白い予言
私の祖母は占い師で、亡くなる前にタロットカードだけを私に残した。
今日の一枚は「愚者」。なぜか、そのカードが今の私そのものに見えた。
28歳になったばかりの私は、同じ朝を何度も繰り返している気がしていた。
「今日も変わらない日常が始まる」
通勤電車の窓に映る自分は、いつも同じ表情をしている。
そんな朝、駅のホームを歩いていると、突然白いマフラーが風にあおられて視界を横切った。
マフラーを掴むと前方から見知らぬ男性が息を切らして駆け寄ってくる。
「すみません。そのマフラー僕のものなんです。すごく大切なもので…」
彼の嬉しそうな笑顔には、純粋さがあった。
「占い、信じますか?」
私は唐突に聞いてしまった。
「僕はあまり占いとか分からないんですけど、きっかけなら、信じます」
彼はそう言って去っていった。なのに、その言葉だけがなぜか耳に残った。
翌日、私は思い切って転職の面接を受けた。
祖母のタロットカードが何だか私の背中を押してくれてる気がした。
三日後、採用の連絡がきた。
新しい職場に着き、出会ったのは、あのマフラーの彼だった。
「え、運命ですかね」
と彼は微笑む。
「たまたまですよ…きっと」
私はカードをシャッフルした。
次の一枚を、もう一度引くために。
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