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【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第二章

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89 もう一度、家族になろう

「それだけのことをしたんだ。君の人生も、ラベンダーの人生も、それから二人の王子の人生も俺がおかしくしてしまった」


俺はヴァネッサを見つめた。


「ヴァネッサ、唯一俺が変わらなかったのは、結局君を愛していたことだけだった。昔から今までね。それなのに、君を疑い信じなかった。君の人生をめちゃくちゃにしてしまって、今更だが、どうかこの後は幸せな人生を歩んでほしい」


「あなたはどうするの?」


「エリザベートとセレスティアのことが落ち着いたら、王のまま、しばらくは弟とその子供の補佐をする。そして、タリー国との話し合いをして退位かな。弟はまともになったが、父と母は相変わらずだ。余計な横槍を入れないように見張っておかないとね」


俺は、全てを伝えることができてやっと解放された気持ちになった。

この後は、贖罪の日々を過ごしながら、愛する人たちの幸せを祈りたい。


「私はいらない?あのね、ラスカルが私を実子として認めてくれる手続きをとってくれるって。そうしたら私は侯爵の娘になるの。魔女だと王妃では批判が出るけど、貴族の娘で魔女だったらどうかしら」


ヴァネッサが苦しそうに微笑んだ。


「拒否しないでほしいの。だって、やっと私だけの夫になってくれるんでしょ?ラベンダーも娘だって思ってくれるんでしょ。」


俺は何度も嘘ではないかと瞬きをしたが、間違いなく目の前にヴァネッサがいて、そう俺に言ってくれることに震えがでる。

ヴァネッサの顔色はとても悪い。そんな状態に俺のせいであわされたのに、まだその優しい言葉をかけてくれるのか?


「俺は、お前もラベンダーの人生もぐしゃぐしゃにしたんだぞ」


そっと震える自分の手を、ヴァネッサの上に置く。


「そうね、だから私にはそれだけしっかり尽くしてよ。ラベンダーには...私も一緒に償わなければいけない。それこそあなただけじゃないわ。」


ヴァネッサは俺の震える手の上に自分の手をのせた。

綺麗な白いしっとりとした手が俺を包む。

俺は、泣きながらうん、うんと頷いた。


「ごめん、ヴァネッサ...君を愛している。もう一度、結婚してくれるか?」

「あなた一人にできないもの。」


俺はヴァネッサを抱きしめようとした...が....

ドアが開くーー


「お父様、お母様?バロウの実がたくさんなっていたから、とってきました。あれ?どうしたんですか?二人とも??」

「あ、ああ。いや、ありがとう」

「すぐ切りますね。後は、せっかくなので妖精と一緒にパンを焼いてみたんです。熱々なら食欲出るかなって?」


カゴに入った布にほかほかのパンが湯気を出している。

それを持ってきて皿に移し始める。

俺は、ぼんやりラベンダーを見つめた。


「お父様温かいミルクと紅茶どっちがいいですか?」

「あ、ああ...紅茶は魔女の紅茶か?」

「そうです。お母様の体調を整えるんならそっちのほうがいいかなって。でも、牛乳だけでも十分よい魔力を含んでますから、そちらでも回復効果は高いですよ」

「ラベンダー...よかったら、魔女の紅茶を目の前で入れてくれないか?」


ラベンダーが一瞬固まり、真っ赤になる。


「あ、あれは!!私は音痴な上に演歌調で恥ずかしいです。お母様みたいな綺麗な感じじゃないんで隠れてやりたいです。効果は隠れて入れてもちゃんとありますから」

「ルシアン」

「はい、王、なんでしょうか?」

「ラベンダーの歌はどんな感じだ?」


ルシアンは一瞬行動が止まり、ぷっと思い出したように笑う


「ひっ、ひどい!ルシアン!ひどい!笑うなんて」

「いえ、あの...元気が出る感じですね。王にも聞いてもらった方がいい。」


ルシアンは笑いを必死で堪えている。


「ルシアンがここまで楽しそうにしているのを初めてみた。きっと、よい歌声なんだろうな。その紅茶で元気がもらえたら、お前たちにも今までのことを聞いてほしいんだ。」


俺からの真剣な思いを受け止めてくれたのか、真っ赤にして恥ずかしがっていたラベンダーが

「お父様...、わかりました。でもほんとに音痴なの。だから、呆れないでね。もし、上手になれっていうなら...もっと勉強するし、練習するわ。だから嫌わないでね」


呆れないでね

嫌わないでね


その言葉に胸が締め付けられるようにギュッと苦しくなった。


「ラベンダー、すまなかった。お前は間違いなく私の愛する娘だよ。謝っても謝りきれない。呆れるわけがない、嫌うわけがない。俺たちのために、回復を祈ってくれる優しさが嬉しい。でも、良かったらお前のお手製の魔女の紅茶をのませておくれ」


ラベンダーはうれしそうに頷いた。

その後水の妖精、火の妖精たちが嬉しそうにラベンダーの周りに集まり、お茶の葉をぐつぐつ煮込みながら、こぶしを上げて元気よく演歌調に唄うラベンダーに、思わず吹き出しそうになる笑いを堪えて見つめた。


ヴァネッサは美しいソプラノの歌声だが、彼女は上手いとは言い難い。

だが、妖精たちはとても楽しそうに踊り、俺と同じように笑いを堪えているルシアンや目を白黒させるヴァネッサを見て、思わず微笑みが絶えず元気になってくる。


「ラベンダー、飲む前から元気が出たよ」


俺は、思わず可愛い娘の歌声に元気になるのだった




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