91 壊れた検査と、戻らなかった時間
「わたしの検査が間違いだったんならお兄様も間違いかと思ったんだけど、白い結婚ならやっぱりお兄様ではないのね」
元々二人とそこまで関係はないが、リチャードは優しい兄だった。クリスは...前回のことがあり恐怖の対象だ。
「そもそも、魔力で測る遺伝子検査が間違いだったことの方がよっぽど問題だ」
父が顔を顰めるが、それさえなければ私の子供時代は孤立していないのだとしたらその通りだ。
「魔力も、遺伝子と同じように似通ってくるんだが、親子関係と間違えるレベルでそっくりということだよね。魔力量はかなり高いから、量だけで測るなら似てくるだろうが...」
ラスカルも首を傾げる。
「元々魔力は貴族や一部の平民だけが持つものだ。サンプル量が少なすぎるんじゃないのだろうか?」
ルシアンも検査によって変えられてしまった私と父の関係を憂いているようだった。
「元々この検査は、貴族と平民との間で子供が生まれた時に、間違いなくその貴族の子供かどうかを測るものだったんだ。全く魔力がないところから、魔力が現れたら貴族との子供、更にその魔力からどこの家門のものかというね。」
ルシアンは私に検査について説明する。
その内容だったら、誰との子というよりはどこの子というニュアンスの方が近いかもしれない。
「うちの国も、きちんと科学の検査を導入した方がいいのよ。魔力や魔法は一部の特権のものが持つだけで、本来なら大多数が科学の世界で生きているんだから。魔法だって、魔女と魔術師は違うんだしこんなこと二度と起こってほしくないわ」
母もそういいながら父になんとかしろと言う。
母の顔色はまだ戻ってないが、父が甲斐甲斐しく世話をしているし、精神的にはすっかり元に戻った気がする。
「はあ、やることがたくさんだな。とりあえず、移動ができるようになったら私は王城に戻る。ラスカル、申し訳ないがヴァネッサを転移で運んでやってくれ。話し合ったが、彼女は王城でゆっくり休ませる。あと、私の部屋にラベンダも来てはどうか?防御だけは自慢の部屋だ」
ため息をつきながら父は母と一緒に暮らすことは嬉しそうだ。目尻が下がっているし、母も嬉しそうに見ているが...
「だが、王の部屋はヴァネッサ王妃と私が叩き壊したはずだ。復元魔法でドアは戻せるが、あの緻密な防御は一つ壊すと、全部壊れる仕組みだから作り直さないといけないと思うが」
「な!なに!!あれ作るのに何年かかったと思ってる?」
父は慌てる。
「だから、何年かかっても一発叩き割れば壊れるのよ。でも、あなた今回の出来は良かったわ。だって、私、拳10倍魔法で壊したけど骨折したもの」
「王、申し訳ないが、緊急だったので私も30倍の蹴りでドアを破らせていただいた。おそらく王妃の骨折は、魔法の出来ではなく、ドアの硬さだとおもうが...あの魔法陣は素晴らしかった」
ルシアンもフォローにもならないフォローを入れる。
父は呆然としている。
「わたし、一人でもなんとかなるわ。わかっているのよ。最初の一撃さえ力を抜かなければクラリス様だってお兄様にだってちゃんと勝てるのだから...」
私がため息をつきながら言う姿に、母のヴァネッサも頷く。
「そうね、甘やかしてもいいことにはならないわ。」
「じゃあ、タウンハウスに防御をたくさん貼っておくから。クラリスも牢に入れてあるし、クリスが何かしてきても防御は破れない。」
ルシアンは迷ったようだが、以前の宿舎の部屋に案内したら、また嫌な思いをさせると思ったらしい。
タウンハウスは、二人で過ごした場所じゃないのかしら?そう思うと、どろっとした黒い気持ちが出てきそうだったのでなんとか抑える。
「私がそばについておくわ。何かあればすぐ..」
使い魔がルシアン、父、母、ラスカルを見回す。
「誰か暇そうな奴に助けを求めるわ」
「それは、きっと間違いなく私が行く確率が高そうだな」
引退元魔術師団長のラスカルが苦笑いしながら微笑んだ




