84 父の贖罪、母の拗ね心
王、アレクは、かつての思い出していた。
大樹に認められるまでの日々の過酷さを思い出し、なんど死にそうな目にあったか?回復に魔術は効かなくて血まみれになったか?それを思い出す。
認められた時にはすごく嬉しくて、ヴァネッサにすぐプロポーズしたのにどうしてこんな結果を産んだのだろう?
だが、ラベンダーの声にふと我にかえる。
「お母様、やっぱり一度ヒールを試してみる?」
「食べられるものは何があるかしら?」
そして、顔色の悪いヴァネッサを見つめて背中をさすっている。
森が大切に守ってきたヴァネッサの不貞を疑い、その子供のラベンダーに充分な愛情をかけないどころか、俺の娘ではないと迫害し、更に森を潰すと脅しをかけてルシアンと結婚させ、ヴァネッサに魔力暴走を引き起こさせた。
殺されても文句はいえない。
ヴァネッサとラベンダーをここまで追い込んだのは自分だ。
ラベンダーの結婚に関しては、幸せそうにしているからまだ許してもらえるかもしれないが...
俺は、必死にヴァネッサをいたわっているラベンダーに声をかけた。
「何?お父様?」
「ヴァネッサがこうなったのは俺の責任だ。お前が俺の娘だというヴァネッサの主張を受け入れず、苦しい日々を送らせてしまった。お前にもだ。謝って許されることじゃない。やり直したい。だが、時は戻せない」
ヴァネッサの青白い肌を見ると、彼女は俺以外から子種をもらって色んな国々を飛び回る方が幸せだったのにと、ますます気落ちした。
「ラベンダー、すまない。ヴァネッサから聞いたんだ。お前は私の唯一の子供で娘だった。それなのに、酷い目にあわせてしまった。ヴァネッサとラベンダーの望みでできることは全て叶えよう。まずはお前のいう通り、私がヴァネッサを森に連れて行くよ。」
「お父様が!だめよ!お父様も絶対安静でしょ!ル、ルシアン様も森に入れるの。だから彼に運んでもらうわ」
ラベンダーが慌ててとんでもないとばかりに首を振る。
少し魔法を使っただけで、自分もヴァネッサと一緒に倒れ込んだんだから止めるのはわかるが。
ただ、ルシアンも森に認めてもらったなら少し安心した。
俺の目は少なくとも間違えてはなかったのか。
「ラベンダー、私は酷い父だろう。お前に安静にと言ってもらう資格はない。それに、森に謝りに行かなければならない。ヴァネッサを必ず守ると言ったのに守るどころか、俺が率先して傷つけた。だから、私が連れて行かないといけない。」
俺はゆっくり起き上がった。まだ、本調子ではないが、なんとかなるだろう。
ヴァネッサをそっと、抱き上げようと近づくと、ヴァネッサは目をカッと開き俺を睨みつける。
「ヴァネッサ、目が覚めたか?少し調子が落ち着くまで、森に連れて行く。」
「いやよ!誰があんたに連れて行ってもらうものですか」
ヴァネッサは怒鳴りながら、許さないとばかりに怒りを露わにした。
「興奮しないでくれ、また暴走したら今度こそ体に負担がかかるから。送り届けて、大樹に謝ってすぐ去るよ。大樹が俺を許さないと痛め付けるならそれだけのことをしているのだから、受け入れる。森の信頼を裏切ったのは俺だ」
「い、いやよ。私、ここにいるわ。だってあそこはわらのベッドなのよ。スプリングがきいたマットレスの方が寝心地はいいもの」
ぷいっと嫌だというように顔を背ける。
「マットレスだけ後で持って行ってもらおうか?」
「べ、ベッドが小さいの。マットレスは入らない」
「そ、そうか。じゃあ、後から小型のマットレスを準備させるよ。ゆっくり休んでおいで。元気になって、もし私と話をしてもいいと思ったら、また会ってくれるとうれしい。だが、もう顔も見たくないなら、君は離婚して自由になったんだ。国の外に行ってもいいし、ラスカルとゆっくり君のお母さんの話をしながらすごしたらいいじゃないか?」
「ラスカルは、父らしいけど母の記憶はないの。」
「そうなのか...それは...だ、だがこのままでは体調が戻るまで時間もかかるだろう。あそこは土も魔力を含むし、食事もラベンダーに頼めば作ってもらえるし」
どうしたら、早くヴァネッサの体調は治るか??
王都の医師に見せても治らないし、王城の煩わしさの中で、ヴァネッサの負担をかけたくないし、そもそも自分の顔を見たくないだろう。
ヴァネッサは再び布団をかぶってしまった。
ラベンダーは、困ったように私に声をかけた。
「多分、お母様は、お父様と離れたくないんだわ。で、森に連れて行かれたら、お父様と離されちゃうと思ってるのよね」
ふふっと嬉しそうに笑うラベンダーに、布団の中から
「ちがうわよ!!」
とヴァネッサの叫び声がきこえた




