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【完結】天才魔術師団長は天才魔女姫を守れない  作者: かんあずき
第一章

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54 翻弄される堅物魔術師

俺ーールシアンは、完全にラベンダーの姫っぷりに翻弄されていた。


魔力混合したら、生涯“俺に身を許した”印を残すことと同意だ。

それなのに、なんで《しばらく口を聞いてあげない》だけで、あっさり納得してしまうんだ。

本人は、自分の失言にさえ気づいていない。


魔術師同士でも魔力混合は軽々しくするものじゃない。

若気の至りで混ぜてしまい、その後こじれて別れ、魔力だけが残った——そんな話はいくらでも聞いた。

魔力持ちは貴族が多いから、その後の政争にまで発展することもある。


俺は、自分の魔力を渡すなら“結婚相手だけ”と決めていた。

お互い違う系統の魔法を使う者同士ならメリットもあるが、普通は結婚の印さえあれば十分だ。

実は、クラリスに何度も魔力混合の提案をされたが……あの時にしなくて本当に良かったと今なら思える。


……王はどうしているんだろうな。

3人の王妃に平等に魔力を渡したのか、それとも....


(ちなみに、ヴァネッサ王妃は王の魔力を受け取っていた)


かつて戦った時、ヴァネッサのステータスから王の魔力が見てとれた。

それこそ、王にとってメリットがあるのはヴァネッサだけだろうが——もし彼女に渡したのなら、他の二人にも渡して、更に平等に3人から魔力をもらったんだろうか?


(一つの魔力の器に、自分を含め四人分の魔力が入り混じるなんて、体の中で喧嘩しそうなものだが。)


俺は想像したくないとため息をついた。


当時はヴァネッサ王妃と仲がいいのだと思っていた。

だから疑問も抱かなかったのだ。

あれほど不仲な政略結婚で、なぜ自分の魔力を与えたんだろう?王は魔女の力が欲しかったのだろうか?

ラスカルのところへ行けば、何かわかるだろうか?


「ラベンダー、何が手伝おうか?」

「だ、大丈夫です。」


完全に気まずくなったじゃないか。

ラベンダーは今、冷却湿布づくりに集中している。

素材は時間勝負だから邪魔は出来ないが... 魔力混合の話から逃げたな、完全に。


「今日は何を作るんだ?」

「冷却湿布の元を作って仕舞えばあとは保管がきくので、それを作って瓶詰めにします。あとは、これは...真珠??」


ラベンダーは大きめの真珠を俺に見せる。

回収物の貝の中にあったらしい。


「真珠だな。宝石商にでも持って行くか?でも、真珠数粒ではなかなか良い値段はつかないぞ」

「うーん、化粧品って市井でも売れますか?真珠パウダーとベースの薬草と魔力を注入したら、ぴちぴちに肌がなる上にいい感じなパール感が肌に出るんですよね」

「君は?君が使って化粧をしてもいいんじゃないか...って、いや今はダメか」


話を逸らそうとしても、結局魔力混合の話に戻りそうになる。


少年のような坊主頭に今化粧をしたら、明らかに悪目立ちする。

その髪を治すのは、髪が伸びる時間を待つか、俺の髪の毛と交換しかない。

ラベンダーもバツが悪そうにもじもじしている


「化粧品は元々使わないです。それなら、認識阻害の練習します」

「ダメだ。貴族は、結構鑑定持ちは多いし、社交界などだと認識阻害かけてるのがバレるぞ」

「では...やはり闇の妖精に...」

「人に会いたくないから闇の妖精を使っていたのは理解するとしても、化粧したくないからはズボラすぎるだろう?」

「そんなことないですよ。ルシアン様だって、髭剃りめんどくさくなったらやってみるがいいですよ」


ラベンダーはそう言いながら真珠を浮かせ、両手を掲げて

「粉砕ーー!」

と叫ぶ。


目に見えない速さで洗濯機の脱水のように真珠が回り始め、粉末になり、瓶に粉状になっていく。


「あーあ、イヤリングにしてもいいんじゃないかと思ったんだが...」


結局、自らをオシャレに飾る気がないらしい。

俺はパールイヤリングやネックレスをしてもラベンダーはかわいいだろうと思っていたのでガッカリする。


「ルシアン様、原点に戻りましょう。金ですよ、金!生活費は、自分で稼ぎますので。真珠数粒では安く買い叩かれても、化粧品に混ぜれば高値になる。庶民価格にして、効果を少し落として、数を多めにして売ってみます。」


ラベンダーは拳を握って頷いているが...


「だが、どこに販売ルートを作るんだ?」


いいものを作ったって買取先や売り場がないと...

この街には知り合いもいないし、ギルドも依頼があるものしか買い取らない。


「小さな店舗を借りて、無人販売所をつくります」

「....売上金は?」

「お金は箱に入れてもらって、無賃で物を取ろうとしたら店舗から出られないように魔術をかけてもらいます。魔術...ルシアン様、やっていただけますか?困った時は頼れって言ってましたよね。今、まさにその時です。」


困った時は...そう言っているが、そういう意味ではなかったのだが。


「結界魔法をかければいいだろうが...あとはどんな物を作るんだ?」

ラベンダーはうーんと顎に指をそえて考えている。


「海が近いから、勝手に魚をとってくる網とか、鯨も釣れる釣竿とかどうでしょうか?」

「勝手に魚を取ってきたら、乱獲になるし、鯨が釣れても、釣り上げられる腕力がないと釣竿としてはだめだろうな」

「むずかしいですね。一夜干しを作る機械とか?」

「いいが、もはや魔法じゃないよな」

「魔法ですよ。超高速回転で1分後には一夜干しになります」

「それは、露骨すぎないか??」


結局、話し合いの結果、副作用のないクラゲから作った湿布や養殖魚や稚魚を大きくする栄養剤、貝殻や真珠などの宝飾品を使ったアクセサリーや化粧品、イカ墨や貝殻から作ったペンやインクなどの文房具を置くことにした。


「売り上げは、金と銀の妖精さんが回収してくれるんですって」

「妖精...そんな使い方をしていいのか?」


もはやメルヘンな世界に突入していく。

魔術に比べ、魔法は自由度がとんでもなく大きいことがわかる。そのぐらい非現実的なものを作り出せることに驚く。


そして、ラベンダーは普通に買い物などをしたことがないので、かなり常識外のものを作り売ろうとすることがわかった。


危険だーー自ら魔女ですよと言ってるようなものじゃないか


「君は、君が思う以上に悪目立ちする素質があるから、必ず俺に売るものは相談すること。いいね」


ラベンダーは不服そうだったが渋々頷く。

その姿がーー俺には可愛くて仕方ないんだが、彼女は気づかないのだ。





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