79 魔力暴走の後始末
アレクの言葉に驚いて飛び起きたヴァネッサは、クラクラとしたようで頭を抱える。
「おい!大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょ。魔力が暴走した後なんだから。魔女の森で魔力暴走を防ぐ話を聞いたことがあったけど、こんなキツイと思わないわ」
反動が激しいらしく、そのまま吐き気をこらえている。
「これに吐け」
空間に出すとボックスを作ると、瞬間ヴァネッサの嘔吐の音が聞こえてくる。アレクもゆっくりベッドから起き上がり、ヴァネッサに近づくと背中をさすった。
ヴァネッサと魔力混合で、魔女の力を分けてもらった後に、空間バッグの作り方も習ったのだ。
残念ながら魔女ではないので、バッグになるほどの容量は作れないが、嘔吐袋ぐらいの大きさなら作ることができるようになった。
だが、使い道がなくがっかりした技術の一つだ。
こんなところで役に立つとはーー
アレクが近づいて触れても嫌がらないということはーー
怒らないほど弱っているのだろう。
魔法陣を展開させ、一口大の水球を作る。
「口を注いで。そうそう」
水球を口に含ませ、口を濯ぐとヴァネッサはアレクの方に倒れ込んだ。
といっても、不可抗力でぐったりして、意識が落ちかけている。
「ラベンダーが私の子供だというのは、理解した。謝って許されるとは思わない。体の調子が良くなったら、ゆっくり話そう」
そのままベッドに横たわらせるが、自分も表面上良くなっているだけで、魔術や魔法を使うから限界だった。
そのまま、ヴァネッサの横で意識を手放し、目覚めたら翌朝だった。
◇◇◇
「あんたたち、絶対安静って言ってるのに仲良しすぎない?」
使い魔が、容赦なくアレクを引っ掻く。
その痛みに目を覚ます。
「そんな仲良しに見えるんなら、見る目がなさすぎる。そろそろヴァネッサの使い魔やめたらいいんじゃないか?」
アレクは引っ掻かれた手をじっと見つめた。治癒魔法を展開したいが、今は我慢だ
「残念!今はラベンダーの命一分預かってるから、ヴァネッサじゃなくて、そのままラベンダーの使い魔なのよ。私の主人の両親が手がかかるから、サービスで様子見に来てるの」
ベッドの上で思い切り背伸びをしている猫は、見た目は猫だが魔だ。
可愛いとか、なでたいとか思ってはいけない。
「ヴァネッサの魔力暴走の後の後遺症が激しくて、付き添ってただけだ。こっちも魔力をつい使ったら意識が抜けた。」
使い魔は目をぱちくりして、ヴァネッサの様子を見る。
顔色が悪い。
「しばらくはラスカルのところでゆっくり休ませたら?ラベンダーたちも、結婚休暇でお休みをもらってるし」
「え??みんな??じゃあ自分は?」
「そんなの元嫁の実家よ。遠慮しなさいよ」
アレクはがっくし肩を落とす。
「なあ、ラベンダーにもヴァネッサにも謝るだけじゃダメだよな。どうしたらいいと思う?」
使い魔は目を細めて、足を舐めながらうーんと考えるふりをする。そう、フリだけなのだ。絶対こいつは、考えてない。
「そんな睨みつけないでよ。でも、あんたに何の権利も権限もないんだから、謝って二人の希望をかなえるしかないわよね。普通に考えたら、二度と顔を見せるなってところじゃないかしら?」
「お前って魔だけあって、ぐいぐい嫌なことを言うよな」
「あら、ヴァネッサはあなたの短所だし、その間にできたラベンダーは、これからは言うまでもなくあなたの最大短所じゃないの。魔は、その心の中のドス黒い空気が大好きなの。しっかりぐいぐいいじめさせてもらうわ。あなたは魔力も高いし、しっかり対価をいただけそうだわ」
アレクは、容赦のない使い魔の言葉にため息をついた。
だが、あまりにも的を得ていて、更に落ち込んでしまうのだった。




