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【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第二章

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75 火だるまから始まる恋

ラベンダーがルシアンと一緒に、休んでいる両親の部屋をそっと出ていった後――


「さあ、お二人さん。そろそろ“寝たふり”はやめたらどうかしら?」


使い魔は、ベッドで寝たふりをしていた王の頬を軽く引っ掻いた。


「いってぇっ!……お前、今日は安静にしろって医者に言われただろうが!....って、ヴァネッサも起きてたのか?」

「私はあなたに怒ってるんだから、ふて寝くらいしていいのよ!」


ヴァネッサは布団を頭までかぶって、ぷいっとそっぽを向く。


「なんだその言い方は。散々人を振り回しておいて……」

「あなたたちって、ベッドが離れていても近くても喧嘩するのね。そんなしょうもない痴話喧嘩、犬どころか猫でも食わないわよ」


使い魔は前足をぺろぺろ舐めながら、ため息を落とした。


「長い付き合いだけどさ、ラベンダーやルシアンみたいに初々しいなら応援もしたくなるけど……

あんたたちはお互い好きすぎて、周りを巻き込みすぎなのよ」


そう言いながら、使い魔はひょいとラスカルの肩に乗る。


「とにかく、一晩ゆっくり絶対安静で話し合いなさい。

で、朝になったらラベンダーに今までのことを懺悔するのね。

王様、聞こえてたでしょ? あの子、あんたに酷い扱いされてきたのに、ほんの少し一緒に過ごしただけで“あなた以外のお父様はいらない”なんて……おかしいと思わない?満足な幸せ、与えてなかった証拠よ。

それからヴァネッサ、あんたもね。使い魔に何でも差し出すような人の良さ、母親として考えなさいよ?」


「こらこら……使い魔ってのはそんなに面倒見が良すぎるものなのかい?」


ラスカルは肩の使い魔を撫でながら微笑む。


「ラベンダーたちにも“ゆっくり話せ”と伝えてあるから……

ヴァネッサ、君も王と話しなさい。――じゃあ、おやすみ」


ラスカルと使い魔が部屋を出て行き、残されたのは王とヴァネッサだけ。


静かすぎる室内で、二人は天井を見つめながら同時にため息をついた。


「……体調は、大丈夫か? かなり出血していたが」

「そっちこそ。ひどいやけどだったみたいだけど……」


そして、沈黙。


しばらくして、王がぽつりと声を落とした。


「……昔みたいに。王じゃなくて……名前で呼んでくれないか」

「どっちの名前? アレク? アレキサンダー?」

「……アレクがいい。王になってから、その名を呼ぶ者はいなくなった。お前だけが……その偽名を城で呼ぶから、当時は困っていたくらいだ」


アレクは、懐かしくて少し苦いその頃を思い返す。


◆◆◆


「王城の機密図書も含めて、魔法関連は全部読み明かした。

魔術構築も独学でできる。

俺の術式を解けるやつなんて片手で足りる……あーあ、つまらない」


二十歳になったばかりの未来の王アレキサンダーは、十代のうちに全てを学び終え、くだらない王家の仕事を手伝いながら、退屈と虚しさばかりを感じていた。


父も母も弟も、賢くはなく、権力と金に溺れたただの王族。


隠蔽魔法で調べれば、父王の贈賄、弟の違法遊興、王妃の散財と臣下の着服……

汚い真実ばかりが見えてくる。


「……腐る前に、俺が継いだほうが良さそうだな」


誰の首から切れば効率がいいか、そんなことをぼんやり考えながら、アレクはよく城を転移魔法で抜け出していた。

そんなある日――

箒で空を自在に飛び回る、魔女修行中の少女に出会う。


ヴァネッサだった。


「この国に魔女がいるなんて聞いてないぞ!」


アレクは思わず彼女の後を追った。


「……あんた、誰?」

「アレク。……俺のこと、どこかで見たことないか?」

「ないわね」

「それなりに有名なはずだぞ!」

「うるさいわね!こっちはやることあって動いてんのよ。それ以上、わたしの邪魔をするようならマルコげにしてやるわよ!」


その無関心で、無遠慮で、まっすぐで勝ち気な魔女に、アレクは久しぶりに興奮を覚えた。

「まるこげにしてくれるのか??本当か?じゃあ俺も全力出していいんだな?」

「なに?あんたマゾなの?というか、なんであんたの相手をしなくっちゃならないのよ?わたし本当に暇じゃないの。あんたをまるこげにする利点をなんか出しなさいよ。」

「利点??俺が戦いを挑むのになんで利点を?」

「はーーーっ?あんた頭のネジ拾ってきなさいよ。なんであんたみたいなネジの緩い子に、貴重な魔力を使うのよ?」

「ネジが...ゆるい??お前、後悔させてやるからな!」


俺は最大級の防御と火炎魔法を生み出す。


「死なないレベルにしてやった。当たっても戻してやるから安心しろ?」

目の前のヴァネッサは、じと目でアレクを見る。

「あたし言ったよなあ?利点を出せって!!うるせえわ!!ぼけがぁぁぁ!!」


ヴァネッサは、とつぜんどこから出てきたかわからない杖を取り出し、作った魔法陣を全て無効化する。

そして

《火の妖精!!火傷しないように火だるまにしてやりなさい》


そう叫んだかと思うとアレクは炎に包まれ、火傷してないのに完全に痛めつけられる。


「妖精??妖精ってなんだよ!」

アレクの目には妖精は見えない。

だが、火だるまになりながら、そのまま妖精はアレクの心に火をつけてしまったのである


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