55 森の妖精たちと無人販売はじめました
「では、お金が貯まったら森の貯金箱に入れておくのだ」
金の妖精は目をキラキラ輝かせ、回収箱をじっと見つめる。
「お金は磨いて森の貯金箱に入れるのだ!」
銀の妖精はギラギラした目で空の回収箱の中を行ったり来たり。まだ金が入らないかとでも言いたげだ。
金と銀の妖精は、決まった時間に回収に来る約束だった。
でも、どうやらお金を入れる箱から離れず、随時でも回収してくれそうな雰囲気。
私はふふっと笑う。
「シルフィー」
風の妖精も呼ぶ。
「時々、人が通ったら、このお店の方向に風向きを変えてね」
「わかった!」
私と妖精のやり取りを、ルシアンは不安そうに見つめている。
「森から出ると、俺は見ることも会話もできないんだな」
「そうですね。でも、他の人から見たら、私は独り言を呟く怪しい人です」
「俺も外で妖精を見たいし、会話もしたいんだけど……」
じーっと見つめるルシアンの目線には、まだ魔力混合する気はないのか、というプレッシャーが込められている。
「う……じっくり……です。考えます……」
その視線の圧に、私はつい弱気になる。
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お店は海の街には珍しいウッディーな森をイメージして作った。
「目立ってなんぼです。でも無人って珍しいから、興味本位で入る人もいると思うんですよね」
そして、入り口には張り紙を貼る。
《24時間営業・無人販売》
《商品を持って無賃で出ることはできません》
「これでよし!」
私は満足げに微笑んだ。
「無人販売は魔術的にも珍しい発想だ。宿舎や魔術師団の本部にも、食べ物の売店があれば便利かもしれないな」
ルシアンも少し気になるらしい。
「ただし、魔術師の特性で、結界破りに挑戦してくる者も多いだろう。無賃で出られたら「勝ち!」みたいな競争をされても、疲労が増えるだけかな」
「買い物が目的ではなく、結界破りが目的なら、訓練を兼ねてもいいかもしれませんね」
私は、それを想像しておかしくなった。
「空き店舗は、魔術師団が討伐に行くときの休憩所を使ったらいい。姫の店舗だから文句はないだろう。国の利用テストということにすれば、悪さをする人もいないだろうし...」
ルシアンは入り口にしっかりと何十にも結界条件をつけていた。エラーで出られなくなったら困るが、盗まれても困る。
ここは、港からも近く、人の目に触れやすい立地だ。
外国籍の船も出入りし、旅行者や商売人で街は活気づく。
「シーウェンは、本当に活発な街ですね」
「魔術を使う人もこの港にはいるぞ。見てみろ」
目の前の重い積荷が、魔術で簡単に浮遊して、馬車に移動されていた。
「一般人でも少し魔力がある人は、海や山など人が入りにくい場所での仕事を受けるものが多い。高賃金なんだ」
「そうなんですね」
修行の時と違い、実際に生活視点でみるとまた新たな発見が多い。
「ちなみにあの馬車は馬ではなく魔獣だ。攻撃性を落とす魔術がかかっている。よく見てみろ」
私はじっと見る。確かに馬より不自然に大きい。
足は10本、手も生えている。
「魔獣には個性があるが、この魔獣は人と触れ合うのが好きなんだろう。仕事が終われば、普通に馬のように馬房で眠り、すでに溶け込んでいるようだな。」
ルシアンも城下とは違う文化に関心があるようだ。
「でも、これだけいろんな人が出入りして、国際的な船も入国するのに魔女は立ち寄らないのね」
「世界的に見ても数が少ないんだろうな。」
ルシアンも唇を噛み締めながら頷く。
私も少し寂しい気持ちになりながらも、今自分が一人ではないことに安堵していた




