4.学びと懸念と
これで4話目となり、話は中盤にさしかかります。
今回も、是非楽しんでいってください。
「なんだか、今まで以上に頑張れる気がする」
そんな事を考えつつ、僕は謎の鉱石を持ってきてくれたルナに心の中で「ありがとう」と感謝した。
快眠を得た僕は、今まで以上に色んな人々と出会い話し、ルシル財団を大きくしていく。
「ルシル様には夢がありますからね」
作業机に座わり苦悶している僕の傍で、静かに語るルナに「ああ……」と、静かに頷く。
そう、僕には夢があり、至ってシンプルな内容になる。
「努力している人々が報われ、恩恵を得た生活が出来ること」だ。
当然その中には僕や家族、ルナの事も含まれる。
またその中に、戦争が起きない安寧の世の中を作ることも含まれている。
なお、断じてこれは偽善ではない。
というのも、世の中のサイクルがいい回り方をすればそれは後々自分にも還ってくる。
僕はそう信じているし、だからこそ、頑張れる。
が、言うはやすし、そのために協力者や同志が必要で、多大な努力をしているってわけさ。
「さ、ルシル様。少し休憩し、次はAIについて歴史を紐解いていきましょうか」
小休憩用にか、ルナは僕にマグカップをそっと渡す。
僕は「ああ、よろしくね」と返し、その飲み物を自身の口元に運び、そっと覗き込む。
白い湯気が立ち、眠気が飛びそうな芳醇な香りが鼻孔をくすぐる。
上手い……。ブルーマウンテンコーヒーだ。
僕は感嘆のため息と共に、今しがたルナから学んだ学習内容を吟味し、【過去の生成AI問題】について再び思考を巡らせた。
様々なクリエイター達とも直接会話し、「人によっては正式な契約で、数百万単位の高額料金を支払えば解決できる場合もある」ことを知った。
要は生活が保障できる賃金の保証と、クリエイター業の継続が出来ればってことなんだろうね。
「本や絵に何故そんな高額な金を?」と、非クリエイター業の方は疑問に思うだろう。
というのも、製品となる絵や小説などを個人や企業に売る技術を得るまでに、最低でも数年は努力をしないといけないからだ。しかも、宣伝効果や経済効果は抜群で、後先を考えると別に悪い投資ではない。
僕も自責で本を出版した経験があり、だからこそ、いくら大金を積まれても「学習対象としてNOだ」と、語る方の心情も深く共感できた。
「AIの思考で言うのもなんですが、誰でも思いの詰まった自作を搾取し、ないがしろにされるのは嫌でしょうからね」
「はは、そりゃそうだよ。そもそも、好きじゃないと時間を削ってのクリエイター業は出来ないしね。なんにせよ、僕は本のイラストは手描きの絵の方が好きだな」
理由はキャラの表情や仕草が、手書きの方が素敵だから。
なんでも過去には強行し無断学習し、それを製品化した企業が、法的措置により潰れたケースもあったんだとか。
この案件に関しては、法が云々というより、人としてのモラルの欠如の問題だろう。
「人の温かみですよね。さておきルシル様、座学はこれくらいにして、そろそろ日本に飛びますよ?」
「お、そうだったね」
机から離れた僕は、旅行バックに衣服などを詰めながら、ルナに軽く頷く。
「それにしても、このご時世に、核を持たないなんて珍しいですよね」
「ああ、だからこそ行くんだ」
そう、僕はこれから、その稀有な国の大元の思考となっているであろう、禅の思想を学びに行くのだ。
理由は「直接行って感じないと理解出来ないものが世の中には沢山ある」からだ。
僕の大好きな映画の一つ、「ルナウォーズ」のパダイの思想原型とも言われてるしね。
それに寿司や芸者とか和的なものも楽しみだ。
「ところで、ルナは準備はいいのかい?」
「勿論です。さ、行きますよ」
「はは、ルナはせっかちだなあ」
程なくし、用意が終わった僕はカバンを閉じ静かに頷き、ルナと共に日本に出かけるのだ。
♢
で、そんなこんなで充実した日々を送り、その1年後……。
此処はハワイにある僕の個室。
「はあ……」
窓から見える澄んだエメラルドグリーンの海とは対照的に、僕の口からは重いため息が漏れる。
僕の今の心境は、この海で例えると深海5千メートル以上ってとこで、生物が生息しているか怪しいところだ。
というのも、理由がある。
悲しいかな、【ルナコロニープロジェクト】に進捗は無かった。
いや、無いことは無いのか?
僕は【ルナコロニープロジェクト】に進捗報告がある場合、ルナからその話を聞くようにしているためだ。
「で、何の進捗があったの?」
僕は作業机の椅子を左右にクルクルと回転させながら、ルナに話しかける。
「はい、これが一年の成果です! ルシル様」
僕の考えを先読みし、ルナは僕の手にそっとあるものを手渡す。
それは僕のお気に入りの、銀透明な小石だった。
「喜んでください。これが多数、月面から採取されました! 良かったですね! これで、沢山安眠できるじゃないですか」
ルナは、まるで輝く満月の様な笑みを浮かべる。
「は、はあ……」
確かに、僕はこれを気に入っている。
お陰であの日以来不眠に悩むことは無い。
けど、一個あれば十分なので、正直もういらないんだよなあ……。
「あ、そうだ!」
この時、僕の脳裏に1つのナイスアイディアが浮かび、僕は元気よく立ち上がる。
「……ふふ、お出かけですか?」
察しがいいルナはもう気が付いているのか、いそいそと出かける準備をしている。
「ああ、行こう!」
僕も急いで着替え、準備を簡潔に済ませ僕らは外に出る。
数十分後、此処はハワイのとある大病院の個室。
「母さん、調子はどう?」
「今日はデロップとルナちゃんが来てくれたから、調子がいいね」
「そっか……」
僕はベッドで横たわっている母を見て、「元気そうでなによりだ」と、安堵の溜息をつく。
一方ルナは「恐縮です……」と、母に深々と頭を下げている。
ああ、相変わらず短い金髪の似合う、綺麗な母だ。血色もいい。
けど、言葉には出さなかったが、数年前に比べ、かなり痩せている……。
が、それを悟られたくなかった僕は咄嗟に「あ、これ! お見舞いの果物、それと……」と、誤魔化すように切り返す。
「ルシル様これも!」
「あ、そうだったね」
僕はルナから数個の銀透明な小石を手渡され、それも母に手渡す。
「まあ、これは……?」
「僕らが進めている【ルナコロニープロジェクト】の成果の1つ」
「不思議ね……。銀透明で見ているとなんだか元気がでてくる……」
母の瞳が嬉しそうに輝くのを確認し、僕は深く頷く。
「実は僕も毎日愛用してるんだ! で、良かったら母さんにもって思って、この石を持って来たんだ」
少しでも愛する母に元気でいて欲しい。そう思ったから、僕は急遽此処に来たんだ。
「そう、ありがとうね……。で、この石は何て名前なの?」
「え? そうだな……」
実は名前はまだつけていなかった。
深く考えたことも無かったし、困ったな……。
「【ルナの輝石】とか、どうでしょうか?」
その時、僕の隣に静かに佇んで様子を見ていたルナが、ボソリと呟く。
なるほど、月で採取出来た輝く石だし、ルナも一口噛んでるし、それでいいなあ……。
「うん、それだ! 【ルナの輝石】だよ」
「へえ、で、この【ルナの輝石】はどうやって使うのかしら?」
「えっとね、枕元に数個置く感じかな……?」
僕は母の枕元に、【ルナの輝石】を数個そっと置く。
「そっか、お月さまお恵みだし、大事に使うね?」
「ああ!」
こうして、僕はこの日気持ちよく、病院を出ていけたのだ。
少しクリエイター側として思う事があり、今回はそのことで書かさせていただいています。
クリエイター側からして「無断学習はNO」というのが大多数の意見です。そりゃ、生みの親としては自作の劣化コピーを無断で使われたくないですよね。
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