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【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第二章

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81/124

81 恋の始まりは、王国の終わりの音

彼女は森に帰ってしまった。

もう、毎日そばに付きまとうこともできない。

いや、付き纏っているだけだと思っていたけど、あれはそういうことだよな。


アレクは唇に触れる。

いうまでもなく俺のファーストキスだ。

これは、バイバイのキス?

それとも、実は好きなの...のキス?

いや、ヴァネッサだ。考えてもみろ。

わたしがキスしてやったんだから、あとは考えろ!みたいなやってあげたキス...


王族なんだ。

魔女で平民ですらない彼女との交際やその後に続く結婚なんて認められるわけがない。

でも他の人なんて...

そう落ち込むアレクに容赦なく、碌でもない父母や弟が揃い踏みで問題を起こしていた。


「父上、魔術師団に回るはずのお金を騎士団に回して、その一部を自身の遊興費に回していた。まちがいありませんね。」


アレクは魔術の腕前が高かった。

一方で父は、あまり魔力は高くなかったが、若い頃は剣の腕前が高かった。

その頃の名残で、騎士団には若い時からの友人が多くいた。


「遠征費や武器や防具の購入、騎馬購入などの頼まれたものを魔術師団の予算から引き抜いてますよね。

それだけなら、まだ良かった。その引き抜いたお金の一部、いや一部と言っても平民の生活費10年分ぐらいのお金を、父上、あなたが抜いている!」


俺が王の責務を考えて、ヴァネッサとの恋は諦めるべきか迷っているのに、その行く末はなんだ?


「どうしてそんなことを?必要なお金はしっかり渡されているはずだ!」


俺は怒りで震えた。

きっかけは、魔術師団長のラスカルからの告発だった。

40代に入るかどうかぐらい。

魔術は、頭と体力を使うので魔術師団長は大概みんな30代前半で退職してしまう。

退職しても引くて数多なのだ。

ラスカルも、そろそろ後任譲って引退か?というぐらいのベテランである。


「私には家庭がないので、自身の領地に戻っても肩身が狭いんです。いずれは弟の子供が継ぐでしょうが、もうしばらくはアレキサンダー様の魔術陣の解読を楽しみますよ」


そう言って、魔術師の教育に力を注いでいたが、あまりに予算の流用が激しく、宰相と騎士団長に自白魔法を決行したらとんでもな事実が発覚したのだ。


アレクは、急いで宰相リンガルにも聞き取りを実施したが、

その宰相は、元騎士団、脳筋で父王の友人というだけで宰相になってしまったバカだった。


「騎士団の方が人数が多い。怪我人も多いし、食事もひつようになる。だが、魔術師はとにかく人数が少ない。自分で飛べるし、治せる。しかも、瘴気を浄化する時には聖女もついてくるだろう。そうなれば、回復もしてもらえる。なにもそこまで遠征費用や武器購入もいらない」


「何を言っている?それならなんのために予算がある?魔術師は、彼らしか戦えない魔獣や瘴気浄化、そして、普通に襲ってくる獣や他国との戦いに活動を費やしている。彼らにも当然武器はいる。そして、個人の魔力で動くから当然休養も必要になる。それらを考えて認められたものだろう?」


脳筋のリンガルは魔術師に対しては理解がなく、約束をすぐ反故にしてしまう。

そのため、騎士団、魔術師団、宰相と日々争いが絶えない。

だが、約束事は守るようにリンガルに詰め寄ると


「ですが、アレキサンダー様の首を絞めることになりますよ。その中の一部を王にお渡ししているのですから」


脳筋リンガルは、ことの重大性も考えずにラスカルや騎士団長の前で平然と言ってしまったのである。


「何!!」


こうして父王と母の王妃に詳細を話すように伝えるとーー


「仕方ないだろ。お金少ないんだよ。妻は一人なんだから、何人も娶るよりは安上がりじゃないか?王妃もドレスや宝石が外交で必要だって言うし。」

「父上、そんな理屈が通るのは今のうちだけです。それに、母上のドレスや宝石だけではありませんね?まだ何か隠しているはずです。」


俺は、腕を組み父王と母王妃の前に立ちはだかった。


「だ、だって仕方ないじゃない。お前の弟が、隣国タリーのテレサ姫に遊びで手を出してしまったの。向こうから賠償を求められているのよ」


母は仕方ないの!と自分に向かって連呼しているが仕方ないで済むはずがない。

自分が唯一のわがままになる恋をなんとか成就できないかと思っていたのに...こんな状況ではーー


「父上、母上、賠償金は私財をすべて投げうっても血税に手をつけることがないように。そして、ご自身の行った行為を反省して退位をお願いしたい。弟はタリーへ政治的奉公に出しましょう。それで許してもらうしかない。腐っても王子だから命までは取られないでしょう」


「何を言っている!お前みたいな結婚もしてなければ後ろ盾のいない子供が継いだところで争いが起きるだけだ!わしはやめんぞ!王家がタリーと外交のために使った費用として税から出せばいい!!政治もわからないくせに黙っておけ」

「そうですか、ではわたしは廃嫡としてください。私には愛する人がいます。その人と他国で幸せに暮らします」


俺は、腹立たしくなりヴァネッサの元に転移した。

だが、森の入り口に戻り冷静になる。

自分が親や弟のことで頭を抱えているが、彼女は修行から戻ったらもう親がいないと言っていた。

親子関係はよさそうな雰囲気だったが...寂しい思いをしてないだろうか?


俺は、「大丈夫か?」と一言メッセージを森に投げ込むと、そのメッセージは吸い込まれるように木々に向かって飛んでいった





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