど押し付けられた。

なのに…


「つまらん。」


俺は机の上に積まれた受賞トロフィーを片手で払い落とした。

ガシャーン、と派手な音が研究室に響く。


「社長!」


秘書が慌てて駆け込んでくる。


「またですか!? それ、一昨日いただいた世界科学賞ですよ!」


「だから何だ?」


「だから何だって……!」


「紙切れや金属の塊で人間は進化するのか?」


「……しません。」


「なら価値はない。」


秘書は頭を抱えた。

この反応も、もう見飽きた。


「本日の予定です。午前は政府との会談。午後はノーベル賞委員会との打ち合わせ。夜は各国首脳との晩餐会があります。」


「全部キャンセル。」


「……ですよね。」


「代わりに研究をする。」


「社長は昨日も一昨日も三日前もそう言いました。」


「だから?」


「たまには休んでください!」


「休んだら世界が止まる。」


「止まりません!」


「止まる。」


「止まりません!」


くだらない言い合いだ。

世界中が俺を必要としている。

だから俺は休めない。


……違う。


休みたくないんだ。

何かを作っている間だけは、少しだけ生きている気がする。

しかし、それも長くは続かない。


完成した瞬間に興味が失せる。

世界初?人類初?

そんな肩書きに価値はない。

重要なのは、その先に俺を超える誰かが現れることだ。


十年、二十年、三十年。

誰一人として。


「情けない。」


世界中の頭脳を集めても、俺に届く者はいなかった。

競争がない、敗北もない、命を削るような勝負もない。


あるのは賞賛だけ。

そんなものはいらない。

その時だった。


「社長。」


研究主任が息を切らして飛び込んできた。


「完成しました!」


「何がだ?」


「例の理論です!」


 俺は立ち上がる。


「空間の壁を破る装置……!」


「……ほう。」


ようやく少しだけ面白くなってきた。

数年前、俺は一つの仮説を立てた。

この宇宙は唯一ではない。

世界は無数に存在し、その境界は理論上、突破できる。


誰も信じなかった。

笑われた。

だが、そんなことはどうでもいい。

重要なのは、できるかどうかだ。


「実験結果は?」


「成功率九十九・九九七パーセント。」


「失敗率は?」


「〇・〇〇三パーセント。」


「高いな。」


主任の顔が引きつる。


「十分低い数字ですが……。」


「命を懸けるには、ちょうどいい。」


「え?」


「準備しろ。」


「ま、まさか!」


「俺が行く。」


研究室が静まり返る。


「駄目です!」


「危険です!」


「人類初ですよ!」


「帰って来られる保証はありません!」


皆が必死に止める。

だから何だ。

帰って来られる保証がない?

結構じゃないか。


初めてだ。

初めて胸が高鳴っている。

未知の世界、未知の文明、未知の天才。


俺より優れた存在がいるかもしれない。

俺を殺せるほどの発明家がいるかもしれない。


「はは……。」


思わず笑みが零れる。


「やっとだ。」


退屈だった人生が、ようやく終わる。

俺は装置の中央へ歩き出した。

無数のリングが回転を始める。

青白い光が研究室を包み込んだ。

研究者たちは悲鳴のような声を上げる。


だが俺は笑っていた。

心の底から。


「待っていろ。」


この世界のどこかにいる、まだ見ぬ天才へ。


「俺がお前を見つけてやる。」


次の瞬間。

世界が白く染まった。



第二話 魔法という名の未知


……寒い。


それが、異世界で最初に感じたことだった。

白い光が消え、俺はゆっくりと目を開く。

見慣れた研究所の天井はない。

頭上には満天の星空が広がり、二つの月が静かに夜空を照らしていた。


「成功……か。」


思わず笑みがこぼれる。

気の成分が違う。

重力は地球よりわずかに軽い。

植物の放つ香りも、聞いたことのない虫の鳴き声も、すべてが未知だった。

最高だ。


「未知の世界……!」


俺は胸いっぱいに空気を吸い込んだ。

この瞬間だけは、世界一の天才でも何も知らない。


ただの探究者だった。

腰のホルスターから小型分析端末を取り出す。


「大気組成を解析。」


画面には次々と数値が表示されていく。


『酸素濃度 二三・八%』


『未知粒子を検出』


『粒子密度……測定不能』


「未知粒子?」


そんな物質は地球には存在しない。

分析プログラムを書き換え、再計測する。

結果は変わらなかった。


「面白い。」


その瞬間だった。

森の奥から爆発音が響く。


 ドォォォン!


地面が震え、木々が揺れる。

獣の咆哮、そして少女の悲鳴。


「誰かぁぁぁ!」


俺は音のする方向へ駆け出した。

数百メートル先の開けた場所。

そこでは巨大な狼のような怪物が少女へ襲いかかっていた。

体長は五メートル以上。


全身を黒い毛で覆われ、額には赤い角。

生物というより兵器だ。


「グルルル……!」


少女は震えながら杖を構える。


「ファイアボルト!」


杖の先から炎の槍が放たれた。


炎?


いや、違う。

燃料も酸化剤もない。

化学反応では説明できない。

それなのに炎が発生している。


狼へ命中した炎は爆発し、巨体を吹き飛ばした。


「そんな……!」


傷一つ付いていない。

狼は再び飛びかかる。

少女は尻もちをついた。


終わった。

誰が見てもそう思う場面だった。


「なるほど。」


俺は一歩前へ出る。


「これが魔法か。」


狼がこちらを見る。

赤い瞳。

完全に敵意を向けている。

だが恐怖はない。

むしろ心が躍っていた。


「科学では説明できない現象。」


「エネルギー保存則を無視する力。」


「未知粒子との関連性は……ほぼ確定。」


 俺は端末を構えた。


 少女が叫ぶ。


「逃げて! その魔物はCランクよ!」


「C?」


「冒険者十人でも勝てない!」


「へぇ。」


つまり、この程度でその評価か。

狼が跳んだ。

時速二百キロは超えている。

普通の人間なら見えもしない速度。


「遅い。」


俺は横へ半歩ずれる。

狼の爪が空を切った。

着地した瞬間、俺は首筋へ掌を当てる。


「頸椎の強度は……人間の約十五倍。」


 分析終了。


「なら」


 バチッ。


掌から青白い閃光が走る。

超高圧電流。

地球で作った護身装備の一つだ。


数百万ボルト。

しかし狼は倒れない。

それどころか体表を黒い光が覆い、電撃を打ち消してしまった。


「……防いだ?」


初めてだった。

俺の科学が通用しない。

胸が高鳴る。

笑いが止まらない。


「ははは……!」


狼が唸る。

少女は信じられないという顔をしていた。


「笑ってる場合じゃない!」


「いや。」


俺は心の底から嬉しかった。


「最高だ。」


「え?」


「この世界には、俺の知らない法則が存在する。」


科学だけでは届かない領域。


魔法、未知粒子、魔物、全部、研究対象だ。


「決めた。」


俺は空を見上げる。


「この世界の理を、すべて解き明かしてやる。」


その宣言に応えるように、狼が再び牙を剥いた。

俺は静かに笑う。


「まずは、お前からだ。」


異世界最初の研究対象。

その解析が、今始まる。




第三話 ようこそ、天才の世界へ



狼のような魔物――いや、この世界では「魔獣」と呼ぶのだろう。

その巨体が再び地面を蹴った。

土が弾け、空気が裂ける。

少女は恐怖で目を閉じた。


「終わった……」


そう呟いた声が聞こえる。

だが、終わるのはお前のほうだ。

俺は魔獣を見据え、ゆっくりと右手を掲げた。


「科学は万能じゃない。」


さっきの電撃は防がれた。

つまり、この世界には科学だけでは説明できない力がある。


それなら答えは簡単だ。

理解する、解析する、利用する。


それが発明家だ。

分析端末の画面に、さっきから観測していた未知粒子の軌道が映し出される。

魔法を使った瞬間、魔獣が電撃を防いだ瞬間。

周囲の空間に存在する未知粒子が、一定の規則で流れていた。


「やっぱりな。」


魔法は奇跡じゃない。

現象には必ず法則がある。


その法則を知らないから、人は『魔法』と呼ぶだけだ。


ならば…


「再現できる。」


俺は分析端末を地面に置き、内部の演算装置を最大出力へ切り替えた。

端末の周囲に青白い光が走る。

空気中の未知粒子が、吸い寄せられるように集まり始めた。


「な、何をしてるの……?」


少女が震える声で尋ねる。


「実験だ。」


魔獣が目の前まで迫る。

鋭い爪が振り下ろされる、その一瞬。

俺は指を鳴らした。




第三話 ようこそ、天才の世界へ



狼のような魔物――いや、この世界では「魔獣」と呼ぶのだろう。

その巨体が再び地面を蹴った。

土が弾け、空気が裂ける。

少女は恐怖で目を閉じた。


「終わった……」


そう呟いた声が聞こえる。

だが、終わるのはお前のほうだ。

俺は魔獣を見据え、ゆっくりと右手を掲げた。


「科学は万能じゃない。」


さっきの電撃は防がれた。

つまり、この世界には科学だけでは説明できない力がある。

それなら答えは簡単だ。

理解する、解析する、利用する。


それが発明家だ。

分析端末の画面に、さっきから観測していた未知粒子の軌道が映し出される。

魔法を使った瞬間、魔獣が電撃を防いだ瞬間。

周囲の空間に存在する未知粒子が、一定の規則で流れていた。


「やっぱりな。」


魔法は奇跡じゃない。

現象には必ず法則がある。

その法則を知らないから、人は『魔法』と呼ぶだけだ。


ならば…


「再現できる。」


俺は分析端末を地面に置き、内部の演算装置を最大出力へ切り替えた。

端末の周囲に青白い光が走る。

空気中の未知粒子が、吸い寄せられるように集まり始めた。


「な、何をしてるの……?」


少女が震える声で尋ねる。


「実験だ。」


魔獣が目の前まで迫る。

鋭い爪が振り下ろされる、その一瞬。

俺は指を鳴らした。


 ――轟ッ!!


目を焼くほどの白い閃光。

次の瞬間、魔獣の巨体が真横へ吹き飛んだ。

何本もの大木をなぎ倒しながら転がり、やがて動かなくなる。


森を包んでいた咆哮が消えた。


「……え?」


少女が呆然と口を開ける。


「一撃……?」


「いや。」


俺は倒れた魔獣へ歩み寄る。


「出力が高すぎた。」


予定では気絶させるだけだった。


解析したかったのに、死なせてしまった。


「失敗だな。」


「それを失敗って言うの!?」


少女が思わず叫ぶ。

俺は魔獣の角を拾い上げ、断面を観察する。


骨ではない、金属でもない。

結晶構造……?


「興味深い。」


素材としても優秀だ。

研究対象が一つ増えた。

すると少女が恐る恐る近づいてきた。


「あ、あの……。」


「何だ?」


「助けてくれて……ありがとうございました。」


深々と頭を下げる。

礼を言われる筋合いはない。

助けることが目的ではなかった。

実験をしたかっただけだ。

しかし、それを口にするのも無粋だ。


「気にするな。」


そう答えると、少女はほっと息をついた。


「私はリリアです。近くの町で魔法学院に通っています。」


「学院?」


「はい。魔法を学ぶ学校です。」


学校、研究機関、知識が集まる場所。

その単語だけで胸が躍る。


「面白そうだ。」


「え?」


「案内してくれ。」


「えっ!? 学院にですか!?」


「ああ。」


俺は笑う。


「この世界の天才が、そこにいるんだろ?」


リリアは少し考え、小さく首を振った。


「……先生たちはすごいです。でも、あなたみたいな人は見たことありません。」


「それはどうかな。」


世界は広い。

地球でも、俺が知らない天才がどこかにいると信じ続けた。

この世界なら、なおさらだ。


魔法、錬金術、魔道具、精霊、竜、神。


まだ見ぬ知識が、無限に広がっている。

胸が高鳴る。

この世界なら。

ようやく見つかるかもしれない。

俺を超える存在が。


あるいは。

俺を殺せるほどの天才が。

その時こそ、俺は心から笑えるだろう。


「行こう。」


研究は始まったばかりだ。

世界を知り、法則を解き明かし、誰よりも先へ進む。

その果てに待つのが勝利でも敗北でも構わない。


退屈だけは、もう二度と御免だ。

俺はリリアと並んで歩き出す。

朝日が森を照らし、新しい世界への道を黄金色に染めていた。

その先に待つ運命を、まだ誰も知らない。


だが一つだけ確かなことがある。

世界は今、新たな異端を迎え入れた。


――世界最強の発明家。


その男は、この世界の常識すら発明し直すためにやって来たのだから。ッ!!


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。





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